程よい成長チートとはこのことだと思う
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
それからしばらく、モンスターを倒しつつ奥へ奥へと進んでいく。吉備ダンジョンは大人くらいの方向感覚があれば迷う事のないダンジョンで攻略も順調、道中で宝箱もいくつか見つけたりした。
(とは言っても、そこまで良いアイテムはありませんね)
(あぁ。壺爆弾に、低級の回復ポーションが二つだしな)
ダンジョンの道中にある宝箱の中身は基本的にランダムだけど、吉備ダンジョンみたいにランクの低いダンジョンは、安い消費アイテムが出てくる割合が高い。
このダンジョンで夢を見るなら、やはりボスモンスター討伐の報酬で出てくる宝箱だ。そう思い直した俺たちはそのまま道を進み、遂にダンジョン最奥の直前にある、幾つもの人間や悪魔の像が彫られた、大きな鉄扉の前に来ていた。
(何か……不気味っすね)
(まさに地獄の門って感じだ)
この門を潜る者は一切の望みを捨てよ……という銘文で有名なアレだ。
ダンジョンにはボスモンスターの活動区画……通称、ボス部屋というものがあって、そこに入るためには扉を潜る必要がある。それが目の前の扉っていうわけだが……なるほど、凄いボス部屋っぽい雰囲気あるじゃないか。
(……ふぅー……)
初めてのボスモンスターとの戦闘を前に、俺は大きく息を吹く。
ボスという頭文字が付けられたモンスターは、どいつもこいつも厄介なスキルを持つと言われている。事前に情報を得ていても倒される冒険者が多いと言われるくらいに強力なスキルだ。
幾ら初心者向けの吉備ダンジョンのボスモンスターとは言っても、例外は無い。
(よし……行くぞ)
気持ちを落ち着かせ、巨大な鉄扉を押す。少し手で押しただけで、後は勝手に開いていく扉を潜った先には、身長三メートルほどはある、大盾と突撃槍を構えた半人半犬のボスモンスター、コボルトナイトが待ち構えていた。
「アオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
「来るっすよ、マスター!」
大盾を全面に構えながら突っ込んでくるコボルトナイトに対して、俺はコントローラーを操作して木偶人形に銃撃を掃射させるが、甲高い金属音と共に大盾で弾かれ、ダメージは一切通っていない。
(やっぱり、これくらいじゃダメージが通らないか……!)
コボルトナイトの事は事前に調べ上げている。大盾によるガードを主軸に、隙を見て槍で攻撃するという堅実な戦い方を徹底する強敵だ。戦闘力もここまで現れたモンスターと比べれば飛び抜けて高い。
だが一番厄介なのは――――
「アォオーンッ!!」
(ぬわっ!? マ、マスター! 増えた! モンスターが増えたっすよ!?)
コボルトナイトの甲高い咆哮と共に、地面から木偶人形と同じくらいの体格の犬人間……通常のコボルトが四匹出現する。
これがコボルトナイトのスキル、【眷属召喚】だ。コボルトはこのダンジョンの道中でも現れたが、強さはランイーターよりも素早く、武器を使うというくらいだが、数の利を活かした攻撃はそれだけでも脅威だろう。
(問題ないっ! 一気に潰す!)
だがコボルト自体の耐久力はランイーターとさほど変わらない。木偶人形の攻撃の中で一番火力で劣る、デュアルモードの銃撃でも十分なダメージが入るくらいだ。
俺は頭の中で、これまで見て参考にしてきた、双拳銃を実際に使う冒険者や、モンスターバスターの双拳銃の攻撃アクションをイメージし、ボタンを押して木偶人形を操る。
完全にとは言わない。でも、これといった練習もなく有名な冒険者の戦闘技術を高いレベルで簡単に再現できるというのが、【木偶同調】の最大の強みだ。
木偶人形は回転しながら、まるで舞い踊るように洗練された動きでガンブレードの照準を合わせて発砲。召喚されたコボルトは瞬く間に光の粒子へと帰っていった。
(【眷属召喚】にはインターバルがあるはずだ! ボス一匹になっている今の内にダメージを与えるぞ!)
(あいあいさー!)
