一番好きな植物はハエトリグサです(作者より)
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
(こうやって降りてみると、改めてすごい大きさだって分かりますね)
砂浜に立つカズサの視点を調整し、目の前に聳え立つ植物を見上げさせる。
ギガントモンスターばかりのE大陸に自生する植物は、何の因果関係があるのか、巨大なものが多い。ていうかこの大陸自体がかなりの大きさで、地球で言うところのユーラシア大陸が五つ入るんじゃないかと言われているそうだ。
多分今俺たちが立っている地面を宇宙空間から撮影したら、地球よりも大きな星が写ってるんじゃなかろうか。そういう計画がある話は未だに聞いたことがないけど、いつか異世界の宇宙を研究する時も来るんだろうか?
(さぁて、それじゃあアイゼンが拠点にしている場所に向かうとするか)
どうやらここから十数キロ離れた場所にある洞窟……その先にアイゼンが居ることが多いらしい。そこに一体何があるのか、それは行ってみれば分かるというのが親父の談だ。
(あのー、地面に降りたんすか? おマルに乗ってビューンって飛んでっちゃダメなんですか? ギガントモンスターを警戒するなら、空の方がいいと思うんですけど)
(それはだな――――)
コントローラーを操作しようとした瞬間、当然の疑問をぶつけてくるカズサ。
丁度その時、俺たちの遥か上空を飛行するギガントモンスターが横切った。【天眼】を使ってみると、戦闘力が20万くらいあるのが確認できた格上のモンスターだが……そのモンスターが、丁度俺たちの目の前に生えていた超巨大食虫植物に食い殺された。
(とまぁ、あんなのが大量に生えている場所を、空飛んでいく方が無謀なんで)
(すべて理解したっす)
バキバキグチャグチャと骨や肉を咀嚼する音が響く。似てるの外見だけで、これ絶対に俺が知ってる食虫植物じゃねぇよ。
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品名:ギガモンスタートリグサ
顎にも似た先端部分で僅かな振動も探知し、ギガントモンスターすら養分にする最大の食肉植物。数多のモンスターを喰らう事で大量の栄養素が全身を循環しており、その液には極めて強力な滋養強壮効果がある。常人が原液のまま飲むと心臓が破裂しかねないほどの効果なので、数万倍に希釈して飲むのがお勧め。
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一応、こんなんでも有益な資源の一種らしい。根元は死角みたいなので、採取自体は簡単かもしれないな。今は用がないからスルーするけど。
(まぁ移動自体は変わらずおマルに乗っていくんだけどな。何もギガントモンスタートリグサよりも高い場所を飛ばなくてもいいし)
まるで森の中で、木と木の間を掻い潜る感じで飛んでいけばいい。勿論、おマルの体だとそれも難しいだろうが――――
「おマル、【虚ろの悪魔】を」
「ゥウォンッ!」
カズサを介した俺の指示により、おマルは自らの体を馬と同じくらいにまで縮め、その背中にカズサが跨る。このくらいの大きさなら、目の前のジャングルも掻い潜れるだろう。
「そこから更に、ギルドから借りた魔法の装備だ」
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品名:迷彩竜の大風呂敷
自らの姿を晦まし、気配を遮断するドラゴンの皮膜より造られた風呂敷。身を隠すもよし、物を隠すのも良し、大きさを自由に変えられる優れもの。
《装備スキル》
・超迷彩
・広縮自在
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背景と同化することで覆ったものの姿形を隠す【迷彩】と、文字通り気配を絶ち、大抵の探知スキルを掻い潜ることができる【気配遮断】の二つの効果を持つ複合スキル、【超迷彩】が宿っている風呂敷だ。
面積を自由に変えれる【広縮自在】によってカズサとおマルを丸ごと包み込めば……ホログラム画面でもカズサたちの姿が確認できなくなった。
これで大抵のモンスターには気付かれなくなったと思うが、油断は禁物。あくまで姿を隠すだけの装備だから、イルカやコウモリみたいに音響探知で敵の位置を探り当てるモンスターには通用しないからな。
(そっちの操作は大丈夫ですか? アタシたちが消えちゃったら上手く操作できなくないですか?)
(大丈夫。移動はおマル任せだし、カズサの体の向きさえ分かってればどうとでもなるし。お前のスマホにも地図情報があるだろ? それを頼りに口頭でおマルを誘導してくれ)
(了解っす)
重要なのは余裕を持った危険探知だ。借り物の大きな風呂敷で体を隠す以上、敵を攻撃する時は一旦【アイテムボックス】を発動させてから風呂敷を仕舞わないといけない。
それは戦闘においては致命的な隙だが、幸いにも敵はギガントモンスターが大半。【窮鼠の直感】を併用しつつ、カズサたちの周辺を探知するように、ホログラム画面に映る視野を広げ、事前に危険を回避する。
(よし、行くぞ!)
(おーっ!)
