動き出す事態の温度差がやべぇ
モンハンストーリーズ2が面白過ぎたのと、気分転換に書いてた短編がやたらと長くなってしまって投稿が遅れてしまいました。
よろしければ同日にアップした短編、「ハーレム主人公に顔面パンチした幼馴染みヒロイン、チャラ男風な先輩と幸せになる」も良ければ読んでいってください。
ダンジョン攻略や難敵を相手にしていた時特有の脳内麻薬が分泌を止め、ホテルに戻って速攻で寝落ちした俺は、チェックアウト前にシャワーを浴びて、カフェテリアで食事をとることにした。
英語もロクに分からない二人だが、そこをモノともしなくなるのが冒険者。俺は良く分からない言語で喋っている店員を前に、【アイテムボックス】からマジックアイテムを取り出す。
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品名:言語の翻石
近くに置いて喋るだけで、言語の壁を超えて対話することが可能。
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手のひらサイズの台座に嵌められた、澄んだ半透明の青緑色の大きな石。それをテーブルの上に置いた瞬間、何語を喋っているかも分からなかった店員の言葉が日本語として聞き取れるようになった。恐らく、俺たちの言葉もこの店員の分かる言語として聞き取れるようになっているんだろう。
結構有名な翻訳のマジックアイテムで、以前ダンジョンで手に入れた物だ。海外に出る可能性を考慮して取っておいたんだけど、役に立ったようで何よりだ。傍から見れば、若いのに外国語ペラペラのスタイリッシュな奴に見えるというお洒落ポイントも稼げるし。
「はぐはぐ♪ ……ごくんっ。思ったよりもあっさり取れましたね、【サーチ】のオーブ」
やけに幸せそうに頬張っていたサンドイッチを飲み込み、昨日は寝落ちして出来なかったダンジョン踏破報酬の話題が出てきた。
カズサの言う通り、【サーチ】のスキルが宿ったオーブはあっさり出てきたわけだが、まぁそこは想定内だ。元々踏破報酬で出やすいと評判だったし、一回~三回くらいで出てくるんじゃないかと考えてはいた。
問題は、【アイテム強化】による影響。スキルの効果がどの程度強化されているかだが……その結果はまぁまぁってところだった。
「生物だけじゃなく、物品にも反応する【レーダー】……効果の説明書きがちょっと抽象的だな」
【アイテム強化】とオーブを掛け合わせて習得した新スキル、【レーダー】は、生物にしか反応しなかった【サーチ】とは異なり、物にも反応を示すという。ただこれだけだとどういう効果が詳しく分からないから、要実験が必要だ。帰国して落ち着いたら早速試してみようっと。
「あむあむ……むぐ? ユースケ、何か見られてません?」
「……確かに。でも当たり前と言えば、当たり前かもな」
別に【レーダー】のスキルに引っかかったとか、そう言う物騒な話じゃない。カフェテリアを利用している周囲の宿泊客に、こっそりとこちらの様子を窺っている店員。至る所から好奇の視線を向けられれば、鈍くなければ気付くというモノだ。
「冒険者の情報は出回るのが早い……俺たちも結構有名になってきたし、海外でも名前と顔を覚えられてても不思議じゃないだろ。現に俺たちだって、海外の有名冒険者の顔と名前は知ってるんだし」
「ほうほう。アタシたちも有名になってきたって実感しますねぇ」
現にそこかしこからカラクリという言葉が聞こえてくる。これは海外だからと油断せずにサングラスでも着用するべきだったかな? 決して悪くない意味でこうも視線を集めると、思わずニヤニヤしちゃいそうだ。
「最近じゃあ、学校にゲートが開いた事件も話題を呼んでるからな。あれは海外でも反響があったらしいし」
「あー……なるほど」
間宮高校に開いたゲートと、それに伴うモンスターパレードは大きなニュースになった。
地方都市と言えど、住宅街や経済区からも程近い場所で発生したモンスターパレードに世間は大きな被害は発生すると思ったんだろうが、それをたった一人の……それも世間で注目している新人冒険者が食い止めたとなれば、色んな所から取材なテレビ出演の依頼が殺到したもんだ。
まぁ落日の事もあったから、最低限世間を納得させる程度にしか依頼を受けていないんだけども。
「なにより、死傷者や怪我人がいなかったって言うのが大きく評価されたみたいっすね。死人が出なかったのは、本当に不幸中の幸いです」
「新藤の事を除けば……だけどな」
もはや手の打ちようが無かった新藤はさておき。ゲートから溢れ出てくるモンスターを、民間人に向けさせなかったことも大きく評価された。カラクリという冒険者の評価も上がったし、何よりも学校の奴が皆無事だった……あの事件は、最善の形で決着がついたと言ってもいいだろう。
