目ん玉いっぱい付いてる奴は大抵キモい
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
スマホで花橋ダンジョンのマップを確認しながら歩き続ける。
宝箱を除けば人工物らしいものが見当たらない、自然をモチーフとしたダンジョンにはラミアやナメクジの他にも様々なモンスターが居たが……中には事前情報には無かった、推奨戦闘力を超えていそうな強さを誇るモンスターも混じってたりしていた。
(これはもしかしなくても……)
(何か心当たりでもあるんすか?)
(あぁ……その答えも、多分この先にあるだろうな)
滝を割るように設置された、吉備ダンジョンでもお馴染みであるボス部屋の扉。その扉を開け放つと、広い円形の空間のど真ん中に一本の大きな枯れ木が立っているのが見えたが、それ以外は何もない。ボスモンスターの姿でさえもだ。
(あれ……? ボスモンスターはどこにいるんすか?)
ボスモンスターはボス部屋からは出ないという特性を持っているから、移動したとは考えにくい。あり得るとしたら少し前に俺たちと行き違いになる形で、ボスを倒した他の冒険者が居たって事だろうか?
倒されたモンスターや宝箱は、ダンジョンが無人の状態にならないと復活しないし。
(それにしてもホラーな木ですねぇ。骨がいっぱい吊るされてるっすよ)
枯れ木にはモンスターや動物の物と思われる骨から人骨まで、様々な種類の骨がツルで縛られて吊るされている。
……それを遠くから眺めながら、俺は一発の銃撃を枯れ木に叩き込んでやった。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ!!」
「うひぁあああああっ!?」
それを嫌がったように幹や枝をしならせながら独りでに暴れる枯れ木。その色は灰っぽい色から毒々しい紫へと変わり、幹に無数の目が生えるという心底キモい外見をしたモンスターになった。
(キモッ!? 何すか!? こいつがボスモンスターってことですかぁ!?)
(そういう事! 来るぞ!)
ボス部屋に居ないボスモンスター。これ見よがしに立つ、骨で装飾された枯れ木。ここまでの判断材料が揃っていたら、ゲーマーなら大抵の奴がボスモンスターの正体に察しが付くだろうな。ゲームじゃよくある展開だし。
(ていうか、花橋ダンジョンのボスモンスター……本当ならサソリ型のモンスターの筈なんだけどな)
(全然サソリには見えないんですけど!?)
(嫌な予感が的中したんだよ! ダンジョンが変化したタイミングで来ちゃったんだ!)
ダンジョンというのは基本的に、出てくるモンスターや地形が変わらないものとされていた。
でもそれはもう冒険者ギルド黎明期の話。理由は不明だけど、実はダンジョンは極稀に出現するモンスターや地形が変化する現象は、とうの昔に判明していた。
世間ではダンジョンリフォームという、冒険者にとって事前情報を無駄にされる災厄の一種である。
「オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!」
ギョロ目が至る所に生えた枯れ木……長いからギョロ木でいいか。
ギョロ木は自身の周辺に魔法陣を五つ浮かび上がらせ、そこから紫色の液体の塊を連続発射してきた。
俺は木偶人形にギョロ木の周りをグルグル走らせながらそれを回避。地面にぶつかって飛び散った液体は、煙を立てながら地面を溶かしていた。
(やっぱり毒系のスキルの使い手だよなぁ!)
木偶人形は毒球を跳ぶようなサイドステップで回避しながら徐々に近づきつつ、銃弾を浴びせる。
……が、まるでダメージが通っているようには見えない。一番防御の薄そうな眼球にも何発も当たったのにだ。
そのまま接近して近接攻撃を食らわせても同じ。毒球をバックステップで避けながら、バスターモードの銃撃を浴びせてみたけど、それでも結果は同じだった。
(硬過ぎませんか!? 全然効いてないんですけど!?)
考えられる要因があるとすれば二つ……一つは、単純に戦闘力に差があり過ぎる場合だ。その場合は全力で迷わず撤退。ギルドに情報を売って、別のダンジョンに向かう。
そしてもう一つは、何らかの条件を満たさなければダメージが入らないスキルを持っているってことだ。正直、俺は後者の可能性の方が高いと感じる。
こっちの攻撃をノーダメで受けきるほどの戦闘力にしては、魔法攻撃の威力も速度も大したことが無いし、攻撃も単調だし。
(……今のところまだ余裕はある。条件付きの無敵スキルって線で、ちょっと探ってみるぞ)
(あいあいさー!)
