ホウレンソウは大事です
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください
ついに夏休みは終わってしまった……正直な話、学校に行く暇あんのかなって思いもしたけど、俺もカズサも有名になり過ぎた。
世界の滅亡を秘密にしなきゃいけない中、突然学校を休んだりすると変に勘繰られるし、休むなら休むで相応の事をしなきゃいけない。
そう聞いて学校が始まる絶望感が薄れたような、世界の危機に対して気が重くなるような気分と共に教室に入ると、すぐさまクラスメイトたちが俺とカズサに寄ってきた。
「久しぶりー、二人とも!」
「動画見たぞ! クラン立ち上げるんだって!?」
「雑誌でもすごい取り上げられてるし、まだ高校生でしょ? マジでヤバくない!? 応援してるからね、カズ!」
「あっはははは。どーもです」
予想通り、夏休みの活動を見聞きしたらしい。騒ぎを聞きつけた他のクラスの連中も集まってきて、人混みが大変なことになりつつある。ここまでくると、もう芸能人にでもなった気分で非常に嬉しいが、質問の声が混じりまくってて何聞かれてるのか分からねぇ。
「ちょっとよろしいですか? 少々、クランのことで話し合いたいのですが……」
「もう少しでホームルームが始まるし、質問は休み時間に改めてちゃんと答えるからさ」
そんな俺たちと生徒たちを引き離してくれたのは二村と八谷だ。
「んだよ、ちょっとくらいいいだろ?」
「すみません、どうしても今クランの仕事に関することで話しておきたいことがありまして……休み時間にはちゃんと期間を与えますので」
そう言われると無理強い出来ないのか、クラスメイト達は割とあっさり解放してくれ、俺たちは教室の隅に集まった。まだこっちに視線が集中してるし、耳をすませば俺たちのことを話題にしているのは聞こえてくるけど……うん、悪い気はしない。尊敬の視線が心地よすぎるぜ。
「いやぁ、助かりましたよお二人とも」
「クラスの皆はクランの内部事情の事を知らないからね。こういう適当な口実も、偶になら役に立つでしょ」
「順調にいけば、これからどんどん有名になりますからね。正体が知られれば人だかりができるのも日常茶飯事になるかもしれません」
「そりゃあいいな」
スキャンダルや迂闊な発言にさえ気を付ければ、常に人気者であり続けられるのが有名冒険者の特権だ。まだランカーに名を連ねていない今でさえこれなら、ランカー入りを果たしたらどうなっちまうんだろう……今から楽しみでならない。
……そのために、この先に待ち構えている戦いを何としても乗り越えなきゃな。
「それで、夏休み最後の冒険はどうでした? 定期報告で簡単な事を聞いていましたが……」
「あぁ、E大陸の海岸あたりで実戦経験をちょっとしてたくらいだ」
「あの事実上、上位ランカーしか入れないと言われる危険地帯だからね。正式な活動の事も見合わせて、やっぱり戦力になる人材を見つけた方が――――」
……人類を滅ぼすディザスターモンスター。その事を話すのは、クランのメンバー相手でも禁じられている。どうせ失敗すれば抵抗の余地なく滅ぼされるのだから、無用な混乱を避けるために黙っておくのは、俺もカズサも賛成だ。
重大な事を隠すのを少し後ろめたく感じながらも、無事に迎える未来を見据えたことを四人で語り合っていると、すぐに先生が教室に入ってきた。
「席に付けー。夏休み明けで気が滅入っているだろうが、二学期も気合入れていくぞー」
騒がしかった教室が徐々に静かになっていき、朝のホームルームを始めるために俺たちを含めたクラスメイト達が一斉に自分の席に戻っていく。
そんな中、最初から椅子に座って自分の身を守るように突っ伏している薫の姿が、やけに印象的だった。
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始業式もつつがなく終わり、明日から授業再開という事で今日は早く終わった学校。
間宮高校では早くも全部活動が再開していて、放課後になればグラウンドは運動部で賑わい、校舎からは吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
ただまぁ、俺たちがそんな喧騒を聞くことは稀だ。帰宅部な俺たちは、放課後になれば用もない学校に留まらずに遊ぶか冒険するかのどちらか……何だけど、今日は別。
「……という訳で、国連から冒険者ギルドを通じて通達がありまして、俺たちはしばらくの間、学校を頻繁に休むことになりますんで、どうかよろしくお願いします」
「なるほど、分かった。そういう事情なら、単位の方は任せておいてくれ。……それにしても、冒険者というのも大変だな。異世界での大規模調査なんて」