「その内、特に仲良くもなかった小中学校時代のクラスメイトから連絡とか来るかもな。」
「ここまで有名になりましたもんねぇ……そうなったらどうするんすか?」
正直、仲良くもなかったのに評判だけ聞きつけて会いに来ようとするなんて打算的なものしか感じないんだけど……。
「とりあえず保留かな。今は色々と忙しいし。まぁ普通の感性があれば、伝手もないし親しくもない、その上俺の連絡先を知ってる奴なんて殆どいない、そんな状況で俺に連絡取ってくる奴なんてまずいないだろ」
そもそも、うちに固定電話は無く、俺自身のスマホも、より高性能のものに変えるために、つい最近アカウントを変えたところだ。今となっては冒険者業関連や僅かな友人、そして家族の連絡先しかない。連絡先も交換しないような付き合いの希薄な相手からの連絡なんて、まずないだろう。
そんな事を話していると、スマホに通知が入った。送り主が親父からのようだ。
「どうしたんすか? 随分真剣な顔になりましたけど」
「いや、それが……」
それは、人類を取り巻く事態が大きく動く内容だった。
「前に渡した鍵に関するダンジョンが発見されたって」
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私、水無瀬薫は悩んでいた。
夏休み前から引き続き、寂しい青春を過ごしているから……ではない。いや、相変わらずボッチで浮いてる状況も悩ましいんだけど、それ以上に私を悩ませる事案が発生したのだ。
事の始まりは少し前。間宮高校にゲートが開通し、モンスターが溢れかえりそうになった事件。その解決の立役者が雄介であるという事を聞きつけた、今は別の高校に通ってる中学校時代の同級生から連絡があった。
『水無瀬さんって九々津くんと仲良かったよね? こないだクラスの子に九々津くんと同じクラスだったって話したら紹介してって言われちゃってさー。今話題の冒険者とお近づきになれるかもって友達皆期待してんの。水無瀬さんから私たちに会えないかって、彼に聞いといてくんない?』
要約すれば大体こんな感じの連絡。これまで雄介に対して関心とか無かったのに、有名冒険者になった途端にお近づきになろうとしているようだ。
だがそんなこと私に言われたって困る。私自身、何とか雄介と連絡を取りたいのに連絡が着かないんだから。家の電話から連絡しようとしたけど、スマホごと変えたのか登録されていた電話番号も使えなくなってしまっている。
今回の一件、何としても雄介を連れ出して紹介したい。学校じゃ友達無くしちゃったけど、雄介を紹介すれば中学時代の子と仲良くなって寂しいボッチを脱却できるチャンスだ。
「……それにもしかしたら、雄介は私の彼氏だって自慢できちゃうかもだし」
グラウンドにゲートが出現したあの日。やることも無くていっそのこと部活にでも入ろうかと学校内をぶらついていた私は、活動している運動部をボーッと眺めていたら、突然現れたモンスターの大群に腰が抜けて逃げ遅れた。
炎の竜巻の中で繰り広げられる激闘の気配と、時折炎の竜巻を突き破って出てくるモンスターを悪魔みたいなのが止めを刺す……そんな光景を目の当たりにして動けずにいた私は、どこか聞き覚えのある奇声を上げながら向かってくる化け物に殺されそうになったのだ。
混乱と恐怖で当時の記憶はあんまりないから詳細までは分からないけれど……雄介が木偶人形を操り、身を挺して私を守ってくれた。
これってつまり、雄介はまだ本音では私の事が好きっていう証だろう。浮気したからまだ怒ってるかもだけど、司くんは死んだし浮気は過去の事。謝れば水に流してくれるはずだ。
新進気鋭の有名冒険者というのは彼氏の肩書としては十分だし、何よりもルックス。週刊ヴァルキリーで明らかになったんだけど、これまではまさに平均って容姿にしか思えなかった雄介に、磨いて整えればイケメンと呼べるほどの素材があるとは思わなかった。彼氏として紹介できたなら、さぞ爽快に違いない。
そんな算段を立てていると、スマホに通知が入った。
送り主は間宮高校……要約すると、臨時休校がそろそろ終わりを迎え、仮校舎での授業が再開するらしい。
ご質問があったのでお答えします
Q『今更かも知れませんが進藤のモデルって呪術廻戦の禪院直哉だったりしますか?』
A『まず呪術廻戦自体読んでないので違うと言えますね。新藤もかなりのゲスなキャラだと自負してるんですが……似たようなキャラ、他に居たんですね』
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