友達と一緒なら学校行事も楽しいよね
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
何だかんだで、ギョロ木は木偶人形と戦うようになってから初めて苦戦したモンスターだと思う。
戦闘力が900越えに加えて、常時毒状態にするボス部屋いっぱいの毒ガスに無敵化のスキル。これは早めにギルドに報告しないと、何も知らずに飛び込んだ冒険者を犠牲にすることになる。
そう思った俺は踏破報酬の宝箱の中身とカード、魔石を回収してすぐにギルドに向かった。
「えっと……この手の報告は……」
地球に戻ってギルドの人気のない場所で【アイテムボックス】から出てきた木偶人形が、その場で【コスチュームチェンジ】で私服に着替え終えると、俺たちはエントランスホールに向かい、そこにある案内看板を確認して異世界に関する新発見の報告をする窓口へ行き、整理券を取ってしばらく待つ。
元々人が少なかったこともあって割と早くに呼ばれて窓口へ行くと、そこには既に職員の人が待ち構えていた。
「お待たせしました。それで、どのような報告でございますでしょうか?」
「実はダンジョンリフォームが発生したみたいで……」
そういうと、職員の目の色が明らかに変わる。それだけでダンジョンリフォームが冒険者にとって……ひいてはギルドにとってどれだけ重大な事なのかがよく分かった。
続きを促された俺は花橋ダンジョンで起きたことを全て話した。職員は時折心底驚きながら相槌を打っていたので、少なくともこの職員は花橋ダンジョンの変化を知らなかったようだ。
「なるほど……そのようなことがあったのですね。それでは動画や画像データ、またはスキルカードを提示していただけますでしょうか?」
「あ、はい」
俺は自分の体から取り出したスキルカードを職員に渡すと、職員はしばらくの間席を外した。
「ユースケ、どうしてスキルカードを渡したんすか? こういうのって、口で言ってお終いって感じじゃないんすか?」
「報告なんて、報奨金目当ての嘘かもしれないし……何より、最近のスキルカードには異世界の様子を自動的に記録する機能が付いてんだよ」
元々スキルカードにそんな機能は無かったんだけど、地球の研究者たちが試行錯誤し、スキルカードをバージョンアップさせたらしい。
未知のモンスター、未知の場所、未知のダンジョンに未知の資源。そう言ったものを記録することで、異世界の研究は近年爆発的な進捗を見せているのだとか。
「へぇ~、最近のカードは便利っすねぇ。アタシのはそういうの無いっすよ」
「まぁ、お前が作られたのがここ二~三年以内じゃないなら、無くて当たり前だけどな。そもそもお前、ダンジョン産みたいだし」
そんな事を話していると、職員が戻ってきて俺にスキルカードを返してきた。
「お待たせいたしました。こちら、お預かりしていたスキルカードです」
「はい」
返されたスキルカードの内容を軽く眺め、それを体の内側に戻す。
「九々津様のご報告通り、確かに花橋ダンジョンではダンジョンリフォームが起きているようです。ギルドの方でも定例会議にて議題に出し、近日中に推奨戦闘力の更新及び、報奨金の振り込みが行われますので」
「はい、どうもありがとうございます」
「……あの~、実はこちらからも失礼ながらお聞きしたいことがあるのですが……」
職員は遠慮がちに……それでいて、どこか俺を疑うような目で見つめる。
「九々津様はどのようにして花橋ダンジョンに……? 失礼ながら、九々津様の戦闘力では……」
そんな事を言ってくるのは、俺のスキルカードを見たからなのだろう。……まぁ、正直に言って疑問なのはわかる。
戦闘力たったの5のゴミが花橋ダンジョンに行くなんて単なる自殺行為、しかもボスまで拝んで生きて帰って来るなんて、何か規則や法に触れるようなおかしなことをしてるんじゃないのか? そう思うのも無理はない。
「あぁ、実はとある冒険者パーティと提携して花橋ダンジョンまで付いて行きまして。守りに定評のあるスキルの持ち主も一緒だったので、俺でも無傷で帰ってこれたんです」
「なるほど、そういう事だったのですね。不躾な質問をしてしまい、大変失礼いたしました」
当然、そんな疑問をぶつけられることは想定済みで、言い訳も考えていた。
未発達な技術なだけあって、スキルカードの記録機能はかなり大雑把で用途が限られている。モンスターや位置情報、資源やダンジョンの記録は出来るけど、それ以外の詳しい状況……どんな冒険者が、どんなことをしたか……そういった事までは記録できない。
アイテムマスターが異世界に同行するのは、殆ど無いけど全く需要が無いってわけでもないしな。こう言っておけば大丈夫だろう。あながち、嘘ってわけでもないし。
「それじゃあ俺はこれで」
「お疲れさまでした。また何かご報告がございましたら、何時でもお越しください」
これ以上変な追及をされない内にとっとと退散するか。
=====
異世界から帰ってきた時には、既に夜の七時を超えていた。
今日はもう遅いのでフードコートで飯を食い、そのまま家に帰って部屋でくつろいでいると、【アイテムボックス】から木偶人形が出てくる。
「ユースケ、そういうえば今日の宝箱には何が入ってたんすか?」
「あぁ、そう言えばまだちゃんと確認していなかったな」
俺はスキルカードから【アイテムボックス】の中身を確認した。えっと……踏破報酬の中身はポーション(どれも俺が持っているのより高性能)が中心で、他には謎の金槌が入っていた。
