ボスキャラを仲間にする的なアレ
先日、オーバーオールをオーバーホールという誤字を頂きましたので修正しておきます。ご指摘ありがとうございました。
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
あの後、町に戻ってきた俺たちは城へと案内された。
外観に反して人が居らず、ガランとした大きな城……ここにアイゼンとカグヤさんの二人が住んでいるらしい。
「掃除とか大変そうっすよね。二人だけでどうしてるんでしょう?」
「流石に普段使わないところとかは掃除しないんじゃないか? それか町の方から手伝いの人が来るとか」
客間と思しき場所に通され、茶菓子を用意すると台所に向かった二人を待ちながら適当に談笑をする俺とカズサ。
正直、こういう城に住むって言うのにはちょっと憧れがある。実際に住もうと思ったら維持費とか税金とかを稼ぐので大変だけど、異世界に建築するならワンチャンあるか……?
「待たせたわね」
そうしていること暫く。急須と湯飲み、それから饅頭と思われる丸っこい茶菓子が載った盆を持った二人が客間に戻ってきた。ちなみに、アイゼンは農家スタイルからTシャツとジーパンに着替えている。
「食うといい」
急須から注がれた湯気の立つお茶に満たされた湯飲みと茶菓子が俺とカズサの前に置かれる。備え付けられた竹串のようなもので割ってみると、小麦を練って作ったと思われる皮の中から、黄色がかった餡が出てきた。
「良い匂い……中身は黄身餡っすか?」
「……A大陸で見つけた鳥の卵と、この近辺で栽培した異世界の豆で作ってみた」
ピクリとも動かない鉄面皮なのに、どこか得意げな様子のアイゼン。まさかの手作りらしい。農業してることといい、アイゼンの意外な一面が次々と明らかに……って、豆を栽培!?
「異世界食材の栽培!? え!? 成功してるんですか!?」
異界生物の養殖に植物系の異世界資源の栽培は、地球ではどれだけ試しても出来なかったはずだ。今思えば畑を耕していたし、まさかとは思ったけど、それがこんなところで成功していたなんて……!
「アンタらの世界でも出来ないみたいだけど、ここも一応異世界だからね。出来てもおかしくはないでしょ」
「いや、確かにそうなんですけど……よくギルドが公表しませんね。これ普通に大発見でしょ」
異世界食材の栽培は、食品関連の企業ならどこも追い求めている技術だ。それを成立させたとなれば、大ニュースになっていてもおかしくないのに。
「ギルドは知っているが……それが世に報じられるのは当分先だそうだ。この町に暮らす者たちが食う分で殆ど消える……あまりの収穫量では、地球に卸すには少なすぎるからな」
「あぁ……なるほど」
詳しい事情を掘り返す気はないから憶測だけど、現状ではろくに卸せもしない物をわざわざ公表しても意味はない。例えるなら今は企業秘密の研究中で、他所に卸せるだけの収穫を得られるようになってから公表する腹積もりって訳か。
あと一番の問題として、こんな超危険なE大陸まで食材を受け取りに行くにはリスクとリターンが釣り合っていないって言うのもあるな。ゲートはない、車は当然使えない、【アイテムボックス】に入る量も実はそれほど多くない……そんな状況下でアイゼン一人に配達を全部やらせるわけにもいかないだろうし。
「うまうま……♪ 何気に異世界の食材で作ったお菓子食べるの初めてっすけど、良いもんっすねぇ。品の良い甘さで、変な後味も残さない……これが料理漫画なら、アタシは今頃全裸になってるっす」
「規制に引っかかるから、リアクションは目と口からビームだけにしとけよ……って、何これマジで美味い。俺って味の違いとはあんまり分からない方だけど、これは地球の饅頭とは明らかに違いますよ」
「そうか」
相変わらずの鉄面皮で何を考えてるのか分からない平坦な声だけど、アイゼンの雰囲気がパァッと華やいだのは明らかだった。そんなアイゼンの様子を隣で見ていたカグヤさんは、少しおかしそうに微笑んだ。
「結構分かりやすいでしょ、彼」
「「確かに」」
絶大な戦闘力に目つきも鋭いことも加わって、初見では威圧感凄いけど、案外とっつきやすいタイプなのかもしれない……そんな不思議な雰囲気を、アイゼンは持っていた。
