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ガールズトークに動じないカズサさん

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


「はふぅ……」


 絶妙な湯加減の温泉かけ流し。外を眺めれば、淡く光り輝く桜吹雪が舞う城下。空には満天の星空なんて言う、贅沢極まりない露天風呂に浸かりながら岩にもたれ掛る。

【ゲージシステム】のスキルを持つアタシは、スタミナゲージの管理にさえ気を付けている限り、疲労というのには無縁だ。だから温泉で疲れをいやすなんて言うのは基本的にないんだけど、心地いいものは心地いい。


「何か悪いっすねぇ。アタシたちばっかりこっちのお風呂独占しちゃって……交代制にでもします?」

「止めといた方がいいんじゃない? 順番間違えられたら嫌でしょ。向こうに文句ないみたいだし」

「それもそうっすね」


 ユースケはどちらかというとシャワー派の人だ。別に温泉とかに興味が無い訳じゃないみたいだけど、ゆっくり湯舟とかには浸からないことは、これまでの生活を見て居れば分かる。

 それに男女四人で暮らすなら、こういった決まり事は必要だ。アタシだって、裸をアイゼンさんとかに見られたらいい気はしないし、ユースケに見られてもそれはそれで恥ずかしい。

 ……まぁアイゼンさんなら、人の気配とか察知しそうなもんだけど。ユースケはその手のスキルはないし、是非もない。


「……ふむ」

「? 何?」

 

 ……少し気になったら興味が出てくる。今思い出したけど、こういうところは子供の頃からあんまり変わってないなと自己分析しながら、アタシは聞いてみた。


「ちょい聞きたいんすけど、普段はどうしてたんすか? アイゼンさんはずっと内風呂を?」

「普段は露天。内風呂なんて、アンタらが転がり込んできたから久々に掃除して湯を張るようにしたくらいだし」

「それってアイゼンさんと一緒にわぷっ!?」

「うっさい、マセガキ」


 ピュッとお湯を掛けられてしまった。

 ガールズトークよろしく、根掘り葉掘り聞いてみたかったけど、話したくないなら仕方ない。…………もう態度で肯定してるようなもんだけど。顔真っ赤だし。


「そんなことより、どうなのよ? 記憶は今、どの程度戻ってるわけ?」


 きっと照れ屋なところがあるカグヤさんは、天然気味なアイゼンさんに振り回されてるんだろうなぁと、普段の二人の様子を想像していると、カグヤさんは無理矢理話題を変えてきた。


「んー、死ぬ前の記憶はほぼ戻ってますけど、蘇る前の記憶……七年近くの間、どうしてかはやっぱり何も。やっぱりアタシが今こうしていられるのも、魔王とやらのおかげなんですかね?」

「でしょうね。アタシも他の魔王の力を把握してるわけじゃないから何とも言えないけど、死人を人形として使役するくらいなら、出来る奴もいるんじゃない? 現に私だって、死んだ城下町の人間に仮初の肉体を与えて生活させてるしね」


 アタシが元は人間で、異世界に存在する魔王の力で木偶人形として蘇ったかもしれないという事は、既に二人に伝えている。  

 結局有益な情報は出てこなかったけど、同じ魔王に〝可能性は高い〟と肯定してもらえるだけでも、アタシとユースケの行動の後押しになってくれた。


「ただそうなると、どうしてアタシは宝箱なんかに入ってたんでしょう? それも機能を隠すように」


 これまでの経緯を整理すると、小学三年生の誕生日に死んだアタシは、魔王の力でなんやかんやあり、気が付けばとあるダンジョンの踏破報酬である宝箱に入っていた。

 それでアタシを最初に手に入れた冒険者たちは、仲間であるアイテムマスターにアタシを使わせたんだけど、普通の木偶人形以上の性能が見られず、売りに出された。

 そんなアタシを買い取ったユースケによって、他のアイテムマスターでは発動しなかったアタシの隠しスキルである【木偶同調】などが発動し、今に至るわけだけど……。


「他のアイテムマスターじゃなく、ユースケに反応したこと。もしかしたら、仕組まれてたのかもしれないですね」


 全部が全部、件の魔王の仕業とは思いたくないけれど、少なくともユースケがアタシの【木偶同調】スキルを使えたことに関して言えば、魔王が何かしたと考えなければ説明がつかない。

