夏休み終盤はテンションが下がり始める頃合い
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
ボロ負けした。そりゃあもう、ものの見事に。
【魔王覚醒】状態からの【滅陽】は、贔屓目無しに言って俺たちの手に余るほどの威力を発揮したんだけど……真っ向から打ち破られるとは。まさに最強の冒険者の実力と貫録をまざまざと見せつけられたって感じだ。
しかも初めて使って分かったんだけど、コレやったらエネルギーゲージが一瞬で空になったんだよな。【魔王覚醒】はスキルの発動に応じてエネルギーゲージの減りがより一層早くなるけど、【滅陽】は【天魔轟砲】の比じゃない消耗だ。
まだまだ分かっていないこともあるけれど、一回使ってみた印象から言ってしまえば単なる自爆技……仕留めきれなければ、強敵の前に俺が無防備な姿を晒すことになってしまう。これから戦う事になるであろうE大陸のモンスターとのことを考えれば、このデメリットは致命的だ。ここぞという時の、最終手段って感じ。
……エネルギーゲージが切れて全く身動きが取れない状態のカズサを回復させるなり、背負って逃げるなりをしなきゃだから、最終手段でも使うのに抵抗があるんだけど……何とかこのデメリットを打ち消せる戦法を考えなきゃだな。
「で……どうだ? 体調の方は」
「寝てご飯食べたらもうバッチリっすよ。お二人には改めてお礼言わなきゃっすね……おかわりおかわりっと」」
カズサはエネルギーゲージが空になると、動くどころかまともに喋ることも、物を飲み込むことすら出来なくなる。
一応、補給無しでも丸一日寝ればギリギリ飯を食えるだけの分は回復するから、昨日一日はまたしてもアイゼンたちの城でお世話になることになってしまった。
朝起きて用意してもらった朝食を一口食べた辺りから一気に回復していて、今は元気にガツガツ食ってるけど、昨日はピクリとも動かなかったのだ。
「こうなるのもゼル・シルヴァリオ戦以来だからな……エネルギーゲージがないと【木偶同調】も使えないみたいだし、このあたり何とかならないもんか……」
「あぁなっちゃうと飲み込む力が無くなるもんでして……そうだ。いっそのこと、アタシの喉奥に手ぇ突っ込んで食道に直接ご飯を流し込むというのはどうっすか?」
「それ絶対咽るやつだから」
流石にカズサ相手にそんなことするのは抵抗あるしな。
「むぅ……確かに折角のご飯を味わえないって言うのも味気ないっすからね。こんなおいしいのに、噴き出すのも申し訳ないですし……ところでこの魚のタレ焼き、メッチャ美味いっすね。一昨日の饅頭といい、異世界食材の良さを殺さない調理がされてて……これもアイゼンさんが?」
「いや、それはカグヤさんが作ったみたいだ。アイゼンさんとよく異世界食材を使った料理の試作をしてるとか何とか……」
「そうなんすか? 意外なような、そうでもないような……」
「あぁ、意外なような、そうでもないような感じだよな」
言っちゃなんだけど、廃退的で煽情的な雰囲気のある魔王カグヤさんが、厨房でエプロン着けてる姿って言うのは中々想像し難い。でも城で生活をする彼女を見ると、不思議と料理くらいは出来そうな印象もあるんだよな。
「さて……朝飯食べたらそろそろお暇しないとな」
「むぐ……ごくんっ。もう帰るんすか?」
「あぁ。流石に何日もお世話になるのは忍びないし、何よりもうじき新学期が始まるし」
「……おおっ! 言われてみれば」
用意してもらった朝食をカズサと共に寝室でご馳走になり、暫く談笑と洒落込んでいた俺とカズサだけど、数日後にはもう新学期が始まるから地球の方に戻らないといけない。何時までも異世界を探索してたらキリがないし、区切り良く帰らないと。
なにより、親父の方からも改めて話があるはずだ。
「夏休み入ってから、学校の事すっかり忘れてたっす。もう終わりなんすねぇ……」
「なんだかんだで、凄い濃ゆい夏休みだったからな」
クラン結成とかディザスターモンスターとか、異世界絡みの事が色々と起き過ぎた。間違いなく、俺の人生史上最も濃密な夏だったのには違いない。
「それにしても……夏休みが、終わっちまうのかぁ。あぁ~……嫌だなぁ」
「どうしたんすか? ナメクジみたいに項垂れちゃって」
「だってさぁ、一ヵ月以上も連休が続いた後で行きたくもない学校に来いなんて言われたら、学生なら誰でもこうなるだろ。もうまたしばらく規則正しい生活が俺たちを待っているんだと思うと気が滅入る」
「そんなもんすかねぇ? アタシはクラスの子と久しぶりに会えるのが楽しみですけど」
そうだった。コイツ、基本的に学校好きな陽キャだった。
「せめてもの救いは、宿題を早々に終わらせてるから焦る心配も無いってことくらいか。こうなったら残りの休みはダラダラとゲームしながら過ごすしかねぇな」