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「事情は分かった」
菓子を存分に堪能し、お茶で口直しすると、ようやく俺たちは本題に移ろうと居住まいを正し、ここに来た経緯を親父に持たされた手紙を渡して説明すると、机を挟んで対面に座る二人は軽く視線を合わせて頷き合う。
「いずれにせよ、もはや避けては通れないことだ。望む望まざるに関係なく、お前たちは既に後戻りできないところまで踏み込んでいる。たとえここで話を聞かなくとも、国連はお前たちに戦うことを命じるだろう……これから話すのは、そういう類の事柄であると覚悟しろ」
後戻りできないというのは、間違いなく魔王装備を手に入れ、ゼル・シルヴァリオと戦った事だろう。
それにしても、まさか国から戦う事を命令される日が来るとは……。
「まるで昔の徴兵みたいですね」
魔王の登場と異世界へ通じるゲートの出現によって、大昔の徴兵制度が世界中で復活したことがある。その制度はモンスターを地球から駆逐してからもしばらくの間続いていて、多くの冒険者たちが誕生した。今現在、スキルカード所持率が中高年に集中している大きな理由だ。
もっとも、安定を見せた今の世の中じゃ撤廃された制度……今更復活すれば、色んな所から不満が爆発しかねない。
「否定はせん。理不尽と感じるのも当然だろうが……人類を取り巻く問題は、否応が無くお前たちを巻き込むぞ」
「それは……何となく、察してました」
ディザスターモンスター……魔王装備でしか倒せないなんて言う化け物が真っすぐ地球に向かってくるような、逃げてもどうにもならない。命の危機に晒されて、強制とはいえ国連という大きな組織のバックアップを受ける機会を逃して後悔するだけだ。ならば今から聞く話を素直に受け止めるしかないだろう。
正直、どんな話が飛び出すのか不安ではあるけど……膝の上で固く握られた俺の拳を包む、カズサの手を感じて、軽く息を吐く。
「大丈夫です、聞かせてください。今更逃げることなんてする気ないですし」
「分かった。……カグヤ」
「はいはい……それじゃあ、ここからは私が引き継がせてもらいましょうか」
スッとカグヤさんの目が鋭くなる。まるで俺たちの心持ち全てを暴き出そうとしているかのような眼光に思わず目を逸らしてしまいそうになるが、それをグッとこらえて見つめ返す。
「じゃあまず、何で連絡手段がロクに無い、辺鄙なこの場所にいる私の所まで聞きに行くよう言われたのか……その事を、もう察しがついてるんでしょ? スキル使ったの、気付いてるわよ?」
「あ、すいません。つい癖で……不躾でした」
「良いわよ。怒ってないし、説明の手間が省けたわ」
話を聞くだけなら、事情を知る誰に聞いても同じことだ。わざわざこの二人の所まで行く必要性なんてない……それでも、とんでもない事情に巻き込まれた俺たちにとって、カグヤさんの口から直接語られる話は、時間と手間をかけてでも聞きに行く価値がある。その事を、【天眼】のスキルは教えてくれた。
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種族:彼岸魔王・ヒノハナノカグヤヒメ
戦闘力:?
落日を超える試練を与えるために出現した魔王種。かつて人の身で神を滅ぼす領域に踏み込んだ大英雄にして、異世界という名の試練に組み込まれた敗北者。挑戦者の力が及ばなければ世界の全てを猛毒で侵す不倶戴天の化身であったが、今はとある冒険者の使役下にある。
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だってこの人、明らかに事の当事者なんだもの。
ご質問があったのでお答えします
Q『質問ですが、人を襲った冒険者は鑑定などで強盗もしくは犯罪者などの表示はされないのですか?』
A『相手の経歴を詳しく閲覧することが可能なスキルもあるという設定ですが、同時に国にスキル所持者が一人いるかどうか位のレベルで少なく、操作にはやはり警察の力が必要不可欠ですね。経歴看破スキルは、容疑者の中から犯人を特定するために使われます』
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