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奴の鼻から男のロマンが

設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。


(今の奴の攻撃……かなりの速さだったな)


 ホログラム画面に映る映像は、カズサの動体視力と連動している。俺にとっては目に追えない速度で動く物体も、カズサの目で捉えられるならそれに合わせた速度で映し出されるのだ。

 そんなホログラム画面にも、残像を残すほどの速さでデーモンを貫いた何か……かすかだが、細長いドリルのようなものに見えた。


(明らかにアタシよりも戦闘力高そうですね……どうしたものか)


 とりあえず敵を知らなければ始まらない。俺は【天眼】を発動して奴を調べる。


 ―――――――――――――――――――――――――

 種族:ピノキオ・ローゲ

 戦闘力:400000

 悪人の魂を練成して生み出された魔王の木偶人形。嘘を吐けば吐くほど力を蓄える性質を持つ

 ―――――――――――――――――――――――――


 戦闘力40万……今のままではまず勝てない相手だが、それよりも気になることがある。


(魔王だと?)


 ここに来て、こんなにも早くに魔王に関連するモンスターが地球に現れた。

 もしやキーダンジョンに関する何かか? 現状では分からないが……。


(倒してみれば分かるんじゃないっすかね?)

(同感だな。行け、デーモンたち!)


 いずれにせよ、奴を倒さないといけないんだけど、問題がある。この強敵を前にして、モンスターの大群にも目を配らないといけないっていう事だ。

 モンスターパレードである以上、部隊編成の事も鑑みれば、ギルドからの助っ人が来るのもまだ時間が掛かるだろう。実力のある冒険者が単独で来てくれる可能性もあるけど、それを大前提にして戦うほど楽観的でもない。


「ぜぇいっ!」


 だからまずは、残ったデーモンたちに周りのモンスターを足止めさせつつ、俺とカズサでピノキオ・ローゲの足止めをしながら、頭の中で必死に策をめぐらせる。

 体重を乗せたカズサの一撃を難なくはじき返すパワーと、鋭い爪が生え揃った両手の指を振り回すこの速度……戦闘力差が3倍に近いだけあって、今の俺たちでは守りに精一杯……それもやがて均衡が崩れるだろう。


「カラカラカラカラカラカラカラカラ」

「ギャアアアアアッ!?」


 幸いなのは、優先して人間を狙いはするものの、モンスター同士の連携がまるで取れていないという事だろう。その証拠にピノキオ・ローゲはカラカラと不気味な音を鳴らしながら、【魔天之災渦】で引き寄せられる他のモンスターを薙ぎ払いながら戦っている。少なくとも、命令を下したり作戦を考えたりする頭はなさそうだ。

  

「まぁ、焼け石に水って感じが凄いんすけどね!」


 超速で間合いを詰めてきたピノキオ・ローゲがカズサに向かって両手を振り下ろす。間違いなくグラウンドを割り、一撃でカズサの体力ゲージを消し飛ばすだろう威力が秘められたその攻撃を、【ノックバックカウンター】で弾き飛ばす。

 勢いよく地面に倒れ込もうとしたピノキオ・ローゲだったけど、自在に動く関節を駆使して両手を足代わりにし、一回転しながら即座に体勢を立て直してきた。そこそこの巨体だけど、かなりの機動力だ。巨体のモンスターならではの鈍重さを感じさせない。 


(何とかして【悪魔憑き】を発動させるしかない……!)


 カズサの戦闘力におマルの戦闘力を加算すれば、1.5倍にも満たないほどの戦闘力差なんて覆せる自信がある。

 本当なら召喚したデーモンの内の一体でもと考えもしたんだけど、スキルの力で召喚された影響なのか、【悪魔憑き】を持ってないんだよなぁ。

 他のモンスターの足止めの為に使っている【魔天之災渦】も、この強敵を前にすれば邪魔になっているし、他の足止めの方法を考えないと。


「私は女です」「乙姫が渡したのはイースターエッグです」「5+4は2です」「空の色は緑色です」「トマトは油になります」


 攻めあぐね、徐々に守りも崩されていく中、不意にピノキオ・ローゲが何かを喋り始めた。まるで複数人の口から同時に発せられたかのような声に何を言ったのは聞き取れなかったけれど、それを奴が口にした途端、仮面に中心部に空いた穴……恐らく鼻の部分から捻じれた鉄の杭が互いを押し退けあうように五本生えてきて、それが一斉に発射された。


(喰らって――――)

