表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/138

スライムうじゃうじゃ

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


 洞窟内生物と言えばコウモリ。そんな先入観は異世界ならば火山でも適用されるらしく、このクソ暑い洞窟内でも元気に生息していた。


「ギィイイイイイッ!」


 ただし、翼を広げれば10メートル以上は普通にありそうなクソデカいのが。

 大気や洞窟内部をビリビリと震わせるほどの鳴き声は物理的な衝撃波を生み出すまでに至り、それに指向性を持たせて放つ音波攻撃のようなスキルを、耳の痛みに耐えながら全力で回避する。

 ただの音と侮れない。地面や壁を一瞬で砕くあたり、カズサやおマルも直撃すれば大きなダメージは避けられないだろう。


 ―――――――――――――――――――――――――

 種族:ブラス

 戦闘力:139900

 洞窟内部に生息するコウモリ型モンスター。音に由来するスキルを多く持ち、反響を利用した索敵に優れるが、頭が悪い。

 ―――――――――――――――――――――――――


(くっ……! なんて奴だよ……!)


 指向性を持たせ威力の高い音の衝撃波。威力は低いが物理的圧力を伴う、自分を中心に全方位に放たれる咆哮。身を隠しても即座に発見してくるスキルは、俺たちが求める【サーチ】に通じる厄介さがある。鬼のように広い洞窟だから戦闘力以上に素早い動きも阻害されていない難敵だ。


「ギィイイイイイッ‼)

(くそぉおお! 止めろぉおおおお! そんなスキルを連発されたら――――)


 だが、これだけなら今更どうってことはない敵だ。確かに油断はできないけれど、おマルを含めた俺たちなら難なく対処できる。

 じゃあスキルや戦闘力以上に、コイツの何が厄介かって言うと――――


(ラヴァスライム共が来ちゃうじゃないか!)

(ユースケ、もう囲まれてます)

(チクショォオオオオ‼)


 ブラスの音波攻撃に引き寄せられ、カズサを囲むラヴァスライムたちが大量のマグマを一斉に撒き散らす。このダンジョンのモンスターと来たら……!


(いい加減にしろよクソッタレがあああああああああああ‼)

「ギャアアアアアアアアアッ!?」


 インターバルを気にして取っておいた【ブースト】でカズサを一気に離脱させた俺は、背後から聞こえてくるブラスの断末魔を聞きながら怒声を上げるしか出来ないのであった。


   =====


(最悪だ、このダンジョン)


 何とかラヴァスライムや他のモンスターの居ない場所へと逃げ込めた俺たちは、一旦エネルギー補給がてらに休憩を取ることにした。

 このダンジョンに潜って既に半日以上は経っているだろうか……巨大な火山を模した箱庭型ダンジョンだという事で、攻略には日単位の時間が掛かるだろうと予想はしていたけれど、俺たちは未だに殆ど進めていない。

 

(それもこれも、ラヴァスライム共のせいだ……!)


 少し大きい音を立てるだけで数十体以上が即座に集まってくる厄介なギミックモンスター。なるほど、推奨戦闘力が同じでも、暁ダンジョンより難易度高いっていこういう事だったのか……!

 しかもだ、そんな厄介なラヴァスライム共をより一層厄介にしている存在が、このダンジョンにはウヨウヨいる。


(あんな厄介なのがいるんなら、こっそりボス部屋まで行きたいんですけどねぇ。なんていうか、大きい音を立てるモンスターとばっかり遭遇しますね)


 そうなんだよなぁ……俺たちは事前情報を元にダンジョンに入る前からラヴァスライムを避けて攻略する方針を固めたんだけど、どういう訳かラヴァスライムを呼び寄せるモンスターとばかり遭遇するのだ。


 ―――――――――――――――――――――――――

 種族:ヴォルカ

 戦闘力:140900

 溶岩の中を泳ぎ回るワニ型モンスター。灼熱の中でも生物が放つ熱源を細かく識別するスキルを持ち、溶岩の近くを通る獲物に咆哮と共に強靭な顎で襲う。

 ―――――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――――

 種族:ミザル

 戦闘力:130000

 主に洞窟内に生息するサル型モンスター。透視を始めとする目に関するスキルを多く持ち、甲高い鳴き声で仲間を呼ぶ。

 ―――――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――――

 種族:ボムサウルス

 戦闘力:145000

 主食である爆炎石の成分を操る恐竜型モンスター。口から起爆性のある粉塵を大量に吐き出し、歯を打ち鳴らして火花を散らすことで大爆発を起こす。鼻が非常に利く。

 ―――――――――――――――――――――――――


 これがB-54ダンジョンで遭遇した主なモンスターである。どいつもこいつも咆哮だの鳴き声だの爆音だのと、ラヴァスライムを悪戯に引き寄せる行動ばっかりとってくるもんだから、こいつらとの戦闘よりも近寄ってくるラヴァスライムへの対処で手一杯。

