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ホラゲーは、ゾンビ出る前にマップを把握したい派

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 音を立てないように、こっそりと裏の勝手口から侵入する俺たち。どうやらこの扉は厨房に直接繋がる場所らしく、大昔の城とかにありそうなレンガの竈や木のテーブルの上に置かれたまな板と食材、吊るされたフライパンなどの調理道具が目に入った。


(まぁこの外見でクッキングヒーターとか冷蔵庫とかあっても不自然だけど……なぜあるんだ電子オーブン)

(てか見てください。流し台なんて浄水器付きの水道蛇口っすよ。チグハグ感パネェ)


 何というか、時代が進んで電気工事が入った城に電子機器が置かれるようになった感が凄い。日本の城とか電気照明が付けられるようになったのが殆どって話だし、例えるならまさにそんな感じだ。


(異世界は地球の情報を吸収しながら変化する……まさにその通りって感じだな)


 レシピ本が置かれている棚を見てみれば、紐で紙を縛るだけの古い造りの物から、カラー印刷がされたコンビニとかにありそうな料理雑誌まで置かれている。少なくとも、ここまで露骨に現代の地球文明が取り込まれたダンジョンは初めて見た。


(それで、どうっすか? 中に入ってみた感じは)

(外と同じだ。【窮鼠の直感】が反応しまくり。あちこちから見られてる感が凄い)


 何だったら、竈に置かれたシチュー入りの鍋の中からも気配を感じるし、テーブルの上のケーキやクッキー、食材棚からも気配を感じる。むしろ中に入ったことで気配の数が一気に増したくらいだ。


(……鍋の中身もそうですけど、テーブルの上に置かれたお菓子とか、作られてまだそんなに時間が経ってなさそうですよ? 匂い立つくらいなら作り立てって言ってもいいくらいです。もしかしたら、作った本人がすぐ近くにいるかもですね)

(それ絶対敵モンスターだろ……隠れる場所は少なそうだし、移動しよう)


 うぅ……本格的にホラーになってきやがった。胃がキリキリするが、この緊張感が返って警戒心を高めてくれる。この調子で慎重に進んでいこう。


(……窓際の廊下の構造は外見通りって感じっすね。窓から外の様子が見えます)

(その窓も内側からなら鍵を開けれるみたいだな。結構簡単な造りだし)

 

 いざって時は窓を開け放って外に飛び出るのもありだ。


(部屋数もそこそこある……一応一部屋一部屋探ってみるか)


 そういって俺はコントローラーを操作し、カズサに城内の探索をさせる。

 台所付近にある扉は保存食が置かれている食材庫。【天眼】で調べてみる限り、異世界の食材で作られた干物とかチーズとかだ。これは台所に置いてあった料理にも言えたもので、調べられる範囲では毒やスキルの影響は見受けられなかった。


(エネルギーゲージ回復とか、お腹が空いた時に食べれませんかね?)

(よほど切羽詰まったらそうする)


 ちょっと味は気になるけど、さすがに怪しすぎて食えない。【アイテムボックス】にも食材はたんまり補充してあるし、城内の食べ物を食う機会はない……と考えたい。

 それから他の部屋も調べては見たが……まぁ掃除道具とか剪定用の長い鋏とかが置いてある用具室を除けば、ほとんどが客間みたいな場所と空き室。そしてカギが掛かっていては入れない部屋ばかりだ。

 そうやって得た見取り図をスマホのアプリで作成しながら城内の探索をゆっくりと、慎重に続ける。不穏な気配はあちこちにあるけど、襲ってくる気配がない今だからこそできる事だ。今は焦らずに進めていこう。

 そう思って新たな部屋……丁度裏口から離れて一階の中央……つまり城の正面出入口に近づいてきた時。


(ヤバいヤバいヤバいって! なんか音楽なってるって!)

(これは読み通り、何か居ますね。話し声みたいなのも聞こえてきます)


 なんか陽気な音楽と、カズサの言う通り話し声らしき音をも聞こえてきた。

 薄暗い不気味な城の中に鳴り響く明るい音楽はかえって気味の悪さを増幅させ、その中心にいる何者かの話し声は何を話しているのかが分からないまでも、不安を増長させる。リ、リアルなホラー体験してる時にこういう音楽流すの止めろぉ! これでカズサの内部空間にいなかったら俺、今頃カズサの腕に抱き着いてるぞ!?


(どうします? 様子見てみます?)

(いや、後回しにしよう)


 別に怖いからじゃないぞ? 奥に進めば絶対何かが始まりそうな予感があるから、事前に情報を可能な限り集めたいだけだ。

 そう思って正面出入口から離れ、辺りを少し探索してみると、結構大きい木の扉を見つけた。

 

(……これは、地下に続く階段みたいだな)


 開けてみて分かったが、外観からは分らなかった地下室があるらしい。それも一段一段が幅広い螺旋階段だ。

 地下へ続く道って聞くと結構狭い通路を連想しているから、こんな大きい通路や階段を作るのはちょっと意外……もしかしたら、何か大きいモノが出入りする場所なんだろうか?

 気になったから調べようと階段を下ると、一段目を踏んだ瞬間にポーンッというピアノのような音が鳴った。


(ちょっ!? 防犯!?)

(いや、これは趣味らしいっすよ。一段毎に鳴る音が――――)


 まるで初めから知っていたかのように言う口調に、俺も、口にしたカズサ自身も同時に首を傾げた。


(何か思い出したのか? 趣味って、誰の……)

(……すみません、ちょっと一番下まで行ってもらえませんか? 何か思い出しそうです)


 言われるがままにコントローラーのスティックを倒し、カズサは下へ下へと進んでいく。音の鳴る階段は本当に防犯の意図がないのか疑問ではあるが、今のところは襲撃してくる気配はない。

 そのまま一番下に辿り着くと……そこには殺風景な石造りの空間が広がっていて、天井には人形を操る×字型の道具……それのデカい版が天井に設置してあり、そこから糸が垂れていた。


(…………やっぱり、間違いない。死んだ後、アタシはここで目が覚めたんです)

(ここで? 天井の奴以外は、特に何もなさそうだけど……)

 

 もしかしたら、ここがカズサが木偶人形として生まれ変わった場所なのかもしれない。だとすると、【天眼】では分からないだけで、実はそういう機構が組み込まれているのか? 死人を人形に変える的な。

 だとすると、新藤もここで……。


(目が覚めた時、真っ先に視界に入ってきたのは、ドレス姿の女の子が、嬉しそうに笑ってる姿でした)




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