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仕方ないじゃん、童貞だもの

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください


 その後、吉備ダンジョンを五回くらい周回してコボルトナイトをボコってやったぜ。

 合計六回に渡るダンジョン攻略。その甲斐があって、今の木偶人形のスキルカードの内容はこうなっている。

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 名前:

 天職:木偶人形

 戦闘力:450

【スキル一覧】

 ・全スキル習得可能

 ・ゲージシステム

 ・不壊の担い手

 ・空中殺法

 ・木偶同調

 ・三段ジャンプ

 ・コスチュームチェンジ

 ――――――――――――――――――――――――― 

 

 戦闘力の激増に加え、新しいスキルである【空中殺法】。これは空中での攻撃の威力を上げるという、試行回数を重ねたことで習得した常時発動型スキルだ。

 銃撃はともかく、地に足が付かずに体重を乗せた近接攻撃がし難い空中戦では非常に重用される。実際に覚えてからもう一回ダンジョンに挑んでみると、確かに威力が跳ね上がっていた。

 そして何より、銃撃との相性がいい。射線上に障害物が無ければどの位置からでも攻撃が出来る銃撃の威力を、ジャンプ中限定とはいえ上げてくれるのは助かる。 

 スキルオーブが【アイテム強化】の適用されるということも知れ、更に戦闘力の激増に大量の魔石、アイテムも手に入って大満足だ。


(というわけで、今日はここまでにしよう)

(そうっすね。もー、お腹ペコペコっす)

(そうだな……今日はギルドでなんか買って食うか。奢るから好きなだけ食えよ)

(いいんすか!? わーい! やったー!)


 冒険者ギルドにはフードコートが設けられている。昔の大型ショッピングモールの名残みたいなものみたいで、今では冒険者という客層を狙った多くのチェーン店が立ち並んでいるってわけだ。

 ちなみに、現在妹と二人暮らし状態の俺だが、俺たちの食事は別々に、お互いに好きなものを食っている。両親が居た頃は一緒に食ってたけど、親父が単身赴任になって、お袋が付いて行ってからはそんな感じだ。

 一緒に時間を合わせて食うほど仲良くないし、台所を使ったら洗う、掃除は当番制というルールがあるくらい。

 そして異世界からゲートを通って現実に戻ってきた俺は、いったん木偶人形に【アイテムボックス】内に入ってもらい、ギルド内の人気のない場所でもう一回出てきてもらった。


「それじゃあいくっすよ……【コスチュームチェンジ】!」


 スキルを使った瞬間、木偶人形が着ていた服が冒険者風の出で立ちから、春物の白い上着と紺色のショートパンツを合わせた、今時のJKっぽい私服に変化する。

 これも吉備ダンジョンの踏破報酬に入っていたスキルオーブの力だ。元々は【コスチューム】っていう服の実物を見ながら発動すると、その服を身に纏えるっていうスキルだったんだけど、【アイテム強化】によってそれが強化。

 記憶の中の服や、イメージした服をそのまま身に纏えるという、服飾代金に悩む全ての人間が羨むスキルに変貌したのだ。

【木偶同調】中でないと殆どのスキルが使えない木偶人形が単身で使える例外スキルの一つである。


「ふっふっふっ……! どうっすか、マスター? 似合います?」

「お、おう。似合ってるぞ、うん」


 なんか女経験のない童貞(ていうか実際に童貞)みたいな返事しか出来なかったけど、やたらと美少女過ぎる外見をした木偶人形がシンプルな服を着ると、より一層彼女の端麗な容姿が際立つというか……。

 普段よりも薄手となった服を持ち上げるオッパイもベリーベリーグッド。小柄な体格ながらに豊満なオッパイが俺の目を引き付けて――――


「あのー……あんまりジロジロ見るのはちょっと……」

「…………見てないです」

「あんなガン見しといてなんて苦しい嘘を……まぁ減るもんじゃないから良いですけど」


 なん……だと……!? 

 それはつまり、本人公認。見たければ好きなだけ見ても良いという解釈でよろしいでしょうか……!?


「でもだからってジロジロ見ないでくださいね。恥ずかしいものは恥ずかしいんで」

「あ、はい」


   =====

 魔石や、【ライトエッジ】や【クイックショット】といった、既に持ってるスキルの下位互換的なスキルオーブは全て売り飛ばした。使ってみたい気はしたけど、今はどちらかというと生存に役立ちそうなアイテムを集めたかったし、貯金もしたいしな。冒険者って色々と金がかかるから、スキルオーブで色々試すのは金銭的にもっと安定してからだ。

 そんなこんなで、大金を得た俺たちはフードコートへ来ていた。

 利用客が運動量の多い冒険者ばかりなだけあってか、ガッツリ量を食べれる店やジャンクフード店が中心のその一角には、様々な料理が混ざり合った独特の香りが充満している。


「色々あるっすねぇ。マスター、マスター! 早く行きましょう! 今日も今日とてエネルギーゲージはミリ残しっす!!」

「分かった分かったって……ちょ!? 速い速い!? 戦闘力の差を考えて引っ張ってくんない!?」

「おっと、これは失敬」


 エネルギーゲージが切れかけて飢えた獣のようになった木偶人形に、腕を組まれた状態で引っ張られながら店を見て回る。その途中ですれ違う通行人……特に男が木偶人形をマジマジと見ていることに俺は気が付いた。

 これだけの美少女だと、見ず知らずの他人でも見惚れたりするんだろうなぁ。…………そんな美少女が腕を組んでいる俺を見た時、「え? あんなのが彼氏なの?」みたいな視線は心底腹が立つが。俺だってイケメンとまではいかなくても、不細工ではない………はず。

 しかし事実は違うとしても、そういう目で見られれば優越感に浸れて悪い気はしない。時折向けられてくる嫉妬を孕んだ視線も実に心地よく――――


「……あれ?」


 そこでふと気が付いた。道行く人からやたらと白い眼で見られていることに。

 一体どういうことだ? 何で赤の他人からこんな冷たい視線を浴びなければならない?