味方が消えた隙を狙って近接戦に持ち込みかける木偶人形。それに対してコボルトナイトは、大盾を赤く輝かせながら突進してきた。
あれは確か、冒険者も覚えることができる【シールドチャージ】という、大盾で強力な体当たりをするという攻防一体のスキルだ。
その勢いはまるで走る車。直撃を食らえば間違いなく吹き飛ばされるんだけど……直撃の直前、俺は×ボタンを押して木偶人形は高く跳躍し、攻撃を回避する。
(今だぁっ!!)
「うりゃりゃー!!」
「ギャインッ!?」
そしてそのままコボルトナイトの頭上……大盾の防御から外れた方向から魔力の弾丸を連射する。
モンスターバスターにおける双拳銃の攻撃アクションに、【跳躍撃ち】というものがある。これはモンスターの体高よりも高く跳ぶことで、モンスターの攻撃を避けると同時にダメージを与えることができるというものだが、それを木偶人形の戦闘力と【木偶同調】の力で再現したというわけだ。
(とは言っても、流石にこれだけじゃ倒せないよな)
有効打は与えたが、ボスモンスターだけあって体力も多い。そのまま着地するまで連射を続けたけど、途中で盾を構え直されてダメージを防がれてしまった。
着地と同時にガンブレードを構え直すと、コボルトナイトは相変わらず距離を取りながら大盾を構えている。一連の戦闘で完全に警戒されているようだ。コイツ……【眷属召喚】のインターバルが終わるまで仕掛けない気だな?
(うぅん、犬っぽいだけあって頭が良いんすかね? 今までのモンスターみたいに、膠着が続いたら痺れを切らして襲い掛かってくる気配が無いんですけど)
(……こうなることは、これまでの情報収集で想定済みだ。かなり用心深いモンスターみたいだしな。【チャージショット】みたいに予備動作があるスキルを使っても避けられそうだ)
すぐに倒せるとはいえ、コボルトを相手にしていたら必然と隙が生まれる。コボルトナイトは次こそ隙を見逃さないだろう。
でもこの状況を想定していたということは、対策も講じていたという事。俺は左スティックを前に倒し、木偶人形に接近をさせる。
(△連打ぁあああっ!!)
そのままガンブレードや蹴りによる、体重の乗った連続攻撃。魔力弾連射みたいに、盾を構えての強引に突破みたいな方法はさせず、動きを封じる。
戦ってみて分かったけど、取得戦闘力を二倍に出来ることもあって、ダンジョンを進んでいる内に木偶人形の戦闘力は、コボルトナイトの戦闘力を上回った。それでも守りを崩せないあたり、コボルトナイトの防御術はかなりのものだ。このままではまた【眷属召喚】を発動されるだろう。
……でもそれはあくまで単純な戦闘に限っての話だ。俺は右手で△ボタンを連打しながら、左手で□ボタンを押す。
「ギャンッ!?」
その瞬間、コボルトナイトの全身に電流のようなものが走り、全身が痙攣して身動きがまともに取れなくなった。
□ボタンはアイテムの使用コマンド。【アイテムボックス】内のアイテムを、【アイテム使用動作キャンセル】によってノーモーションで使ったのだ。
そして俺が今使ったアイテムは電撃罠。地面にセットしたそれを踏んだモンスターは電流によって全身が痺れ、しばらく動きが極端に鈍くなるという、罠アイテムの一つ。
ここ数日の検証で、【アイテム使用動作キャンセル】によって、攻撃中でもアイテムを使えることは判明している。木偶人形のすぐ近くっていう制限こそあるけど、本来セットするのに時間も掛かる電撃罠を、連撃の最中にモンスターの足の下に瞬時にセットできるってわけだ。
前までは有用性を感じにくかったスキルが神スキルと化した瞬間である。そして相手が動けないということは――――
「この隙にボコってボコってボコボコにしまくってやるっすよー!!」
痺れて痙攣するモンスターの動きなんてどうとでもできる。木偶人形は両腕を開くようにコボルトナイトの大盾と突撃槍を弾き、【オーラブレード】を発動。斬撃の威力が底上げされた状態で、コボルトナイトを滅多斬りにする。
連続斬り、回転斬り、交差斬り。そして【連舞】。フィニッシュの斬り下ろしは直前に【モードシフト】を発動し、より威力の高いバスターモードでの縦一文字斬りに変化させて、コボルトナイトを両断し、ボスモンスターは光の粒子となって消えていった。
(……勝った……?)