「たまるかぁあああああああああああ!」


 その内の一本が、射線上に居たモンスターの体を抉り飛ばしながら真っすぐにカズサに飛んでくる。信じられない速度……対応できたのは殆ど奇跡だった。

 カズサが一気呵成の叫びをあげ、ぶつかり合う鉄の杭と紫電の三日月が激しい火花を上げる。そして全身全霊の力で弾き飛ばした鉄の杭は、校舎の屋上の角を消し飛ばしながら空へと消えていった。 


(不味いな……今の一撃で、またデーモンが一体消滅したぞ)


 恐らく【天眼】の説明にあった攻撃だ。あんなのを何度も使わせるわけにはいかない。


(考えろ。頭の中の歯車ぶっ壊れるまで回せ……! 今、俺たちに出来る戦い方は……)


【魔天之災渦】に代わる防衛能力があり、尚且つデーモン一体で無数に飛び出すモンスターたちの相手が出来る方法。そんな都合の良い戦法なんて――――


(いや、ある!)


 俺たちはこれまでの冒険で、多くの資源を手に入れてきた。地球では考えられない、魔法のような効力を持つ資源の数々を。そんな資源のいくつかが、なにかに使えるかもしれないと思って売らずに【アイテムボックス】の中に納まっている。

 大量の酸素を内包し、咥えるだけで酸素ボンベ代わりになる樹木の枝。そしてポーションや霊草などの効力を上げる調合用アイテム、ミックスアップポーション。この二つを【アイテム調合】で混ぜれば――――!


(おマル!)


 念話の呼びかけに応え、おマルが【悪魔憑き】をカズサに対して発動。カズサの戦闘力を大幅強化すると同時に、最後のデーモンを後方に下がらせる。

【悪魔憑き】の効果により、おマルのスキルを俺のコマンド操作によって発動することが出来る……これから使うのは、【嵐旋陣】と【獄炎】の合わせ技!


(炎の竜巻バリアだぁあああっ‼)


 ゲートを中心に渦巻く大竜巻が、カズサの口から迸る地獄の炎を巻き上げ、灼熱の嵐となってモンスターたちを巻き上げ、焼き尽くしていく。

 これなら大抵のモンスターは潰せるし、例え炎の竜巻を突破しても大ダメージは必至。外に待ち構えてるデーモンに処理させるって寸法だ。

 こうして炎の竜巻の中……台風の目というべき場所で俺たちはピノキオ・ローゲと対峙するわけだが、普通なら酸素不足になってカズサの体力ゲージが削れるんだが、そこを先ほど調合したアイテムでカバー。


(一定時間無呼吸で活動できるマジックアイテム、エアポーション……作り方覚えててよかった)


 ギルドの公式ページに調合方法が載っていたアイテムで、いつか水中探索しようとした時のために材料採っといて正解だったな。


「オーディンが持つ槍の名前はゲイボルグです」「スマートフォンは折り畳み式携帯電話です」「青と黄色を混ぜるとピンクになります」「昆布とわかめは同じ種類です」「犬の鳴き声はニャーです」


 再び紡がれる大嘘によって、ピノキオ・ローゲの鼻からドリルが生成されていく。【悪魔憑き】状態でも直撃は避けたい威力だが、今の戦闘力なら対処できる。

 俺は素早くボタンを押し、【ブースト】によって一気に間合いを詰めてピノキオ・ローゲの顎を下から蹴り上げて上空にドリルを撃たせると同時に、奴の仮面を弾き飛ばした。

 一体仮面の下はどんな顔をしてるんだろうか……極限状態の片隅に好奇心を忍ばせた心は、奴の素顔を見た途端に驚愕に染まる。


(そんな馬鹿な。この人は……!)


 カズサですら動揺を隠せない。何せ仮面の下の素顔は、夏休み前まで同じクラスで授業を受けていた、元クラスメイトだったのだから。


(……新藤?)


ご質問があったのでお答えします


Q『アンドロメダの鎖を普段は自分に巻いといて斬撃系の攻撃を受ける時にその攻撃を守るように動かせば破壊不能の盾として使えるのでは?』

A『破壊不可能の鎖帷子ですね、分かります。まぁこの時点では手に入れて日数もそこまで経っていないですし、アンドロメダの鎖を防御に転用するのは今後の課題になりますかね』


Q『アイテムボックスってこれらは入るのですか?

剣や槍などの武器(魔力や特殊な素材なし)

剣や槍などの武器(魔力有りや異世界の鉱石で作成)

剣や槍などの武器(マフラーのようにスキルの付いたもの)』

A『入りますね。許容量に上限はありますけど、種類は問いません。ただ液体などを入れる時は容器を用意しないと、いざ取り出そうとした時にドバーッて出ちゃうのが難点です。ちなみにアイテムボックス内に入れた物は防腐、防錆など状態を保持する機能もあったりします』


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