 原因を探ろうと思考を巡らせていると、すぐ近くから響く木偶人形の大きな声。


「マスター! ねぇマスター! どの店に行きます? 何なら店を幾つもハシゴしちゃいますか、マスター! ねぇねぇ、マスターってばぁ!!」

「お前かぁっ!?」


 美波の時と同じだ。こんなデカい声で俺のことをマスターなんて呼んでたら、「美少女にご主人様(マスター)呼びを強要する変態」とか思われちゃう! 現に今、こっちを見ながらヒソヒソと話している女子グループから「キモ」とか「変態」とか聞こえてくるし!


「ちょっとこっち来ようか!!」

「え? どうしたんすか、マスター」

 

 背後から聞こえてくる「通報」という言葉はこの際無視し、木偶人形を人気のない場所……男子トイレの前に連れ込む。

 

「いい加減、俺の呼び方を変えるべきだと思う。二人の時はともかく、公衆の面前でマスター呼ばわりはキツい」

「えー……アイテム的には、所有者(マスター)っていう呼び方が一番しっくりくるんですけど」

「そこを何とか! 流石に周囲の目って言うのもあるし!」

「まぁ……そこまで言うならいいっすけど。えっと……マスターの名前って九々津雄介でしたよね? だったら……」


 顎に指を当てて、しばらく何かを考えるような仕草をする木偶人形。


「これからはユースケって呼んでも良いっすか? 苗字よりもこの呼び方の方がしっくりきます」

「あぁ、それでいいや。それじゃあこれからはその呼び方に変更ってことで、改めて飯に――――」

「おっとその前に」


 引き返そうとした俺の腕を木偶人形はガッシリと掴む。一体どうしたって言うんだろうか? 何やら手を離す気配を感じられない。


「アタシにだけ呼び名の変更を強要しておいて、そっちは何もなしって言うのはちょーっとムシが良すぎないっすか?」

「……うっ」

「いい加減アタシにも名前付けてくださいよー。何時も呼ぶ時は「おい」とか「お前」とか、熟年夫婦じゃないんすから」


 その事はずっと考えてはいた。木偶人形のスキルカードには名前の欄もあり、そこは空白になっている。彼女には彼女を表す名前というものがないのだ。

 そしてそれを決められるとしたら、彼女の所有者(マスター)である俺だけなんだろう。

 ……今までは漠然と「俺が名前を決めて良いのか?」って考えててなし崩しにしてきたけど、当の本人が名前を付けろというのならそうするべきだ。何時までも呼び名が無いのは不便だしな。


「そこまで言うならちゃんと名前付けるけど、ちょっと待っててくんない? いきなり言われても思いつかん」

「むぅ……まぁ、仕方ないっすね。でも約束っす。ちゃんとアタシの名前、付けてくださいね? ユースケ」


 美少女から下の名前呼び。大袈裟って思われるかもしれないけど、不覚にもちょっとだけドキッとした。

 基本陰キャの童貞ナメんなよ。絶縁した薫を除けば、こちとら女友達なんて一人もいない人生だったんだからな。

 

 

ご質問があったのでお答えします。


Q『破壊耐性が覚えられるのに、何故自分自身に使わない?自分に使えば少なくとも自身の装備品で有る木偶人形の破壊が防げる。それが一番大事な事ではないのか?強化されて不破になったなら尚更に自分に使うべき案件だよね?まず木偶人形の損失防止が第一で、強化は後ではと?』

A『本編でも既に言及されましたが、アイテムマスターは【木偶同調】のような例外を除けば新しいスキルを覚えられません。新スキルは全て木偶人形が覚えることになっており、質問通りの感じで木偶人形の破壊防止は実現不可能なのです』


Q『【増毛】は存在が知れたら、冒険者じゃなくて一般人の富豪間で高値でやり取りされそうなんだけど。【発毛】じゃないから、既に禿散らかしてる人には効果が無い可能性が(ry?』

A『【増毛】のスキルは、髪の毛の長さを伸ばしたり、毛を毛根ごと無制限にコピーして頭に植え付ける、植毛に近い感じのスキルです。なので毛が一本でもあれば効果があるんですが……毛根まで完全に死滅したツルツル禿げには、流石に効果はないですね。それこそ【発毛】スキルの出番かと』


Q『高所から飛び降りて、着地寸前に【二段ジャンプ】したら衝撃無しで着地できないかな……』

A『できますね、はい。でもまぁ、冒険者って戦闘力が上がるにつれて身体能力がどんどん化け物染みてきますから、わざわざスキルを使ってまで衝撃を殺す必要性に迫られるのかというと、ちょっと微妙だったりします』


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人形にも木偶同調があるからこっちはこっちで別の木偶人形つかえたりするのかな?
[一言] 初歩的な質問ですが主人公の立ち位置どーなってるの? 毎回操作してますが操作中は移動しているのか 立ちっぱなしかん?モンスターは必ず前面しか出ないとか? 無防備で背後殴られたら死にそうなのに誰…
[気になる点] 破壊無効についてたぶん読者いいたいのはさゆことではなく、木偶人形自体が自我があれども装備(武器)なので、自分自身に対して破壊無効つけれるのでは?ということかと
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