空中殺法にはロマンがあると思う
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
後日、再び異世界に来た俺と木偶人形は【三段ジャンプ】の性能を確かめることにした。
スキルインターバルがない、連続使用が出来る任意発動型スキル。アクション要素があるゲームなら、連続ジャンプって言う要素は大抵あるけど、冒険者の間では強化前の【二段ジャンプ】もあまり使われていない。
元々手に入るスキルオーブの効果がランダムっていう事もあって手に入りにくいスキルなんだけど、動画や冒険者の活動記事を検索してみても、【二段ジャンプ】を戦闘で多用している冒険者はいなかった。精々、高い所への移動の補助に使う程度だ。
まして木偶人形が習得したのは三連続ジャンプ……天井があるダンジョンではまず間違いなく制限されるし、何より滞空時間が長ければ長いほど、大きな隙になりやすい。そう考えると、【三段ジャンプ】はハズレスキルだ。
(そんな【三段ジャンプ】を良スキルに変える運用方法を思い付いたぞ)
(マジっすか!?)
だが数多くのアクションゲームに触れて、連続ジャンプというものに馴染みの深い俺は【三段ジャンプ】を活用する方法を見つけ出した。
(まずは普通にジャンプします)
(はいはい)
×ボタンを押すと、木偶人形は人間離れした跳躍力で地上三メートルから四メートルくらいの高さまで跳ぶ。普通の冒険者がここで【二段ジャンプ】を使えば更に上へと高く跳ぶだろう。まるで見えない床を蹴るかのように。
だが【木偶同調】によるイメージ補正とを使えば……!
(上にじゃなくて真横にジャンプすることができるんだよなぁ!!)
イメージするのは床ではなく、壁。木偶人形の体の向きをイメージ補正で調整し、空中で横向きになった状態で二回目のジャンプのコマンド入力をすれば、木偶人形は空中で真横に跳ぶことができるのだ。一部のゲームでも取り入れられているアクションである。
この方法を応用すれば、空中で二回に限り、前、横、斜め、後ろ、更には地面に向かって、跳躍の勢いで加速しながら移動することができるのだ。
滞空時間の飛躍的な減少によって隙が生まれるのを防ぎつつ、緊急回避にも使える。
(これを早速実戦で使って練習がしたいな……というわけで、戦闘力上げ、金稼ぎ、スキルオーブ集めをするために、吉備ダンジョンを周回するぞ)
(おー!)
ランイーター相手では色んな意味で物足りないし、開けた場所でやってもあまり練習にならない。それなら壁や床といった障害物がある環境でやった方が練習になるし、今の戦闘力ならまず間違いなく苦戦は無い。
そう判断した俺たちは、意気揚々と吉備ダンジョンへと向かうのだった。
=====
今回、吉備ダンジョンを攻略するにあたって、俺は〝出来るだけジャンプ攻撃しかしない〟という、ちょっとした縛りプレイをすることにした。
もちろん、いざという時は普通に戦うことにしてはいるけど、今のところその時は来ていない。
前回来た時と比べて戦闘力が激増していることもそうだけど、何よりジャンプ攻撃を主体とした戦い方も、結構やりやすいのだ。
「ほいっと!」
ゴブリンやコボルトみたいな頭の良いモンスターは、ジャンプすれば弓矢や魔法で攻撃してくるし、着地の瞬間を狙ってきたりする。現にこうして木偶人形をジャンプさせると、後衛のゴブリンは矢と魔法で攻撃してきたが、それを前に向かって跳躍することで回避すると共に距離を詰め、続いてゴブリンがいる斜め下に向かって跳躍し、一気に近接戦の間合いに持ち込む。
「ギャッ!?」
そのまま滑るように着地すると同時に、ゴブリン二匹の首に向かって左右のガンブレードを一閃。致命傷を受けて光の粒子になったゴブリンを余所に、残りの二匹に向き合うと同時に木偶人形は再び空中へ跳ぶ。
一回目のジャンプは斜め上に。それぞれ武器を構える前衛のゴブリンたちを見た俺はコマンドを入力し、二回目のジャンプは斜め下にすることで背後に回り、振り返りかけたゴブリンたちの脇腹にガンブレードを突き刺して――――
(ファイヤー!)
魔力の弾丸をブッパして止めを刺し、ゴブリンたちは魔石を落としてそのまま消えていった。
(んー! 良い感じじゃないっすか、マスター! よく新しいやり方で上手く戦えますね)
(モンスターバスターにも、ジャンプを活かした攻撃があるからな)
何なら二段ジャンプだってあるし、他にもジャンプ攻撃が主流のアクションゲームも多くプレイしてきたからな。コントローラーを握っての空中戦ならそこそこ自信がある。
(何より、戦闘中における機動力が上がった。やっぱり【三段ジャンプ】は良スキルだったな)
大抵の冒険者は地に足を付けた戦い方をするけど、空中で二回も自由にジャンプできる木偶人形なら疑似的にだけど空中戦も出来る。モンスターの攻撃も対処しやすくなったし、ジャンプの瞬間は加速もするので緊急回避だけでなく移動にも使える。
最初に危惧していた壁や天井にぶつかるっていう問題も、【木偶同調】ならイメージ補正で跳躍距離を簡単に調整できるしな。
この検証結果に満足し、俺たちはそのまま吉備ダンジョンを進んでいく。宝箱から安い消費アイテムを手に入れたり、空中殺法でモンスターを狩りながら魔石やカードを回収したりしていると、あっという間にボス部屋の前に到着する。
前回はもっと時間が掛かったんだけど……今回はここまで来るのに一時間半ってところか。戦闘力の上昇によって、モンスターの討伐速度も移動速度も速くなってるし、これは周回すればするほどダンジョンの踏破も早くなるって寸法だな。
(世の冒険者たちが、ダンジョンを周回する理由がよく分かるっすね)
冒険者が配信した動画で、〝如何に速くダンジョンを踏破するか〟をテーマとした、タイムアタック動画が人気だ。その動画の通り、俺たちも何時かその内三十分で一周、十五分で一周するとか出来たりするんだろうか?