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品種:放電の強化槌
装備品の強度を上げ、自身を中心に強い電撃を周囲に放つスキル、【放電】を付与できる槌。
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手に入れたのはスキルオーブとは似て非なるアイテム、強化槌だった。
文字通り、服や武器といった装備しているものにスキルを付加し、強化できるアイテム。しかも効果も強そうときたもんだ。
「良いんじゃないっすか、これ! 電気をこう、ビリビリーってブッパするスキルなんでしょ? カッケーすよ!」
「しかも【アイテム強化】の影響を考えれば、もっと良いスキルになるだろうしな」
ただ問題は、何に付与させるかという事だ。
普通に考えればガンブレードといきたいところだけど、武器が手から弾き飛ばされた場合を考えれば、木偶人形の戦闘服、そのいずれかに付与するのが良い。もし武器を失った時の自衛策って必要だしな。
「はいはい! アタシ、マフラーを強化してほしいっす!」
「マフラーを?」
「これといった意味はないですけど、個人的にお気に入りなんすよ、このマフラー」
……まぁ、身につけているものなら何でもいいし、別にいいか。【不壊の担い手】で装備品は壊れないし、お気に入りの物が強化されるなら木偶人形もやる気が出るだろうし。
「それじゃあ使うぞ」
俺は【アイテムボックス】から木偶人形が戦闘時に着用しているマフラーを取り出し、強化槌を使う。
強化槌は光の粒子になりながらマフラーへ吸い込まれていく。外見にこそ変化はないみたいだけど 肝心は中身……俺は【鑑定眼】を発動した。
―――――――――――――――――――――――――
品名:雷のマフラー
その名の通り、雷の力を宿したマフラー。魔法の力を得たことで火や刃物にも強くなった。
《装備スキル》
・爆雷
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スキル【爆雷】。スキルの詳細を見る限り、【放電】の完全上位互換スキルだ。詳しい性能はまた異世界で試すとしよう。
「しかし、お前がマフラーがお気に入りとは知らなかったな。こういうのが好きなのか?」
「んー……特に理由は無いんですけど……何か好きなんですよね、これ」
……? 妙に歯切れが悪いな。
「それにほら、いつかは動画配信するんですよね? だったらアタシにはトレードマークになるものがいると思うんですよ」
「確かに」
俺が考えている動画の方向性では、外見重視で木偶人形をメインにしていこうと思っている。そんな木偶人形を飾る装飾品としては、シンプルでありながらそこそこ目立つし、マフラーは良い案だ。受けを狙いに行きすぎて痛い目に遭うのも嫌だしな。
「ていうか、お前結構ノリノリだな。冒険者活動の方針は俺に合わせるって感じのスタンスだと思ってたけど」
「基本的にはそうですけどね。でも、アタシとユースケの二人で何か作ったりするのって面白そうじゃないっすか。今から楽しみだったりしますよ?」
……実を言うと、俺も楽しみだったりする。どんな下らないことでも、友達と何かやるのって面白いんだよね。それと同じ感覚だ。
「ところで、どんな動画配信します? アタシとしてはこんなのやりたいっすね! 異世界でやってみた系の。この間のなんて、スイカみたいな果物が爆発して超笑っちゃいましたよ!」
「あぁ、あの動画な。俺もいつかああいうのやってみたいなぁって思うんだけど、下手すると自己満動画になっちゃいそうだからな。普段は活動動画やお勧めの戦闘力の上げ方とか、他の冒険者の手助けになるような動画の合間にやってみようと思う」
「活動系はともかく、戦闘力上げの動画は参考にならなくないっすか? アタシらの場合、取得戦闘力が二倍ですし」
「確かに……となると、やっぱり活動動画がメインか。実際それだけで人気になる冒険者もいるし……時々お遊び感覚の動画配信したりしてさ」
「だったらこんな動画とかどうっすか? まずは――――」
この後、俺たちは夜遅くまで話題が尽きることなく駄弁りまくった。
ご質問があったのでお答えします。
Q『異世界のダンジョンに日本語の名前がついてるのは発見した人の名前とかですかね?地名じゃないよね?』
A『地名や人物名ではないですね。基本的には新発見されたダンジョンの名前を決めているのはギルドや国の人で、国ごとに名称も様変わりしたりするんですよ。ちなみに名称は記号のようなものと認識されていて、ちゃんと意味を込めて名付けられたダンジョンは少数です』
Q『今は木偶ばっかり成長させてますが、自分にもラミアのカードどんどん使っていけば主人公もすぐに300とかになれると思う。周回するなら是非! っていうか、アイテムマスターって寄生したらめちゃめちゃ強くなるんじゃあ?』
A『どうでしょうかね? 確かに戦闘力は二倍速で上がっていきますけど、戦闘に役立つスキルは一切覚えませんから、ちゃんと強くなるには相応の装備が必要になるかと』
Q『八谷と二村に「疲れて眠いから詳しいことはまた話す」と返してから数日経っていますが、まだ話さないんですか?』
A『実はコレ、本文では端折ったんですけどちゃんと報告してます。木偶人形の事とか、いろいろ情報は伏せましたけど、今後もどうにか冒険者業を続けられそうという旨を伝えました』
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