 

「多分、それは間違いじゃないでしょうね」


 そんなアタシの推測に同意するように、カグヤさんは頷く。


「話を聞いてから少し考えてみたんだけど……魔王は元々、落日を倒すための試練として用意された、【英雄】スキルを持つ冒険者に力を与えるモンスター群。だったら【英雄】スキルを持つ人間を何らかの形で助ける力を持つ魔王が居てもおかしくない」

「ふむふむ……そう言われると、確かに」


 ただでさえ、攻略の鍵となる人材が少ないのだ。一人失われれば人類滅亡に直結する以上、滅亡を回避しようとした魔術師が何らかの形で救済措置を用意するのはある意味当然なのかもしれない。  


「魔王と一口に言っても十人十色。行動理念や価値観が違うし、それに応じて試練の内容だけでなく能力に変化が出る。私たちの望みは、いずれも落日を倒すことだもの。戦力が減りそうになったら、リカバーしようとする魔王が居てもおかしくないでしょ?」


 グッと腕の筋を伸ばしながら話を終わらせるカグヤさん。

 これ以上は彼女も推察しようがない……という事だろう。果報は寝て待てと言わんばかりに、温泉を楽しむことにしたようだ。アタシもそれに倣うとしよう。


「話は戻るんすけど、結局カグヤさんとアイゼンさんってどんな関係なんですか?」

「な、何でそこに戻んのよ」


 その場にいない女子の悪口と同じくらいに、他人の恋愛事情の追求はガールズトークの定番だとクラスの子たちも言っていた。前者は性が悪い話だからする気がしないけど、後者ともなればアタシだって一人の女。大いに気になる。


「アイゼンさんはもう公言しちゃってますけど、カグヤさんは何時もはぐらかしてるなって思って。一緒に住んでるんだし、悪い気はしてないとは思いますけど」

「も、黙秘! 黙秘権を行使する! この質問は禁止!」


 多分、数百年以上は年上のカグヤさんだけど、こうして顔を真っ赤にして慌てふためく彼女は正直可愛い。少し悪戯心が湧いてきて、もうちょっと軽く問い詰めようとしたところで、カグヤさんはこっちを睨んできた。


「そう言うアンタらはどうなのよ? アンタは雄介とはどうなの?」


 苦し紛れのカウンターだ。多分、アタシを慌てさせようとしているんだろうけど……。


「好きですよ。大好きです」


 自分でも意外なほどにスルリと言葉が出てきて、カグヤさんは言葉を詰まらせた。


「まぁ本人がいる所でここまではっきりとは言えないんですけどね。流石に恥ずかしいですし、あはは」


 なんか照れ臭くなって、それを紛らわすように頭を掻く。

 正直、アタシたちの間には色んな障害がある。アタシはもう生物と言えるかどうかも微妙な存在だし、ユースケは長年アタシの事を男だと思ってたし、何より落日の事もあるし。

 でも幸いなことに、ユースケは憎からず思ってくれているらしい。それがどの程度の事かは分からないけど、前向きになれるには十分だ。だから少なくとも、落日を超えるまではこの想いに蓋をしておくと決めている。 


「それでも……うん。落日を乗り越えた先にある明日を手に入れた時には、アプローチでもしてみようかなって思います。知らない内に彼女とか作られるのは、二度とゴメンですし」

「……やっぱりアンタ、【英雄】スキル持ちだわ」


 それは一体どういうことなんだろう? 首を傾げていると、カグヤさんは溜息を一つ零す。


「精神が早熟というか、物怖じしないのが多いのよ。日常から戦いにかけて、色んな意味でね。スキル所持のための条件は分かっていないところが多いけど、もしかしたらそう言った精神面も関わってるのかもね。ゼンなんて、冒険者になった十五歳の時には既にあんなだったって言うし」

「マジっすか」


 やや天然なところなどを除けば、既に二十代前半の落ち着きじゃないアイゼンさんだけど、少し思い当たる節がある。アタシも子供の頃は良くも悪くも子供っぽくないって言われてたし、やっぱりディザスターモンスターとかと戦うにあたって、肝が据わってることが大前提じゃないといけないからとかだろうか?

 

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