まずは攻撃スキル以外は効かないと仮定し、【チャージショット】や【オーラブレード】で攻撃してみた……結果、ノーダメージ。傷一つ付きやしねぇ。
次に、しばらく逃げに徹底してみた。効果時間に制限のあるスキルっていう線で探りを入れてみたんだけど……十分間も逃げ回って何の変化もありゃしない。
このボス部屋のどこかに無敵化を解除するギミックみたいなのがあるかと思って色々探し回ってみたけど、このボス部屋は平地以外何も見当たらないし、仮にあったとしても攻撃を避けながらだと探すには一人では無理がある。
(あと可能性があるとすれば何があるかなぁ……)
(ユースケ、急所攻撃って言うのはどうっすか? 弱点しか攻撃が通らないって言うのは、こういう敵のお約束っすよ!)
……確かにあり得る。幸いにも、ここまでの道中で【会心の瞳】という急所や弱点を見抜くスキルを会得しているから、もし仮に急所があるのなら見つけるのは簡単なはず。
俺はコントローラーのL1ボタンを押して、【会心の瞳】を発動させた……けど、俺の期待は外れることになった。
(嘘だろアイツ、急所までないのか?)
スキルを発動させれば、急所となる部位が赤く光って見えるようになるスキルなんだけど、ギョロ木はどこも赤く光って見えない。
これは撤退するしかないか…………そう思った矢先、俺はホログラム画面の端であるものを見つける。
(何か……骨が光ってる?)
ギョロ木が葉のない枝からぶら下げている無数の骨。その内のいくつかが赤く光っているのだ。
これはもしやと思い、赤く光っている骨を一つ撃ってみると、骨は思いの外呆気なく砕け散る。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ!?」
するとギョロ木は痛みに悶えるかのように幹や枝を大きく揺さぶり、悍ましい悲鳴を上げた。
ビンゴだ! 一見すると後付けの骨だったから急所には関係ないと無意識の内に意識から外していたけど、あの嫌がりようから察するに壊されると困るものって言うのは簡単に察しが付く!
……例えば、あれが無敵のスキルの要だったりとかな。
(って、そうこうしてる内に【会心の瞳】の効果時間が切れちゃいましたよ! インターバルが終わるまで待つっすか!?)
(いいや、それには及ばない)
あの無数の骨は、赤く光っていた骨を隠すためのカモフラージュなんだろう。【会心の瞳】を使わない限り、見分けるのは困難。
だけど見分けが付けないと破壊できないなんてことはないはず。俺はガンブレードをバスターモードに変形させ――――
(力押しって言うのはこういう事だぁぁああっ!!)
モンスターの周辺を回るように走りながらの掃射。凄まじい発砲音が絶え間なく響き渡り、ギョロ木がぶら下げていた骨を片っ端から粉々にしていく。
一部の骨が砕ける度にギョロ木は身を激しく揺さぶって嫌がり、骨はものの十数秒で一つ残らず砕け散った。
(よぉーし、改めて試そうか! 今なら攻撃が通るかどうかを――――)
ガンブレードをバスターモードからデュアルモードに戻し、今にも襲い掛からんとする前傾姿勢で構える木偶人形を操作しようとした瞬間。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ!!」
ギョロ木の全身から噴き出した大量の紫色のガスが、ボス部屋全体へと充満した。
ご質問があったのでお答えします。
Q『人形に毒や薬品が効くイメージないんですが、同調中、同調外、特殊ではない木偶人形でその辺の差異とかあったりします?』
A『雄介の木偶人形の体は極めて人間に近いので毒とか食らいますね。同調していようが、同調していまいが関係なく食らいます。……ですが(ここから先は続きをお楽しみに)』
Q『アイテムマスターがどんだけ不遇なのか、一般的な前衛職やアタリな優遇職との比較一覧みたいなものが見てみたいかも?』
A『下に簡単な比較一覧を張り付けておきます』
・初期戦闘力
アイテムマスター→5(一般人レベル。スカウターで見られたらゴミと呼ばれる。ライフル持っても変わらない)
一般前衛職→25(人外レベル)
アタリ優遇職→50(そこら辺の人外なら一方的にボコれるレベル)
・取得可能スキル
アイテムマスター→例外を除けば一切無し
一般前衛職→身体強化系スキルや武器に炎とか雷を纏わせるといった、近接戦で役立つスキル全般。飛ぶ斬撃といった一部の遠距離スキルも覚えられる。
アタリ優遇職→近接向けのスキルから攻撃魔法スキル、回復といったサポートスキルを幅広く覚えられる
・人気
アイテムマスター→ほぼ皆無(そもそも表舞台に立つような天職じゃないから)
一般前衛職→努力すれば人気者
アタリ優遇職→最初から期待の新人扱い。
・主な役割
アイテムマスター→新資源の鑑定やアイテムの調合として、ギルド職員としては重宝される。戦闘員としては頭数にも入らない。
一般前衛職→大抵のパーティに一人は必ず必要とされる。モンスターを足止めしたり、攻撃したり。
アタリ優遇職→どこへ行っても優遇される万能型戦闘職。大抵パーティリーダーとして冒険者たちの実質的な支柱になったりする。
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