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七味塗れの出汁に顔突っ込んだら、多分こうなる

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください


(よし、アイテムを回収するぞ)


 ラミアが落としたアイテムを回収する。倒した数は七、落としたアイテムの内訳は魔石が六個にスキルカードが一枚。

 魔石を【アイテムボックス】に入れ、スキルカードを取り込むと、戦闘力が30も上がっていた。


(おぉっ!? やっぱり、戦闘力の上がり方が半端ないな!)


 吉備ダンジョンとはえらい違いだ。元々は上がる数値は15なんだろうけど、【アイテム強化】によって今の俺たちよりも遥かに格上のモンスターが落としたスキルカードを取り込んだみたいになっている。


(よし、この調子でモンスターを狩っていくぞ。手始めにこの沼地に潜むラミアたちからだ)

(でも相手は水中にいるんですよね? どう戦うんすか?)


 恐らくラミアは大蓮の上に乗った奴を待ち構えても襲ってくる厭らしいタイプのモンスターだ。比較的安全な岸に居ても、奴らはこっちに向かって来ないだろう。


(ふっふっふっ……我に秘策あり、だ)


 俺は【アイテムボックス】から真っ赤な液体が詰まった球体の瓶を五個ほど取り出す。


(何すか、それ?)

(ギルドで買った催涙爆弾。一個あたり千五百円)


 ハバネロやジョロキアとは比べ物にならないほどの、とんでもない辛み成分を含んだ異世界産の植物を原材料にした催涙爆弾だ。本当なら刺激物の煙幕でモンスターを怯ませるために使うんだけど、俺はこう使う。

 まず、催涙爆弾に重しとなる石を括り付けてと。


(まずはガンブレードをしまって、真上に【三段ジャンプ】!!)


 催涙爆弾を持ったまま連続ジャンプ。大体十メートルから十五メートルほどだろうか……そのくらいの高さまで跳びあがると同時に、沼の中心辺りに向かって催涙爆弾を纏めて投げ込んだ。

 重石を付けられた催涙爆弾がゆっくりと沼地に沈んでいくのが確認できた。あのアイテムは衝撃を与えると炸裂するけど、水に落ちたくらいじゃ炸裂しない。だから俺は催涙爆弾を投げた直後に〇ボタンを押して木偶人形にガンブレードを持たせると――――


(砕け散れ!)


 催涙爆弾が沈んでいった場所を目掛けて連射。魔力の弾丸は水面を貫いて催涙爆弾を貫いたらしく、綺麗な沼は瞬く間に真っ赤に染まっていった。

【アイテム強化】によって、催涙爆弾も当然範囲と効果が増している。そんな物が沼の中で炸裂すればどうなるか――――


『『『ギィイイイイイイイイイッ!?』』』


 沼地全域に広まった辛み成分に耐えられなかったのか、大量のラミアが岸や蓮の上に上がって、真っ赤に充血した目から止めどなく涙を流しながら悶え苦しんでいる。

 こうなってしまえば奴らは既にまな板の上の鯉……ゆっくり調理してやるだけだ。


(これがボーナスタイムって奴っすね!)

(今の内に狩って狩って狩りまくるぞ……だが、これは)


 沼地から出てきたラミアの数が半端ない。ざっと見た感じ、百匹以上はいるんじゃないか?

 催涙爆弾の効果だって、何時までも続くわけじゃない筈だ。効果が切れる前に、速攻で仕留めきる……!


「ていっ!」

「ガ……ギ、ィ……!?」


 一撃で確実に仕留めるならバスターモードが理想なんだけど、今の木偶人形が出せる速度ではバスターモードで止め刺しに行くのは遅すぎる。

 ならばここはデュアルモードで首や心臓といった急所に狙いを済ませて、ラミアが悶え苦しんでいる隙に一撃で狩っていく。

【三段ジャンプ】も活用し、【空中殺法】で滞空中も威力が上がった銃撃で遠くのラミアを仕留め続けること十数分……俺たちは沼地にいる全てのラミアを仕留めることに成功した。


(やったー! 魔石もカードもザックザクですよー!)


 大蓮の上や岸の至るところに散乱する魔石やカードの輝きは実に壮観だ。俺は木偶人形を操作して魔石を全て回収、スキルカードも全て取り込んでやった。


 ―――――――――――――――――――――――――

 名前:

 天職:木偶人形

 戦闘力:930

【スキル一覧】

 ・全スキル習得可能

 ・ゲージシステム

 ・不壊の担い手

 ・空中殺法

 ・木偶同調

 ・三段ジャンプ

 ・コスチュームチェンジ

 ・会心の瞳

 ――――――――――――――――――――――――― 


(おぉう……)


 戦闘力が二倍以上に跳ね上がってやがる。これはもしかしなくても、凄いレベル上げ方法を思い付いてしまったのではなかろうか?