「まぁ、こういう要請にこたえるのも冒険者の義務ですし」
「学校に出れる時は出ますけど、今年一杯まで登校頻度下がるかもですね」
国連からの要請が書かれた用紙……命令書を見た校長先生を始めとした、担任や学年主任の先生に、俺たちは適当にはぐらかした返事を返す。
魔王装備を手にした俺たちは、迫りくる落日に対する準備を整えなきゃならないんだが……実を言うと、落日の攻略に必要なのは戦闘力ではないらしい。勿論、ディザスターモンスター対策として戦闘力上げは重要だけど、どちらかというと、〝落日が封印されたダンジョンの攻略〟がメインとなる。
改めて親父と話したんだけど、宇宙滅亡の力を秘めた落日も、ディザスターモンスターという形で物理的に倒せる存在として落とし込まれた。その為に落日を限界まで弱体化させる役割を持つダンジョンが存在しており、その最奥に発生するように調整された落日を倒すこと……それが俺たちの最終目的となる。
ただ落日の発生から時間が経過すればダンジョンは破壊され、落日が外に出てしまう……そうなれば人類滅亡だ。俺たちはその前に落日が出現するであろうダンジョン……通称、ラストダンジョンを攻略しないといけないという訳だ。
ただ、このダンジョンに入るにはもう一つ、ラストダンジョンの扉の鍵の役割を持つ重要なダンジョンを攻略しないといけない。
正直、どうしてこんなに面倒な仕様になっているのか……カグヤさん曰く、異世界を創造した魔術師は、あらゆる事象を引き起こす理屈を試練という形に置き換えることで、本来の道筋を無視することが出来たんだとか。
ラストダンジョンにしてもそうだ。弱体化させられるならダンジョンの奥にいかなくてもと思いもしたけど、そういう誓約付きで魔術師は全知全能の力を振るってきたんだとか……まぁ、もう当の本人は百年も前に倒されたから、確認のしようもないし、考えるだけ無駄なんだけどな。
まぁ、そんな事情を話すわけにもいかないから、学校側には多数のギガントモンスターが同時発生したということにして、調査のための人員確保のために俺たちが駆り出されたということにしたってわけだ。
ギガントモンスターもピンキリだけど、E大陸の外にも強力なのが突然現れることもあるし、もし万が一ゲートを通って地球に現れた時の損害は計り知れない。今のところゲートに近づく動きは見られないけれど、被害を出さないために調査と討伐を完了させるまで俺たちは学校を休みがちになる……ということになっている。
「それで、ラストダンジョンの鍵になるっていうダンジョンは何時現れるんですかね?」
「さぁな……落日が生まれるまでには現れるらしいけど」
職員室から出た俺とカズサは、周りに誰もいないことを確認してから小声で会話する。
実を言うと、ラストダンジョンも、その鍵となるダンジョンも、まだ異世界の何処にも存在していない。鍵となるダンジョンを攻略することで、初めてラストダンジョンが異世界に現れるらしいんだけど、鍵となるダンジョンは一定の時期が来なければ出現しないんだとか。
この辺りの事情はカグヤさんですら分かっていないところが多いんだが。確かなことが一つだけ。
「鍵となるダンジョン……通称、キーダンジョンは魔王が管理していて、出現はその魔王の匙加減らしいな」
だからこれといった日時は定まっていない。俺たちに出来るのは、何時キーダンジョンが現れてもいいように準備を整えておくことだ。
とは言ってもだ……キーダンジョンとラストダンジョンの攻略については、戦闘力はさして重要じゃないらしい。細かい仕様は出現するたびに代わっているから確かなことは言えないが……カグヤさんの時は、出現するモンスター全てが、戦う冒険者と同じ戦闘力になったんだとか。
冒険者に求められるのは、ダンジョンが求める踏破条件を満たせるかどうか……これは技術力を上げると同時に、スキルとギミック盛り沢山なダンジョンの攻略を経験しまくるしかない。
「それじゃあ、早速明日も休めることになったし――――」
その時、ベルトに仕込まれた【窮鼠の直感】が警報を鳴らした。
ブワッと全身の産毛が逆立つような感覚と共に、俺が直感的に視線を向けたのは、運動部が活動しているグラウンドにある体育倉庫。一つしかない分、広くて扉の大きい奴だ
【窮鼠の直感】は本来、俺の身に迫る危険を直感的に知らせるスキル。例え爆発が起きるとしても影響が出そうにない、離れた校舎内に居る俺にスキルが働くことがない。にも拘らず、スキルが働いた……その答えに行き着くと同時に。
『『『ガァアアアアアアアアアアアアアッ‼‼』』』
鉄の扉を吹き飛ばし、大量のモンスターがグラウンドに雪崩れ込んできた。
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