 しかも探知能力にも優れているため、隠れて進もうとしても見つけられてしまうのだ。そしてデカい音を鳴らしてラヴァスライムを引き寄せる……頭の悪いブラスなんて、自爆同然の事をしてたぞ。


(それにしても、聞いてたのとなんか違くないっすか?)

(それは俺も思ってた)


 魔王装備所持者である俺たちは今、ギルド本部のバックアップを受けている状態にある。だからB-54ダンジョンについてもかなり事細かな事前情報を手に入れられたんだけど、その情報よりもラヴァスライムを含めて全種類のモンスターの数が多いように感じるのだ。


(少なくとも、ラヴァスライムがあんなに出てくるなんて聞いてない)


 元々未知数なところが多い異世界。それもE大陸を除けば最高位に位置するダンジョンなだけあって、攻略情報は少ないから確かなことを言えないのは仕方ないけれど……。


(いずれにせよ、方針を変える必要があるな)


 まず、ドロップするカードや魔石の類は諦めた方がいいだろう。カードは現状では旨味が薄いし、金にも困ってないから魔石も優先度が低い。狙うとすれば、オーブや魔法の装備が入ってる可能性がある宝箱だ。

 つまり、ボス以外のモンスターは無視して目当てのアイテムだけかっさらう……これが理想的なんだが。


(モンスターって、しつこいですよ。しかもここは箱庭型ダンジョンで、冒険者を追いかけやすいですしね)


 アイゼンが良い例で、戦闘力が四倍も五倍もあればモンスターの方から逃げることもあるみたいだけど、残念ながら今の俺たちにそんな戦闘力を引き出す手段はない。

 となると、簡単に思いつく手段としては……。


(よし。ここはラヴァスライムには無い特権を活かすことにしよう)


 そうと決まれば早速とばかりに行動に移そうとした、その時。

 

(うぉおうっ!? ビ、ビックリしたぁ!)

(……冒険者の、ご遺体ですかねぇ?)


 ホログラム画面の端に、古びた白骨死体が野晒しになっていた。熱波で炙られて表面は茶色がかってるし、肋骨から下は全部砕けたのか、頭と片腕の骨しか残っていないけど、ダンジョンに死体があるという事は、冒険者である可能性が高そうだ。遺体の近くには、ボロボロの錆びたナイフもあるし

 

(瀕死の状態で逃げて、ここで力尽きたってところか?)

(だとしたら、ちゃんと弔ってあげないとですね)

(そうだな……ん?)


 マッピングアプリで位置情報を保存し、帰りにもう一度ここによって遺体を回収しよう。お互いにそう考えて俺とカズサが頷き合うと、骸骨の腕の先に英語で文字が彫られてるのが見えた。

 死の間際、このナイフで彫ったんだろうか? 成績が悪い俺には英文の解読なんて無理だけど、生憎こちらにはスマホがある。


(翻訳アプリを使えば、ワンチャンありますね)


 俺はスマホの翻訳アプリを起動して、不格好なアルファベットを順番に入力する。この手のアプリは直訳しか出来なくて、実際に書かれた文字の意味とは違ったりすることも多いんだけど、ある程度は内容が分かるはず。

 そうしてスマホの画面には、翻訳された日本語でこう書かれていた。

 

『なんて事だ、あのモンスターは倒せない!

 だがダンジョンである以上、攻略法必ず存在するはずだ。

 それが何か分からないが、後にこの場所に訪れる冒険者たちが絶望に屈しないよう、せめてこのメッセージを残す』


  

 

面白いと思っていただければ、お手数ですが下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >攻略法儚らなず存在するはずだ。  これは翻訳アプリのやらかし?  攻略法“は必ず”存在するはずだ。  の誤変換?  展開として(あやしい精度の翻訳アプリで)際どいので、誤字報告…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