 アイテムマスター以外の冒険者が催涙爆弾を同じやり方で使っても、ここまでの効果は出ないだろうし、まさに俺だけが出来る最速パワーアップ。そう考えると、凄い優越感を感じてゾクゾクしてきた。

 ……明日もここに通おう。


(ボス戦の為に戦闘力上げようと思ってやってみたけど、これはもうオーバーキルしちゃうかもな)

(推奨戦闘力の二倍を上回っちゃいましたもんね)


 しかもそれだけでなく、新スキルも獲得している。どうやら急所狙いでラミアを仕留め続けたことで会得したらしい。


(【会心の瞳】……一定時間、敵モンスターの弱点部位が分かるようになる、任意発動型スキルみたいだな)


 発動時間は一分。インターバルは一分。使い勝手もそこまで悪くないし、良いスキルだ。

 

(よーし、このまま一気にボスのところまで――――)


 意気揚々と木偶人形が拳を高々と上げた瞬間、上空から強い光が降り注ぐ。一体なんだろうと、右スティックを倒して視点変更をしてみると……すぐ真上には、特大の火球が、雷撃が、氷塊が迫ってきていた。


((あああああああああああああああっ!?))


 回避しようと急いでコマンド入力したけど間に合わず、全弾着弾し、生じた爆発に吹き飛ばされて地面に転がる木偶人形。

 訳が分からんが、凄い攻撃を受けてしまった。体力ゲージの方は…………あれ? 大して減ってない?


(そうか、戦闘力に差があるのか)

(いてて……な、何なんすか、もー!)


 戦闘力が上がれば、肉体の耐久力も上がる。凄まじい攻撃ではあったけど、花橋ダンジョンの推奨戦闘力を大幅にオーバーした今の木偶人形の戦闘力なら、このダンジョン内のモンスターの攻撃ならどれも受けきれるんだろう。

 しかし、一体どんなモンスターの攻撃なんだ? 上から攻撃されたってことは、奴は空から攻撃したはず……。


(何あれ? ナメクジ?)


 上空を見上げた先に居たのは、皮膜のような翼で空を飛ぶナメクジみたいな外見をしたモンスターが五匹ほど羽ばたいていた。

 口と思しき部分には鋭い牙が不規則に並んでいて、それぞれそこに魔法陣を浮かび上がらせている。

 魔法攻撃だ……そう思って木偶人形をジクザクに走らせるが、すぐには撃ってこなかった。魔法陣は時間を掛け、電流のようなものを迸らせながらゆっくりと肥大化していき……やがて特大の魔法を木偶人形に向かって発射した。


(わぁあああっととぉ!?)


 地面に着弾する度に爆発を起こし、地面を吹き飛ばす魔法の砲撃。大したダメージは入らなかったけど、放置できない威力だ。

 詳しくは分からないけど……魔法攻撃を溜めることで威力を上げるスキルだ。体力ゲージの減り方から察するに、ラミアたちのスキルカードを取り込む前に食らっていたらかなり危なかったかもしれない。本当に推奨戦闘力が350のダンジョンに出るモンスターか?


(いや……チャージする分、発射が遅い。結構な数が集まらない限り、弾幕を張れるタイプのモンスターじゃない)


 遠距離攻撃で反撃し、十分に仕留められるモンスターだ。そう判断した俺は、ガンブレードをバスターモードに変形。

 戦闘力が爆上がりした今なら、初めは重たかったバスターモードも走りながら片手で操れる。花橋ダンジョンに来る前に素振りした感覚からそれを確信し、それが肯定されるかのように、木偶人形は走り回りながらも、木の枝を振るような軽やかさと安定性でガンブレードの銃口を空飛ぶナメクジに定めた。


(消し飛びなぁ!!)


 凄まじい轟音と共に大口径の銃口が連続で火を噴き、上空を飛ぶナメクジの肉体が弾け飛ぶ。ヌメヌメした肉片を撒き散らしながら光の粒子となって一匹残らず消えていったナメクジたちの姿を確認し、木偶人形はガンブレードの切っ先を地面に落とした。


(しかし、今のナメクジ……事前に調べた情報の中には無かったモンスターだな)

(え? そうなんすか?)

(あぁ。ダンジョンの情報って言うのは提供すると金が貰えるからな。この花橋ダンジョンもかなりの数の冒険者が挑んだから、ネットで情報を確認できたんだし……あんなナメクジが居たら真っ先に出回りそうだけどな)


 今の魔法攻撃……装備品にもよるけど、戦闘力350前後の冒険者がまともに食らえば一撃死しかねないんじゃないか? そんな攻撃を繰り出せるモンスターが、今の今まで誰の目にも触れられることがなかったとは考えにくい。

 この花橋ダンジョンで何かが起こっている……俺はそれを予感した。


 

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― 新着の感想 ―
ドロップアイテム水中に落ちない親切設計すぎる。
[良い点] ノクターンの存在が分かったこと。 なんだ、その捗りそうな小説サイトは。!! 通常なろうでせっせとハーレム物を漁っていたあの時間は一体・・・・
[気になる点] 今の戦闘力ではラミアは一撃では仕留めきれない。かといってバスターモードで止め刺しに行くにも遅すぎる。  ならばここはデュアルモードで首や心臓といった急所に狙いを済ませて、ラミアが悶え苦…
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