「そっすね。夏休みはずっと大変でしたし……あっ! それならアタシ、あれやってみたいっす! モンスターバスター! 確か、新作出たんすよね? 一緒に協力プレイと洒落込みましょう!」
「いいねぇ。俺としたことが冒険者業が忙しくて買い逃しちゃったけど、八谷たちも既に買ってるだろうし、残りの夏休みはみっちりやり込むか!」
「第二回、ゲーム大会っすね! 腕が鳴ります!」
もうじき世界が滅ぶ……そんな話を聞いた後でも、俺たちの肝は座っていた。
絶望を前にしても、希望が遺されていると俺たちは知っている。こうしてゲームに熱中できる余裕があるほどに。だから後は、こんな何時もの日々を守るだけだ。
冒険者になって、俺も少しは成長できたらしい……そんなことを自覚しながら、俺たちは荷物を纏めて後片付けをし、城門の前でアイゼンたちに軽く頭を下げた。
「それじゃあ、お世話になりました」
「ご飯すっごい美味しかったっす! 今度はアタシらがご馳走するんで、また会いましょう!」
「……はいはい。その時を楽しみにしてるわ」
カグヤさんの手を握ってブンブンと上下に振るカズサと、そんな彼女からそっぽを向きながら適当に答えるカグヤさん。不愛想に見える態度だが、その表情はどこか柔らかいものがあった。
「……まぁ、すぐ会う事になるんだけどな」
そんなどこか微笑ましい二人を尻目に、俺はアイゼンに別れの挨拶を済ませる。
「それじゃあ、改めてお世話になりました」
「かまわん。俺にとっても、意義のあることだったからな」
「……今後の参考に、ちょっと聞きたいんですけど」
「なんだ?」
「人間じゃない女性だけど、一緒になって良かったですか?」
そんな俺の言葉をどう解釈したのか、まったく表情を変えない彼からは察することは出来ない。だが次に紡がれる言葉は、強い意思を確かに秘めた穏やかな声だった。
「……冒険者を続けるにあたって、多少の名声を得た。それ故に良く知りもしない相手から、見ず知らずの女との縁談を勧められたことも多い」
いつ死ぬかも分からない危険な職業ということで安定性に欠けると言われる半面、単純な収益や名声もあってか、冒険者というのは、婚活界隈では優良物件という見方もある。アイゼンのような独身のランカーが政略結婚染みた利益目的の結婚を迫られることも、よくある話らしい。
若くしてトップランカーの中でも武勇に優れたアイゼンなら、より取り見取りだったに違いない。それでもこんなところで魔王と呼ばれるモンスターと共に生き続けるのは、単にカグヤさんの容姿が人間を超越しているからじゃないってことくらい、俺にだって察しくらいつく。
今なお地球で時折人的被害を出す人外と一緒になるというのは、生半可な覚悟じゃ通れないイバラの道なのだ。
「他の誰に何と言われようが、世界中の女と天秤にかけようが、俺はアイツがいい。……それが俺の答えの全てだが、お前はどうだ?」
「そうですね……俺も同感です」
モンスターじゃないだけ、きっと俺が進もうとしている道はアイゼンよりも平坦だろうが……何分未知数な事が多い。
でもどんな壁が立ちはだかったとしても、全然止まる気とかしないんだから、我ながらもうどうしようもない。俺は少し離れた場所で、こちらに背中を向けながら話すカズサたちを見ながら笑うのだった。
『えっと……ごちそうさまです?』
『言葉とか要らないから。聞き流すくらいで丁度いいから。世界中の女より私が良いとか……ゼンの奴、あんな台詞を堂々と言わないでよ……!』
ご質問があったのでお答えします
Q『ユースケとカズサは戦闘力に10倍ぐらい差があるのにどうしてユースケはカズサを操って戦闘できるのでしょうか? 悟◯達の戦闘を見るヤ◯チャみたいになっててもおかしくない気がします。』
A『くどくなると思って詳しい説明は省いていたのですが、カズサの内部空間にあるホログラム画面を前にしてコントローラーを握った時、カズサの動体視力と神経伝達速度などが雄介と同調し、互いの戦闘力差が起こす誤差を消し去って操作に適応させることが出来る……とでも言いましょうか。ほかにも、ローアングルから戦局を眺められるのでカズサとて気の動き、両方を捕えやすくなっていますし、雄介が動かすのは指だけなので、腕や足を振り回すカズサたちの動きにも十分間に合うとか、そういう理屈を色々考えてました』
Q『ずっと気になってた細かいアラ探し的なツッコミですが・・・
第1次世界対戦の頃の国連=国際連盟
第2次世界対戦以降の現在=国際連合
作中の国連=国際連盟?
国際機関の主たる組織名が変わる場合は、前任組織が解体されてると思いますが、その辺はいかがでしょうか?』
A『そこはフィクションですし、現実世界とは違う点くらいあるという事で』
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