おマルが静かに羽ばたき、ホログラム画面に映る光景がおマルの行動に沿って流れていく。
こうして俺たちの今日の冒険は始まるのだった。
=====
「ギャアアアアアアアアアアアッ‼‼‼」
「グォオオオオオオオオオオッ‼‼」
もはや森と表現した方がいい、ギガントモンスタートリグサが生い茂る場所を進むこと暫く。既に何度目かになる、凄まじいモンスターたちの咆哮を聞く度に俺たちの心臓は大きく跳ね上がるのを自覚した。
(凄い音しますねぇ……ゴゴゴゴゴッって、至る所で地響きが鳴ってますよ)
スーっと空中を移動する、俺の目には見えないカズサの声は、何時もより若干不安そうだ。
まぁ戦闘力が自分よりもずっと上のモンスターが蔓延る場所に生身でいるからなぁ……普通に会話が出来るだけ、彼女の胆力ばやっぱり並大抵の物じゃない。
(もう既に、戦闘力30万越えのモンスターが現れ始める地点まで来たからな。でもあと30分もあれば着くだろうから、それまで頑張ってくれ)
(地図によると……確かにそうみたいっすね。後もうちょいでこの森を抜けますから――――)
そう言っている内に、カズサを乗せたおマルが森から飛び出したのが、ホログラム画面に映る映像から分かった。
そうして新たに見える光景は、所々巨大な漆黒の結晶体が地面から突き出している荒野。黒水晶が立ち並ぶ荒野というのは見方によっては神秘的な光景ではあるが、相変わらず油断はできない。
(アイゼンが拠点にしている洞窟があるのは、この荒野みたいですね。このまま進んでいけば着くみたいですよ)
(よし、遮蔽物も無くて見晴らし良好……ここからはスピード出していこうか!)
「ラジャーっす。 おマル、全速前進っ」
「……ワフ」
グンッと飛行速度を上げるおマル。カズサからは見えないかもしれないが、彼女の周辺をローアングルで映すホログラム画面には、すでに二体のギガントモンスターを確認している。進行方向上に来ていないのは幸いだけど、何時こっちに気付くかも分からない。とっとと抜けるに越したことはないな。
(このペースなら、思ったよりも早く着くかもっすね。風呂敷のおかげで、結構順調ですし)
(あぁ。……もしかして、俺はちょっと勘違いしてたかもな)
(勘違い? どういう事っすか?)
(俺はてっきり、この大陸のモンスターたちを乗り越えて実力を示せって言われてるもんだと思ってたんだけど……それにしては、この迷彩竜の風呂敷は有能すぎる)
ここに来るまでに、何度か俺たちに視線を向けてきたギガントモンスターと遭遇しもしたが、そいつらは結局「気のせいか」と言いた気にすぐに視線を切って立ち去って行った。
【超迷彩】の力が働いている証拠だ。こんな魔法の装備を渡しておいて、モンスターと戦えと言いたいわけじゃないだろう。むしろ出来る限り安全にアイゼンの元へ行けるようにする為の配慮にしか見えない。
「アイゼンを見つけ出して格を示してほしい」っていう文言もちょっと引っ掛かるし。となると……親父が言っていた、最低限の格を示せって言うのは……?
(……あれ?)
(ユースケ? どうかしたんすか?)
警戒の合間に思索にふけっていると、俺はふとあることに気が付いた。
(二時の方角から……何かこっちに向かってきてね?)
地面が水面の様に揺らいでいて、その揺らぎが真っすぐカズサとおマルが居る方へと向かってきているのだ。
ベルトに宿る【窮鼠の直感】が全力で警報を鳴らす。だが移動速度が速すぎる……逃げようにも、振り切れそうにない……!
(避けろ!)
俺が叫ぶと同時におマルは翼を翻して急速旋回。瞬時にその位置から横に向かって離れた瞬間、寸前までおマルたちが居た場所を黒い何かが貫いた。
「ギュィイイイイイイイイイイイイイッ‼‼」
独特の鳴き声と共に、まるで水中から飛び出すように地面から現れる巨大な影。岩や土が液体化したかのようなものを撒き散らしながら、ソレはおマルの上空から明らかにカズサたちを見下ろしていた。
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種族:グランドデス・ドルフィン
戦闘力:403469
大地の中を泳ぎまわり、優れた探知能力で獲物に奇襲をかける、強大にして狡猾なハンター。一度狙った獲物は決してのがさない執念深さを持っており、眼を付けられれば逃げることは出来ないとされている。
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ご質問があったのでお答えします
Q『おマルの餌は?やっぱりドッグフード系?』
A『基本的にモンスターは魔力食という、大気中や生物に宿る魔力を食べて生命維持をし、成長します。ですが人間が食べられるものなら何でも食べて、胃の中で魔力に変換することも可能なので、異世界に比べて大気中の魔力が少ない地球では、テイムされたモンスターは人間と同じものを食べるのが大半です。ちなみにペットフードの類も食べることができるので、おマルはドックフードだろうがタマネギだろうが何でも食べます』
Q『「雄介は便器のおまるの事を完全に失念した状態で、語感の良いニックネーム、おマルを付けたんですよ」
(・_・)ジー
その設定、マルちゃんのつぶらな瞳を見ながらもう一度言ってみようか』
A『何度でも言いましょう。雄介は便器のおまるの事を完全に失念した状態で、語感の良いニックネーム、おマルを付けたのだと。そもそもおマルはチワワサイズになっても目つきが鬼のように悪いからつぶらな瞳とは無縁ですし、何事も斜に構えるクールな性格ですから、もっとストレートな下ネタとかでもないかぎり、自分の名前もどうでも良いタイプです。やっぱり人間と動物とじゃ、価値観が違いますから。
ただまぁ、正式名称とは別の愛称として、マルとかマルちゃんとか、そういう呼び方もアリかなって思ってます。今後の課題ですね』
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