良かれと思ってやったらどえらいことになったことってあるよね
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
ディザスターモンスターや魔王装備の事情に詳しい人型のモンスターとなれば、それは信長と同じ魔王種と呼ばれるモンスターしかいない……そう踏んでいたんだけど――――
「まさか、テイムシールが魔王種まで使役できるなんて、思いませんでした」
「……まぁ、私はもうモンスターだしね。アイテムの力に抵抗は出来るけど……今はそんなことはどうでも良い。話の本題に戻すわよ」
その辺りの事情はあんまり話したくないのか、少し嫌そうな顔をして片手を揺らすヒノハナノカグヤヒメ……カグヤって名前は略称か?
「まず初めに……世界というのは複数存在する、という事を知っておきなさいな」
「世界が複数?」
「まぁ、今俺たちが居るこの異世界と地球……確かに複数世界があると言えるけど、その口振りだと、他にも異世界が存在するってことですか?」
二百年以上前までは、異世界の存在なんて単なる創作かオカルトに過ぎなかったというが、魔王の出現と共に実在が証明された。であれば、今俺たちが居る異世界とは別の、地球から見た異世界が他にあると言われても不思議はない。
「次元を隔てられて、異世界と言うのは無数に存在してきた。人の技術や自然の力だけでは次元の壁を超えることは出来ないから、本来この異世界同士が交わることはないのだけれど……大昔、その大前提を覆す出来事が起きたの。それが何なのか、あんたたちはその身で何度も体感しているわよね?」
「二百年前、地球に現れた魔王によって異世界と地球を隔てる壁になんらかの穴が開いた……そういうことですか?」
話の流れから逸れは間違いないだろう……そんな俺たちの答えを認めるように、カグヤさんは頷いた。
「文明も自然も、そこに住まう生物たちも何もかも違う異世界同士だけど、たった一つだけの共通点として、いずれも人が栄えているという特徴があるの」
「自然や生物も全く違う世界ばかりなのにですか?」
進化の歴史が一つでも狂えば、人間という種は誕生しなかったかもしれない。今俺たち人間が地球で栄えているのは、本当に奇跡みたいな偶然の巡り合わせの結果だ。それなのに、他の異世界も同様に人間が栄えているなんてあるのか?
「不思議でしょ? とは言っても、まったく同じ生態ではないけどね。耳が尖っていたり、身長が総じて低かったり、私たち獣人みたいに動物の耳と尻尾が生えていたり……ちょっとした違いはあるけどけど、外見は地球に住む人類にかなり近いわ」
より詳しく聞くと、世界によっては地球とほぼ同じ文明を築いているのも複数存在するらしいが、超能力や魔法といった、かつての地球には無かった異能が発達している世界もあるとか。異世界が確認されるまで、魔法や超能力がオカルトの一言で片付けられていた俺たちが住む世界とはえらい違いだ。
「そんな無数に存在する異世界の内の一つに、魔法技術が発達した世界があってね。そこに一人の魔術師が誕生したのが、全ての始まりだった」
「その魔術師が、世界を隔てる壁に穴を開けた原因ってことですか?」
「話が早くて助かるわ……ずばりそういう事。元々、正義感に溢れていた魔術師は世の為、人の為に研究を続けていく中で異世界の存在を観測し、やがて一つの真理に辿り着いた」
――――世界線を問わず、全ての人類は必ず滅びる。
「地球でも、自然災害によって恐竜のような多くの支配種が滅んだそうじゃない? あぁいう事が、全ての異世界に生きる人類の身にも降りかかるって考えたそうよ」
それは地球でもあり得るんじゃないかと言われている事柄だ。例えば、北極と南極の氷が解けて大陸が沈んだりとか、恐竜を滅ぼした巨大隕石と同じくらいのが降ってくるとか、再び世界大戦が勃発して人口を著しく減らして存続できなくなるとか、人間の力ではどうしようも出来ない大きな力に呑み込まれて滅びてしまうんじゃないかって、先の世を見過ぎたネガティブな連中がネットや本を通じて世間に思想を垂れ流すのはままある。
「魔術師が何を見たのかまでは私も分からないけれど、少なくとも彼はやがて訪れる、人類全てを滅ぼす災いを跳ね除け、自分が生まれ育った世界に生きる人々を永続的に存続させようとした……その方法が、人類を滅ぼす要因全てをモンスターという形で具現化、受肉させ、それらと戦うための舞台を築き上げること。ここまで言えば、もう気付いたでしょう?」
それを聞いて、俺とカズサは目を瞠った。もしそれが本当なのだとしたら……!
