将来は、器の大きい大人になってみたい
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
ますます魔王っぽい外見になったカズサ。【悪魔憑き】による強化内容は、至ってシンプル……憑依させた悪魔の戦闘力をそのまま冒険者に上乗せさせ、スキルを俺たちの自由意思で発動することが出来る。
数の利を失う事にはなるが、高度な連携を必要としないという点ではこの状態の方が現状ではやりやすい。広範囲に及ぶ攻撃スキルを多用するおマルとの連携は、流石に練習の時間が足りなかったしな。
(ただまぁ、これでも焼け石に水感が凄いんだけど)
カズサとおマルの戦闘力を足したところで、戦闘力は30万を超えない。悔しいことに、これが今の俺たちの限界だ。
だからこそ、最強の冒険者相手に今の俺たちがどれだけ通用するのか、それを試す価値がある。戦闘力の上昇はもちろんの事、これからの戦いに何が必要なのかを見極めるために。
(いくぞ!)
(了解っす!)
【ブースト】のインターバルは終わった。再び最高速で真っ向から仕掛けるが、一度見た攻撃が通じる相手とは思っていない。【天魔轟砲】すら巻き取るスキルがある以上、遠距離攻撃で削れる相手でもない。
短い攻防だけど、アイゼンを攻略するには彼の得意分野であろう近接戦を仕掛けるしかない……紫電の三日月のリーチは長刀とほぼ同じ。手数差は二倍。だが戦闘力は圧倒的にこちらが負けている。
(僅かな隙を作り出す……!)
やや大仰に大上段に構えた長刀が振り下ろされるが、これでも俺たちの目にはすさまじいスピードに見える。
しかしこれまでの攻防や今回の趣旨を照らし合わせれば、アイゼンは俺たちが対処できる速度から徐々に引き上げていく腹積もりなんじゃないだろうかと当たりを付けていた。
その予想は大当たり。確かに振り下ろしは速いことは速いが、予備動作を見せつけてくれていたし、どう対処しようとしているのかを見ようとしているのは明らか。
これが実戦なら……なんて考えはこの際考えない。折角死ぬ心配のない試合を設けてくれたんなら、全力で甘えさせてもらう。
(【ミラージュステップ】!)
リーチは同じなら、攻撃スピードが上のアイゼンの攻撃の方が先に通るが、この近接戦は囮。
縦一文字に振り下ろされた長刀を透過に避けって回避すると同時にアイゼンの体をすり抜け、背後からの攻撃を仕掛け――――
「がはっ!?」
ようとして振り返りながら斬りかかろうとした瞬間、カズサがとんでもない勢いで吹き飛ばされた。間違いなくアイゼンの攻撃だが、当の本人はカズサの方を振り返ってもいない……!
これってもしかして、中国拳法の鉄山靠……背面体当たりって奴なんじゃね? 背後も死角なしとか、この人剣だけの冒険者じゃないのか!?
(ふぉおおおっ!? 体力が、体力ゲージがあああ!)
大して痛く無さそうな攻撃なのに、カズサの体力ゲージが8割消し飛ばされた。こんな威力の攻撃、本来なら鉄の壁でも砕ける威力なんだけど……俺が知らないだけで、あの技って見た目以上の威力があるのか、あるいは本人の戦闘力あかせなのか、それとも両方なのか……!
(それでも追撃はないんすよね)
少なからず隙を見せた俺たちに追い打ちをかける様子が無い。アイゼンはただその場に立ち、向かってくるカズサを押し返しているだけだ。
(どうやら俺たち程度、その場から動かずにあしらえるらしい)
それはそれでムカつくんで、何としてもその場から動かしてやろうと思ったんだけど……結果は上手くいかなかった。
各種攻撃魔法スキルを試してみても、【天魔轟砲】や【獄炎】と同じように対処された。地面から噴出するという、奇襲性のある【炎柱】でさえもだ。
近接攻撃を弾く【ノックバックカウンター】で隙を作り出そうとしても見たんだけど、まるで事前に察したかのようにアイゼンは鍔迫り合いの直前に長刀の切っ先を翻し、逆にこちらの近接攻撃を弾いて隙を作らされるという、繊細な離れ業まで見せてきた。
特殊な引力や斥力を発生させる【魔天之災渦】で引き寄せたり、弾き飛ばそうとしてもみたんだけど、まぁこれも平然と耐えられたな。当の本人曰く、腰を落として踏ん張ればイケるとか何とか……。
(これでどうだ!?)
相手の攻撃をわざと食らう事で【空蝉】を発動。【ミラージュステップ】と違い、予備動作抜きでアイゼンの死角となっている場所へと転移して攻撃しようとしたが、アイゼンは即座に身を捩じり一回転。
攻撃しようとしたところから必死に防御態勢に移行させたが、ガードの上からでも伝わる凄まじい衝撃はカズサの体力ゲージを削り、そのまま彼女を遠くまで吹き飛ばした。
(いてて……! い、今のも通じないとかマジっすか)
(大丈夫か!?)