そう思うと、今後もダンジョンで戦闘力を上げていこうという気になってくる。戦闘力の上がり方が二倍の分、結構早い段階で次のダンジョンの攻略を始めるのも良いな。
(それじゃあ、後はボスを倒して一旦戻るか)
ボス部屋の扉を開け、俺たちは再びコボルトナイトと対峙する。
奴が【眷属召喚】で呼び出したコボルトを前回と同じように銃撃で瞬殺し、そのままコボルトナイトに近接戦に持ち込む。
今や戦闘力の差は圧倒的。コボルトナイトの自慢の防御でも凌ぎきれず、表情が分かりにくい犬の顔でも苦しそうにしているのが分かった。
(これなら色々と練習もできるか……?)
折角だし、スキルを獲得するための行動の試行回数を稼ぐ相手になってもらおう。いざという時の為の回復ポーションもあるし。
それからしばらく、俺たちはスキルを獲得するためにコボルトナイトを弄んだ。ワザと攻撃をさせてはガンブレードで弾くのを繰り返し、紙一重で攻撃を避けるのを繰り返し、更にジャンプ攻撃を続けることで何らかのスキルが手に入らないのかと、それはもうチマチマチマチマとコボルトナイトの体力を削り続けた。
(マスター。そろそろコボルトナイトが死にそうっす)
(マジで? ……うーん、後もうちょっとだけ付き合ってもらおう)
何なら途中でコボルトナイトに回復ポーションをぶっかけた。回復ポーションはモンスターにも効果があることは検証動画で知っていたから、それで回復させながらチマチマチマチマ……。
「ゼェー……ヒュー……ゼェー……ヒュー……」
そして一時間後。コボルトナイトは全身くまなく傷だらけになりながら、荒い息を吐いて地面に這いつくばっていた。槍も盾もボロボロで、まさに満身創痍といった様子だ。
(何か……ちょっと悪いことした気分っす)
(奇遇だな。俺もだ)
戦闘力上げやスキルオーブ集めも目的だから、何時までも一週目のボスモンスターを苛めているわけにはいかない。
(つー訳で、一回ここを出たらもう一回来るからさ、その時もよろしくな)
次も木偶人形が新しいスキルを覚えるためのサンドバックになってくれ。
そのままコボルトナイトに止めを刺すと、光の粒子と共に魔石とスキルカード、そして宝箱が出現する。魔石を回収し、カードを木偶人形に取り込ませて宝箱を開けると、中に入っていたのは回復ポーションが二つに防御力が上がるポーションが二つ、そしてスキルオーブが一つ収まっていた。
(今度はどんな効果何すか?)
(えっと、ちょっと待ってろ。……【鑑定眼】っと)
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品種:耐久のスキルオーブ
装備した武器や防具が壊れにくくなるスキル【破壊耐性】を覚えられる。
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これは良いスキルだ。確かに戦闘中に武器や防具が壊れるなんて洒落にならないし、吉備ダンジョンで手に入るスキルオーブの中では間違いなく大当たりだろう。
それじゃあ、このスキルオーブを【アイテム強化】を俺と共有する木偶人形が使えばどうなるのか? その検証結果を知るべく、俺は早速木偶人形にスキルオーブを使わせ、彼女のスキルカードを確認する。
(……【破壊耐性】じゃなくて【不壊の担い手】。装備した武器や防具が絶対に壊れないってう、上位互換スキルに強化されている……!)
これでハッキリ分かった。【アイテム強化】はスキルオーブを使う時にも適用されているっていう事が。
ご質問があったのでお答えします。
Q『寝取られるの意味分かって使ってますか?』
A『一応理解しているつもりです。その辺りの事を言及した短編も投稿したりしましたしね。ただ今回の場合は便宜上そういう表現を使っているって感じですね。もっとも、新藤の女癖の悪さを考えればあながち間違いでも……』
Q『速読とか日常生活にはすごく便利なスキルなのに。戦闘用で木偶人形のためのスキルだけ考えるのか?自分にもどう効果が上がるのか試さないと。増毛とか一部の人には大人気だろうか』
A『確かに日常では便利ですけど、アイテムマスターは【木偶同調】のような例外を除けば新スキルを習得できないハズレ職です。なので店で売ってる日常で使えそうなスキルは木偶人形が求めなければ買う意味が無いんですよね。強化されることで強力な効果に変化する可能性もありますが、今の雄介の懐事情では、ギャンブルに五万円以上払う余裕が無いんです。ちなみに増毛のスキルは50代以降の方に大変人気です』
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