作者が初めてエロ本読んだのは小二の時
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
俺の部屋からアルバムを引っ張り出し、小学校低学年の時に一颯と一緒に撮った写真を見せる。
プラスチック製の表紙の安っぽいアルバムには、サキュバス並みの美少女な姿をした今の彼女とは似ても似つかない、男並みに短い黒髪に短パンとタンクトップ姿をした、どっからどう見ても女子には見えない一颯の姿が写っていた。
「あー……確かに。昔は髪の毛の手入れも面倒くさそうだったから、何時もハサミで雑に切ってたんですよね。格好も動き易さ重視でしたし」
「だろ? 俺がずっと男だって勘違いしてたのも無理なくない?」
他の写真を見てみても、夏に虫取りしてる写真とか、ボール遊びしてる写真とかだし。プールにでも行けば女だって分かったかもだけど、この時の俺たちって近くの川で遊ぶのが性に合ってたんだよなぁ。家の近くに整備されてて、階段で降りれる川があって……。
「今思えば、川遊びしてる時に上の服が濡れても全く気になんなかったんだから、子供って色んな意味で怖いもの知らずですよねぇ」
「そうだな」
水鉄砲で撃ち合いとかもしたけど、まぁ全然気になんなかった。
小学校低学年の男女なんて、下半身を除けば違いなんてほぼ無いに等しい。しかも一颯はかなり中性的な顔つきだったからな。昨日の戦いの最中、【木偶同調】を通じて一颯が実は女で、TSしてきた訳じゃないって分かって安堵したものだ。
蘇ったと思っていた幼馴染が、性転換してたなんて言われたら、どう受け止めれば良いのか分からん。
「しかもその喋り方だろ? 昔はもっと男っぽい喋り方してたし……どうしたの、それ?」
「いやぁ、木偶人形になってからはもうこんなんでしたし。何分、全部思い出したわけじゃないんすよね」
おかしいのは喋り方だけじゃない。亡くなった小学三年の時から、彼女の精神は明らかに成熟しているのだ。
魔王の力によって精神を弄られでもしたのか、それとも死んだ状態でも意識があって、時間と共に成長したのか……どうやらその判断を下すには、まだ材料が足りないらしい。
「今思えば、ここしばらくの月命日の度に、俺は本人の目の前で墓参りしてたんだなぁって思うと、何か凄い間抜けな気分だ」
「いやいや、そんなことはないっすよ。正直、記憶が戻る前は妙な気分になって不思議だったんですけど、思い出した今となっては嬉しいもんです。白咲一颯のことを、忘れないでいてくれたんだなぁって。もう随分昔のことなのに、よく忘れないでいてくれましたね」
そう言われると、確かにそうかもしれない。
大抵、子供の頃の記憶なんて忘れるか摩耗するかのどちらかで、俺自身、一颯関連のこと以外の記憶は朧気で、どんな会話をしたかなんてこれっぽっちも覚えちゃいない。
「まぁ……それでも忘れないくらいには、俺にとって大事だったしな」
「そっすか……えへへ」
……なんだ? この雰囲気。なんていうか、俺の性に合わない空気が流れてるぞ?