(なんとか……。改めて思うけど、とんでもないっすね……どんなスキル持ってるんでしょう?)
次々とこちらの手の内が潰されていく。【魔王覚醒】と【悪魔憑き】、各種バフ系アイテムでスキルの威力も基礎能力も限界まで引き上げているにも拘らず。
しかもこうやって攻防を続けていく内に気付いたんだけど、アイゼンはカズサと同じ速度までしか引き出していない。それはつまり、たとえ同じ戦闘力を持っていたとしても、結果は変わらないという証明だ。
ただ戦闘力が高いだけじゃない……至るまでに潜り抜けた歴戦の中で鍛え抜いた、圧倒的な技量がアイゼンという冒険者を支えている。
(これじゃあまるで、小さいディザスターモンスターだな)
親父たちがなぜアイゼンに俺たちの実力がどれほどなのかを確かめる役目を与えたのか、よく分かった。相手は山脈のように揺るがない巨体のモンスター……同じく不動のまま相手を押し返せるアイゼンは、仮想ディザスターモンスターと言える存在なのだ。
(スキルは通じず、技量でも上をいかれた)
戦い方を工夫しようにも、ここは遮蔽物も何も無い、空が写る平らな水面が広がるだけの空間。俺たちはその水面の上に立って戦っている訳だが、どれだけ攻撃しようと穴の一つも空きやしないし、【絶氷】でも凍りつかないときた。
、
(となると、俺たちに出来ることといえば残り一つ)
最強の火力スキル、【滅陽】。広範囲、超威力を兼ね備えたこのスキルは、【魔王覚醒】によって更なる強化が施されている……はず。
(……使って大丈夫なのか?)
アイゼンに届きそうなスキルと言えばこれしかないんだけど……実を言えば、俺たちは【魔王覚醒】からの【滅陽】の威力を検証したことが一度もない。
本当ならもっと早くに試すつもりだったんだが、威力で劣る【天魔轟砲】を【魔王覚醒】で強化すれば、ディザスターモンスターですら追い込める威力を発揮したのだ。強化されると想像できる威力、範囲の事を考えれば、検証する場所にだって頭を悩ませる。
ましてや、今は周囲に二人も人がいる状態だ。二人ならどうにかできそうという感じもするけど、もしそうでなかったら……。
「恐れるな」
そんな俺たちの迷いを見抜いたのか、アイゼンは鷹のように鋭い眼光でカズサを射抜く。
「俺とて何人もの魔王装備を持つ冒険者を見てきた身だ。お前たちが何を躊躇っているのか、凡その検討はつくが……落日の先へ行くというのならば恐れるな。前を見据え、望んだ未来を手にするがいい」
――――魔王装備はその為に生み出された、神にも届く人の願いの結晶なのだからな。
それは激励であり、俺たちの全てを受け止める力強い包容力を秘めた言葉でもあった。
ここは周囲の被害を気にすることのない異空間。そして相対するのは、ディザスターモンスターにも匹敵する冒険者。今から放つ一撃を試すには、これ以上は無いってくらいのシチュエーションだ。
(……いきましょう、ユースケ!)
(……おうっ!)
アイゼンとカグヤさん……この二人なら大丈夫だと信じよう。
この先必ず【滅陽】の力が必要となる時が来る。その本領を理解し、カズサと共に過ごす未来を勝ち取るために、俺は今この場でスキルを発動させた。
ご質問があったのでお答えします
Q『ここまで見ても未だに疑問なのですが、やはり一般人がカードを取得しない人が少なからずいる理由がいまいち理解できません。
デフォで覚えられるというアイテムボックスのためだけでも十分に30万払う価値もはあると個人的には思うのですが、更に普通でも常人の5倍、良ければ10倍は頑丈になれる上に病気にも強くなれるとか。(レアケースで悪くて等倍の頑丈さですが病への強さも等倍のままなのだろうか?)
少し怖い誓約書も書かされるとはいえ、これで取得しない理由が分からない。
登録した人は必ず異世界に行かないといけない規則でもあるというなら話はまた別なのですが…。』
A『それでも30万は決して安い買い物じゃないですからね。確かにカードの恩恵を目的に取得する一般人もいますが、最早必需品と言っても良い車などとは違い、地球で過ごす分には便利なだけでなくても困らないものですし、やはり需要という面では少なからず危険な異世界に飛び込む覚悟が無い人以外の層には受けないんです。あと、スキルカードを持っている人間は、ギルドを通じて国で情報が管理されています。カードを宿した者は法的には冒険者扱いされるので、モンスターパレードが起こった際に前線に駆り出される可能性もありますね』
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