大量虐殺でレベルを上げる方法を、RPGでは道場って言うんだよ
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
花橋ダンジョンのダンジョンリフォームがギルドで確認されてから三日間は、確認調査の為に立ち入りが禁止されていた。
その間は主に休息や、指が鈍らないように異世界で練習したりして過ごし、遂に花橋ダンジョンの立ち入り制限は解除。推奨戦闘力を850に改め、冒険者ギルドのホームページから大々的に告知された。
ちなみに、ダンジョンリフォームの報告に関しては、ボスモンスターの討伐までの攻略情報まで持ち帰ったことで百万円ほど入金されて一気に懐が潤ったし、ボスを倒したことで手に入ったスキルカードを取り込み、【アイテム強化】の恩恵を含めて戦闘力が300も上がった。
「つーわけで、さっそく花橋ダンジョンで戦闘力を上げまくっちゃおうと思う」
「ラミア道場っすね」
ラミア道場……俺と木偶人形が花橋ダンジョンでやった、催涙爆弾で沼地の中に居るラミアを根こそぎ引きずり出した後に残さず仕留めて、魔石とスキルカードを大量にゲットするというトレーニング方法の通称である。
前回やった時は300以上戦闘力が上がったから、ボスモンスターの討伐まで含めれば一度の踏破に戦闘力が600くらい上がる上に、魔石と宝箱までゲットできるという画期的なやり方だ。
「いつかこれを動画のネタにしたいからな……人にバレない様に、慎重にパワーアップしていこう」
「あいあいさー」
こうして俺たちの休息は終わり、再び異世界に潜る日々が訪れた。
=====
それからしばらくの間、俺と木偶人形は人目を気にしながら花橋ダンジョンに入ってはラミアを虐殺し続けた。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
前回と同じように催涙爆弾を投げ込んで炸裂させ、目を真っ赤に充血させながら悶え苦しみ、岸や大蓮に上がってきたラミアを根こそぎ処理。九十一個の魔石と十二枚のスキルカードを手に入れて、戦闘力は360も上がった。
この結果に満足して再びギョロ木との戦い。前回は手こずったけど、攻略方法が分かった上に【毒無効】のスキルを手にした木偶人形の敵ではなく、バスターモードに変形させたガンブレードで骨を根こそぎ砕き、そのまま魔力弾を掃射して即撃破。
(宝箱の中身は何なんですか?)
(えっと…………耐毒のスキルオーブだって)
(……いります?)
(売り払う)
スキル【毒耐性】を会得できるという、今の俺たちからすれば金になるゴミ的なアイテムに落胆しつつ、戦闘力を300上げることが出来た。
(それにしても、時間余っちゃいました)
(もう一周するか)
終わった時にはまだ昼前。爆上がりした戦闘力を持つ木偶人形の脚力が叩き出す最高速度は半端なく、ボス部屋の場所を把握していることもあってすぐに終わってしまった。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
なのでもう一周することに。先ほどと同じように催涙爆弾でラミアを引きずり出して根こそぎ抹殺。九十七個の魔石と六枚のスキルカードという、先ほどと比べると不作な結果に終わった。
戦闘力を180上げ、その足でギョロ木を粉砕しにいき、更に戦闘力を300アップだ。
(さぁて、宝箱の中身は何すかね?)
(今回は良いのだぞ……火柱の強化槌だ)
前に手に入れたのと同様に、【火柱】という魔法スキルを装備品に付与するアイテム。木偶人形の願いで再びマフラーに使うと、マフラーは【炎柱】という上位互換スキルが付与された。
(腹も減ったし……今日はこのくらいにしておくか)
結局ダンジョンを二周したところでこの日は撤退にし、ギルドの即売場へと向かう。掃除当番があるから、あんまり長々と居座れないのだ。
「すみません、魔石売りたいんですけど」
「承りました。それでは、こちらの台車に魔石を置いてもらってもよろしいでしょうか?」
【アイテムボックス】から花橋ダンジョンで手に入れた、ボスモンスターの分を含めると合計で百九十個の魔石を大きな四角の籠を取り付けられた台車の上にガラガラと載せる。
その量に驚いていたのか、職員は何度も魔石と俺の顔を交互に見てきた。
「これで全部です」
「は、はい! 少々お待ちください!」
台車を重そうに押しながら、慌てた様子で奥へと引っ込んで換金を始める職員。
後から確認した明細書によると、ラミアを始めとした雑魚モンスターから得た魔石は平均で五百から七百くらいだったけど、ギョロ木の魔石はかなり高品質であったらしく、俺が持ち帰った魔石の合計金額は二十万円以上にもなった。
=====
次の日も花橋ダンジョンに来た俺たち。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
催涙爆弾でラミアを根こそぎ引きずり出して抹殺し、九十三個の魔石と十枚のスキルカードをゲットし、ギョロ木を倒して宝箱を開ける。
(耐毒のスキルオーブ……いらねぇ)
というわけでもう一周。一旦ダンジョンを出て再び中に入って――――。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
催涙爆弾を投げ込んで出てきたラミアを大量虐殺。九十二個の魔石と十一枚のスキルカードをゲットし、ギョロ木を倒して宝箱をオープン。
(癒しのスキルオーブ。使うと傷を治すスキル、【ヒール】を使える……だって)
(回復ポーションが切れた時にも使えそうっすね。覚えておきましょうよ)
木偶人形の言葉に迷わず賛成。スキルオーブを使うと【アイテム強化】によって上位互換スキル、傷を治すと共に状態異常も打ち消す【リカバリー】を習得できた。
このまま三週目と洒落込もうと、一旦ダンジョンを出た時、他の冒険者たちで構成されたパーティが花橋ダンジョンに向かってくるのが見えた。思わず身を隠して様子を窺うと、どうやらダンジョンリフォームが起こったので再攻略に来た連中らしい。
(これだと、今日もこの辺りで終わりだなぁ)
(いつ出てくるかも分かりませんしね)
仕方ないので、今日は別の事……まだ試運転が済んでいない、【爆雷】【炎柱】【リカバリー】を色々試してみることにした。
とは言っても効果は凡そ説明通り。周囲に雷撃を撒き散らしたり、大きな火柱を上げたり、傷や状態異常を治したりだ。インターバルはいずれも二分。
昼食を挟みながらそこら辺の雑魚モンスター相手に新しいスキルの試し撃ち。新スキルの獲得のための試行回数稼ぎに夜まで精を出し、ギルドの即売所でまた驚かれるほど大量の魔石を売り払って帰った。
=====
翌日は人も来ない良い日だった。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
朝から花橋ダンジョンに向かい、催涙爆弾を投下。引きずり出したラミアを皆殺しにしてギョロ木を圧し折り、宝箱をこじ開ける。
(耐毒のスキルオーブっすね)
(いらんわ!)