「ここは件の魔術師が作り出した舞台。そしてディザスターモンスターと言うのは、人類を滅ぼす要因が具現化した天災の化身……アンタたち冒険者が歩き回るこの異世界は、恒久的な人類存続権を踏破報酬とした、地球と接続された箱庭型ダンジョンなのよ」
これまで違う世界の、違う自然が広がっているものと思っていた……なのにこの世界そのものが人工物だったなんて。
「という事は、人間に対して強い敵意を持つモンスターが生まれ続けるのは……!」
「まぁ無関係ではないでしょうね。何せ人類を滅ぼす要因全てをモンスターという戦いで勝てる存在に落とし込めたもの。状況は水物……接続された世界の情報を吸収し、どんな小さな要因も逃さずにモンスターとして具現化しているってわけ」
一体どんな方法を用いればそんなことができるのか気になるところだが、そこはさして問題ではない。問題は、次元を隔てて存在する世界の魔法が、どうして俺たちが住む地球が存在する世界に影響を与えたかだ。
「例の魔術師が生まれた世界ってのは、やっぱり……」
「滅んだらしいわね。人類総体を滅ぼす可能性がある天災なんてものは、モンスターという器に押し込められてても強大すぎた……想定くらいはしてたんでしょうけど、想像以上だったみたい。単一の生物という形で弱体化したかと思えば、天災を無制限に撒き散らす化け物が生まれることになったんだもの……自業自得とはいえ、世界の滅びを加速させた魔術師の絶望はどれほどのものだったのか」
やり方はどうであれ、元々は世界を救うためにしたはずの行いが世界を滅ぼすことになるなんて、何とも皮肉な話だ。
「で、最悪なのはここから……管理者が居なくなった異世界は消滅するどころか暴走。元々、元々次元の壁に穴を開ける性質を持っていたことで、数多くの異世界と接続……絶対的な滅びから人類を救うための試練を強制的に課し、滅びればまた別の世界に接続を繰り返す、超傍迷惑な独立した空間となってしまったってわけ。これが地球に異世界へのゲートが出現した大まかな理由……詳しい理論の説明までは求めないでよ? あれは色々おかしい魔術師の頭の中にしかないんだから」
「それは……本当に、傍迷惑な話っすね。まぁ皮肉にもアタシたちはこの世界から色んな恩恵を受けてますけど……」
「ホントね。先走り過ぎたバカのせいで、どれだけ人が早死にしたか……」
忌々しそうに吐き捨てるカグヤさん。
「……ディザスターモンスターの強さは想定以上だった。存在するだけで天災に等しい力を撒き散らす超巨大モンスター……それでも、人類は戦えてはいたのよ。足止めしたり、攻撃を妨げたりすることは出来た……ただ一つ、普通の攻撃では傷一つ付けることができないなんて言う厄介な性質を持っていたもんだから、魔術師は相当焦ったでしょうね」
そんな稼働テストせずに売りに出された機械類みたいなことを……いや、世界や人類が滅びても構わないなんて言う気は毛頭ないけれど、もっとこう入念に準備とか点検とかしてほしかったなぁ……!
「それでも魔術師は諦めなかった。自分がしてしまったことの責任を果たすために自らが生み出した暴走世界に身を潜め、ディザスターモンスターを倒せる方法を模索し続けた……自分が生み出したモノが、幾つもの異世界を滅ぼすのを眺めながら、何年も、何十年も、何百年も、何千何万年もの間ね。……そうやってディザスターモンスターに対抗するためにスキルカードが生まれ、オーブが生まれ、強化槌が生まれ、修行場としてダンジョンが作り出され、地盤を固めるために無制限に資源が生み出される大地を作り上げ……そうして最後に魔術師が生み出したのが、私たち魔王っていうわけ」
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