スライムぽたぽた
、設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
以前、花橋ダンジョンでも目の当たりにした、ダンジョンの構造ないし、出てくるモンスターが変わったりする、事前情報を台無しにする一種の災害、ダンジョンリフォーム。それをこんな短期間で二度も体験するなんて、俺たちも運が悪い。
(……しかも、これは一体どういうことだ?)
全体を見渡してみても、ボス部屋に居るのはカズサとおマル、そして巨人を象った倒すことが出来ないラヴァスライムだけ。
状況から察するに、この巨人ラヴァスライムがボスモンスターみたいだけど……コイツはギミックモンスター。倒せない敵だ。
(とりあえず、一発ブッ放してみますか?)
その言葉に同意するように、俺はボタンに指をかける。
分からないことが多い以上、色々と試して攻略法を見つけるしかない。バスターモードの魔王銃剣を巨人ラヴァスライムに向けて【天魔轟砲】を、おマルからは【獄炎】を放ったんだが……高火力の攻撃スキルは二つともそのまま直撃したにも拘らず、そのまま内部へ飲み込まれてしまった。
(……マジ?)
まるで底のない沼に石ころを落としたかのような手応えの無さ。ここに来るまでに遭遇したラヴァスライムなら、デュアルモードでの魔力弾連射という大火力攻撃でもはじけ飛んでいたというのに、この巨人は体が崩れるどころか吸収してしまった。
(ヤバい!)
そのまま巨大な掌でカズサとおマルを叩き潰そうとする巨人ラヴァスライム。これまでマグマを吐き出す攻撃しかしてこなかったけど、ラヴァスライムの体自体が超高温のマグマで形成されている。
つまり、その体自体が耐久力を無視する攻撃のようなものだ。体に触れればカズサもおマルもタダじゃすまない。
(【ノックバックカウンター】を……!)
(いや、駄目だ! 避けるぞ!)
普段なら仰け反り狙いの【ノックバックカウンター】で隙を作るところだが、今回はそうもいかないと【窮鼠の直感】が囁く。思考を切り替え、おマルと左右に分かれる形で【ミラージュステップ】で回避しながら腕を魔王銃剣で薙いでみたが、先ほどと同様に手応えは一切ない。泥に棒を突っ込んだような……って!?
「と、取れなくなっちゃってません!?」
なんと魔王銃剣が粘度の高いマグマに絡め取られて抜けなくなってしまった。幸いにも、【不壊の担い手】の影響で変形したりすることはないが、この状況は非常によろしくない。俺は咄嗟にコントローラーを操作し、魔王銃剣を一旦【アイテムボックス】に収納、それと同時にバックステップでカズサをその場から離脱させる。
「あっぶなっ!?」
その直後に、一颯が立っていた場所に大量のマグマが叩きつけられる。後コンマ一秒遅ければ、やられるところだった……!
(厄介っすねぇ……遠距離、近距離問わずに攻撃に対する耐性が高くて、耐久力無視の攻撃をしてくるなんて)
(しかも俺たちの十八番である【ノックバックカウンター】も、試すには危険な相手だからな)
【ノックバックカウンター】は、相手の近接攻撃に対してこちらの近接攻撃をぶつけることで成立するスキル。そもそも実体があるとは言い難いこの巨人ラヴァスライムに対して有効なのか、甚だ疑問だ。
「グルルルルルル……ガァアアアアアアアアアアアアアアッ‼」
早速攻めあぐねたその時、巨人ラヴァスライムの上半身を青い火の粉が包み込み、大爆発を引き起こす。二手に分かれたおマルの【爆砕破】だ。高威力であることに加えて、こと敵を吹き飛ばすことに長けたスキルだが……この攻撃を受けても、奴は微動だにしない。
(マジっすか……!)
戦闘力15万。常時発動型スキルのブーストを受けた【爆砕破】でも貫けない。やはり、ギミックモンスターであるラヴァスライムは威力が高いだけの通常攻撃で倒せる敵じゃなさそうだ。
(そうなると、考えられる敵の力の秘密と、攻略方法は……)
今使える攻撃スキルを次々と試していきながら、頭の中で必死に情報を整理し、推測する。
①ボスの本体は別にいて、そいつはどこかに隠れながらラヴァスライムを操っている。衝撃を受けても体が弾け飛ばないのは、そいつのスキルによるもの。
②巨人ラヴァスライムがボスだが、何らかの特殊な方法でのみダメージを与えることが出来る。現状ではそれが何かは不明。
考えられる攻略方法は二通りだが、情報不足の上に手持ちのアイテムやスキルではどうにもできそうにない……それでもダンジョンが攻略されることを前提に作り出されたモノだとするのなら、どうあっても倒せないボスなんて存在しないはずだ。
諦めずに何らかの活路を見つけ出そうと、手に持つ魔王銃剣に【絶氷】の冷気を纏わせて切りつけようとしたその時、魔王銃剣の刀身に帯びていた冷気が、炎に変換された。
(何だと?)
俺たちはこんなことができるスキルやアイテムを持ち合わせていない。おマルも同様だ。となるとこれは敵のスキルによるものだが、なぜこんなことをした? これまでどんな攻撃も真っ向から受け止め切った巨人ラヴァスライムが、高威力の【天魔轟砲】や【爆砕破】だけでなく、その他の攻撃スキルには無防備で、火力で劣る【絶氷】にだけ反応したかのような……。
(固まるのを、嫌がった?)
溶岩というのは名前の通り、溶けた岩だ。冷えれば当然固まるわけだが……そこに活路を見い出した気がする。
試しに奴の意識が空中に居るおマルに向いている隙を狙い、【アイテムボックス】からペットボトル入りに水を取り出し、巨人ラヴァスライムに向かってぶっかけようとしたが、その水も一瞬で燃え上がり、ペットボトルを溶かし尽くした。
「あちち……っ。ユースケ、今のは!?」
(あぁ! 水や冷気を、明らかに嫌がっている!)
状況から察するに、常時発動型スキル。水や冷気といった、マグマで構成された体を冷やすモノを炎に変換するスキルと仮定する。
そうなると、【絶氷】やただの水ではどうしようもない。奴のスキルを掻い潜る条件を満たした何かで、奴の体を冷やし固めることが出来れば勝機があるかもしれない。
そこで思い浮かぶのは、このボス部屋に辿り着くまでに見つけた数々の不自然なモノ。もしかしたら、あれらにボスの攻略の秘密が――――
(ユースケ! ヤバいのが来ますよ!)
そんな考察をしていると、巨人ラヴァスライムの上半身部分が風船のように丸く大きく膨らみ始めた。【窮鼠の直感】が脳に全力で警報を鳴らし、咄嗟にカズサをボス部屋の出入り口である扉の方へと反転。おマルをテイムシールに戻すと同時に【ブースト】で駆けだした、その瞬間。
「わぁあああああああ!? あっつ!? あぶなっ!?」
まるで大噴火を起こすように、巨人ラヴァスライムの頭上から膨大な量のマグマが噴き出し、一粒一粒が多い輪のような大きさを誇る灼熱の雨を降らせた。一発でも当たれば耐久力無視の一撃がカズサの全身を覆い、死亡が確定するだろう。
(だが……こっちの方が、速い!)
危機を察して先に動いたのが功を奏した。ボス部屋全体にマグマの雨が地面に叩きつけられる直前、カズサの体は扉を突き破るかのようにボス部屋からの脱出に成功したのだ。
危ないところだったが、攻略法が見えた気がした。幸いにも他のボスモンスターと同じく、ボス部屋から出れないようだし、ダンジョン内でじっくりと攻略法を見つけてやる。
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