そのままもう一周。一回ダンジョンを出てから速攻で中に入る
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
催涙爆弾ぶん投げてラミアを皆殺しにしてギョロ木を【炎柱】で焼き尽くし、宝箱を蹴り開ける。
(耐毒のスキルオーブ)
(またお前か!?)
さらにもう一周。ダンジョンを出て速攻で中へ。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
催涙爆弾をぶち込んでラミアを皆殺しにし、ギョロ木を微塵切りにして宝箱の蓋の部分を両断。
(耐毒のスキルオーブ)
(おのれ物欲センサーめ!!)
またまたもう一周。ダンジョンの扉を開け閉めして沼地へ向かう。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
催涙爆弾と死をラミアにプレゼントし、ギョロ木を【チャージショット】で吹き飛ばして宝箱をオープンオープンプンプンプン。
(氷華の強化槌……アタリだ!)
(魔法攻撃スキルっすか!? 是非ともマフラーに!)
手で触れた相手を凍てつかせるスキル、【氷華】を装備品に付与できるアイテムを見つけたのでマフラーに使うと、【氷華】の上位互換スキル【絶氷】を使えるように。
当たりアイテムを手に入れていい気になった俺たちは、最後にもう一周することに。
(そぉいっ!)
『『『ギィイイイイイイイイイイイイッ!?』』』
すっかりお馴染み催涙爆弾を食らって、涙を流しながらのた打ち回るラミアに安らぎを与えて、ギョロ木をドロップキックで蹴飛ばして宝箱を開ける。
(耐毒のスキルオーブ)
(親の顔より見たオーブ!!)
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この日はこれまでよりも多く花橋ダンジョンを周回することができ、木偶人形の戦闘力はヤバいくらいに上がった。
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名前:
天職:木偶人形
戦闘力:6802
【スキル一覧】
・全スキル習得可能
・ゲージシステム
・不壊の担い手
・空中殺法
・毒無効
・木偶同調
・三段ジャンプ
・コスチュームチェンジ
・会心の瞳
・リカバリー
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笑えるくらい戦闘力が上がってしまった。スキルこそ増えなかったけど、それもぶっちゃけ気にならないレベルだ。
これで冒険者のトップ層の仲間入りに大きく近づいたな。この段階で動画投稿すれば、美少女な超大型ルーキー登場って感じで話題呼ぶかも……木偶人形が。
ちなみに魔改造されたマフラーは、当初とは全くの別物と化した。
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品名:三極のマフラー
炎、雷、氷の力を宿したマフラー。首に巻くだけで炎攻撃と雷攻撃、氷攻撃への耐性を得る
《装備スキル》
・爆雷
・炎柱
・絶氷
・三極の守り
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氷のスキルを付与したら、何か耐性系のスキルを手にした。このまま魔法系のスキルを詰め込みまくったらどうなるんだろう……しばらく試してみるとしようかな。
「あれ? 木偶ちゃん?」
ギルドに帰る道すがら、モンスターの少ない地帯に入って回復ポーションの調合に使う霊薬草を採取していると、百瀬と千堂の二人と鉢合わせた。
「お二人とも、奇遇っすね~。今帰りっすか?」
「えぇ。さっきまで吉備ダンジョンを攻略しててね」
「ようやくボスを倒せたんだぁ~。もう疲れちゃったよぉ」
……マジで? 思ったよりも早いな。
元々高めの初期戦闘力に加えて戦闘力の上がり方が他の冒険者の二倍の木偶人形は速攻で推奨戦闘力に達したけど、一般的な冒険者ならもうちょい掛かると思ってたのに。
「ところで、名前は言えるようになったの?」
「あー……」
画面の向こう側で頬を掻きながら質問を誤魔化そうとしている木偶人形が、念話で俺に語り掛けてくる。
(ユースケ、そこらへんどうします? ていうか、まだアタシの名前決まらないんすか?)
(待て待て。候補はあるけど、まだ悩んでてな……)
平和なやり取りが繰り広げられる夜も間近に迫った森の中。何とか誤魔化してもらおうとした、その時。
――――オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!!
大地を揺らし、鼓膜に痛みを走らせる……まるで巨大な怪物が全力で吠えたかのような……そんな鳴き声が森全域に響いた。
ご質問があったのでお答えします。
Q『ん?美少女木偶人形のスタイルってどんな感じだっけ?』
A『確かに普段描写にすることなかったから覚えにくかったかもですね。木偶人形のスタイルは雄介好み(第2話参照)の小柄で巨乳です』
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