「それはそうとさ、俺はこれからお前のことをどう呼べばいいんだ?」
とりあえず強引に話の流れを変えてみたが、実は結構切実な問題だ。
一颯とカズサ。俺はこれまで、同じ発音であってもかつての親友と冒険者としての相棒、その意味を使い分けてて名前を呼んでいた。それがいきなり同一人物だって分かって、俺的には結構混乱している訳で……。
「あぁ、それなら木偶人形としての名前……カズサで良いっすよ」
再び呼び名問題浮上かと頭を抱えた俺に、彼女はあっさりと告げる。
「良いのか? だってお前……」
「ユースケ」
何かを言おうとする俺を、湖みたいに綺麗に澄んだ水色の視線が射貫いて、堪らず口を閉ざす。
「一緒に生まれて、一緒に死んだ肉体がない以上、やっぱり白咲一颯はもう死んでるって思うんです。死者が蘇った訳じゃない……こうして話せているのも、本当なら叶う筈もなかった。ただ消えるはずだった魂を、別の肉体に入れて転生しただけなんです」
「そうか……だから転生か」
それは多分、彼女にしか本当に理解できない事態なんだろうが、それでも何となく想像は出来る。
俺だって、明日にでも体を差し替えられたとしても、それで自分自身を九々津雄介だって受け入れられるかと言われれば、多分悩む。生まれ持った肉体って言うのは、やっぱりそれだけ重要だと思うから。
「だからアタシで良いんです。それに、生きていてもボクと縁が途切れた両親が付けた白咲一颯より、死んでも縁が途切れなかったユースケが付けてくれた、一之瀬カズサっていう名前の方が気に入ってますしね」
彼女はそうカラカラ笑いながら言ってのけた。
「そっか……分かった。それじゃあ改めて、これからよろしく頼むよ、カズサ」
「はい、こちらこそっす」
一颯は確かに死んだ。そりゃあ、記憶も心も木偶人形となった体で受け継がれているけど、死人が蘇ったのとは違う。
俺が初めて使ったあの時から、彼女は新しい体で、新しい生を歩き始めたんだ。その上で、俺と一緒に行き、冒険する道を選んでくれたなら、俺はもうそれだけで十分だ。
=====
「それでユースケったら、そのまま田んぼをずんずん進んでいって、真ん中あたりで足が抜けなくなって泣いちゃったんすよね! その辺りの事はちゃーんと覚えてますからね?」
「それで助けに来たお前も足が抜けなくなって、通りがかった田んぼの人に怒られながら助けられたろ。俺の事笑えねぇぞ」
「あははは。そうでした。それで結局二人して泥まみれになって、水道借りて頭から全身洗ってましたね」
「……今思えば、何で俺は田んぼの中に行ったんだっけ?」
「大きい亀が泳いでるのを見たからじゃありませんでしたっけ? 捕まえて飼うって息巻いてましたよね」
「そうだった……! おのれ外来種め、とんだ黒歴史を作っちまったぞ」
それからしばらくの間、昔話に笑って花を咲かせた俺とカズサ。
今となっては小学校時代の話が出来る相手なんていなくなってたと思ってたから、思いの外かなり盛り上がっている。
いくら一颯が死んだとは言っても、やっぱり心も魂も引き継がれている。だから割り切るには少し時間が掛かるだろうけど、思い出話くらいしてもいいだろう。
それに、ただ昔話に花を咲かせたいわけじゃないし。
「こうして話してみると、やっぱりお前は死ぬ前のことはかなり覚えてるな。俺なんか、細かいところは結構忘れちゃってるのに」
「人形の体だから……ですかねぇ? それか眠ってる期間が長かったからとか? 感覚的に長い時間を過ごした気がしないんすよ」
「そうか……じゃあ想像以上に話が弾んで脱線しそうになったけど、本題。死んだ後の事は?」
「それが全然。殆ど何も思い出せないです」
新藤を一颯と同じ木偶人形として蘇らせ学校を襲わせた、新しい魔王。その手掛かりがあるとすれば、失われた彼女の記憶の中にこそあると思うんだけど、現実はそう甘くは無いってことか。
「ただ見覚えのない女の子の姿を朧気に憶えてるような……駄目ですね。やっぱりそれ以上のことは分んないです。すみません」
「謝ることじゃねぇけど……情報アドバンテージが対して得られていないのはやっぱり厳しいよな」
世界が滅びに向かおうとする中、ラストダンジョンやキーダンジョンの手掛かりとなりうる魔王の情報は幾ら集めても足りない。既に親父を通じて各所に情報の共有は行っているけれど……目の前に手掛かりがあるというのに、それが詳しく分からないって言うのは、何とももどかしい。
件の魔王とも戦う事になることを考えれば尚更だ。
「やっぱり、現状では一番の情報はこっちってことか」
そう言って俺は【アイテムボックス】を発動し、中から有るものを取り出す。
「それは?」
「新藤との戦いの時、奴の全身を【爆砕破】で粉々にしただろ? その破片の中から見つかったんだよ」
それは黄金に輝く、途方もなく複雑な形状をした一本の鍵だった。
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