(勝った……ボスに勝ちましたよマスター! いぇーい!! ぃやったー!!)
勝利の雄たけびと共にピョンピョンと跳ねながら小躍りする木偶人形をホログラム画面越しに眺めながら、俺は深く息を吐いた。
冒険者活動を始めて一週間足らずでダンジョンを踏破……これは世間的にもかなり早い部類だ。しかも特に苦戦することなくボスを突破……あのコボルトナイトをだ。
結構呆気なく倒しちゃったけど、吉備ダンジョンに挑んだ数多くの冒険者たちは口々に、仲間を呼ぶ上に守りが固いコボルトナイトを強敵だったと言い、撤退に追い込まれる冒険者も少なくない。
最初は不安しか無かった冒険者活動に確かな手応えを感じている。人によっては「木偶人形の力によるもので、九々津雄介の力によるものではない」とか言うかもしれないけど、それがどうした?
アイテムマスターがアイテムを頼って何が悪いってんだ。
(マスター! 早く宝箱を開けちゃいましょうよー!)
(おっ。そうだな)
俺は木偶人形を操作し、コボルトナイトが落とした魔石を【アイテムボックス】に入れ、スキルカードを取り込む。ボス戦の前に幾つかスキルカードを取り込んだおかげで、戦闘力は112だったが、コボルトナイトのスキルカードを取り込んだことと【アイテム強化】の力により、戦闘力は152に跳ね上がっていた。
つまり、吉備ダンジョンを一周するごとに戦闘力は最低でも40上がるということだ。現状の戦闘力上げの周回場所としては悪くはない。
(それじゃあそろそろお待ちかねの、宝箱だ)
(待ってましたー!)
ボスモンスターの討伐に反応し、ボス部屋の中央に光の粒子が集まったかと思えば、そこに装飾が施された赤い宝箱が現れ、俺と木偶人形が胸を高鳴らせながら中身を物色する。
中級の回復ポーションに、攻撃力を一時的に上げるポーション、敏捷性を一時的に上げるポーションに……一度だけ攻撃魔法を使うことができる魔符か。どれもこれも使い捨てのアイテムばかりで、売ってもそれほど高価ってわけでもないな。
まぁ、初心者のダンジョンなんてこんなもんだろう。本題はスキルオーブ……一体どんな効果があるのか、俺は【鑑定眼】を使って調べてみる。
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品種:跳躍のスキルオーブ
跳躍後、もう一度だけ空中で跳躍することができるスキル、【二段ジャンプ】を覚えられる。
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…………ショボい! パッと思いつく使い道は幾つかあるけど、何か凄くショボい!
(もっと良いの欲しかったっすよぉ……)
(まぁ、仕方ねぇよ。全く使えないスキルじゃないだけ良しとしよう)
不満そうな木偶人形を宥め、スキルオーブを使うと、スキルオーブは光の粒子に分散し、木偶人形の体に取り込まれていった。
これでスキルを覚えたってことになるんだろうか? 一応スキルカードを確認してみた。
((……あれぇ……?))
俺と木偶人形はまったく同時に同じリアクションを取った。それもその筈、何故なら木偶人形が新たに習得したスキルは、【二段ジャンプ】の筈なのに―――
(新スキル、【三段ジャンプ】ってどういうこと……?)
…………いやいや、ちょっと待ってほしい。これは、もしや……。
(【アイテム強化】の効果は、スキルオーブを使う時にも適用されてる……?)
ご質問があったのでお答えします。
Q『この木偶、めちゃくちゃ人間味があるけど、触り心地(意味深)はどうなんだろう?硬質なのか肉感的なのか、その辺の説明ありましたっけ?これ、やろうと思えばノクタ案件可能なのかな?』
A『肉感的です。細いけどちゃんと柔らかいです。出ているところは特に。ノクターン投稿は、やろうと思えばできますよ』
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