ラストダンジョンの雰囲気って胸がドキドキするよね
設定や用語など、作中で気になる疑問があれば感想にてお伝えしていただければ、次話の後書きにてご質問にお答えしようと思いますので、ぜひ書いていってください。
「まさか、こんなに早く行くことになるなんてなぁ」
E大陸……最後の大陸とか、冒険者に終わりを与える地獄とか、名前の由来が物騒なものばかりのその大陸は、ランカーを駆け上がる全ての冒険者にとって、避けては通れない場所だ。
E大陸でしか採れない資源が数多く存在したり、他の大陸では絶対に手に入らないようなマジックアイテムが存在することもそうなんだけど、冒険者としての人気を支える重要な柱である強さ……それを突き詰めるためには、E大陸のモンスターを倒し続けないといけない。
「戦闘力の上限を無視するためのカードは、E大陸のモンスターしか落とさないからな」
一昔前まで、冒険者の戦闘力の上限は15万と信じられていた。
これは戦闘力が15万に達すると、カードが弾かれるようになってしまうからだ。カズサはまだ戦闘力が15万には達していないから、試しにおマルに【スキルリンク】で俺の【アイテム強化】をコピーさせた状態でカードを使わせたんだけど、ものの見事に弾かれたから、昔の冒険者たちが戦闘力に上限があるものと信じるのも無理はないだろう。
地球のゲートから直接行ける大陸にあるダンジョンも順調に踏破され、もはや人間は異世界をも征服できるだろうと思われたが、その矢先に見つかったのが直通のゲートが一切見つかっていない、E大陸という訳だ。
当然、多くの冒険者たちが探索に赴いた。魔王を倒し、モンスターを地球から駆逐した自分たちなら恐れるものはないと、勝利して二十年から三十年も経った人類が、そう慢心するのも無理はない。
だが結果として、想像よりも遥かに多くの冒険者たちが命を散らすこととなった。
当然のように、至る所に闊歩するギガントモンスターたち。凶悪なギミックと戦闘力15万を優に超えるモンスターが溢れかえるダンジョン。E大陸に生息するモンスターと言うのは、他の大陸のモンスターとは比較にならない強さを誇っていたのである。
かつて地球に現れた魔王を倒した冒険者の戦闘力が100万だったと言うが、それは一世紀以上も前の事の上に、蔓延るモンスターたちとの戦火の影響で、多くの情報が取りこぼされていた時代だったから、実はこれも疑問視される声も多い。
かくいう俺も、今では本当に100万もなかったんじゃないかと踏んでいる。何せ同じく魔王を名乗っていた信長は相手の戦闘力に応じて強さが変わる敵だったし、件の魔王も同じようなスキルを持っていた敵だったとしても不思議じゃない。
だがそう言った強大なモンスターを倒すことで得られた恩恵と言うのは、非常に大きかった。数多くの冒険者たちが共闘し合うことで、E大陸に出現するギガントモンスターを倒し、無制限に強くなるというギガントモンスターの性質を表すかのような、15万という戦闘力の上限を超えることができる特殊なカードを落とすのが確認されたのだ。
幸いにも、E大陸内のギガントモンスターが他の大陸に向かう様子はない……いや、他所の大陸からギガントモンスターが渡ってくることも報告されていたから、むしろギガントモンスターたちが最後に行き着く場所が、あの大陸なんだろう。
おマルもいることだし、カズサの戦闘力が上限に到達し、もう少しスキルを充実させてから、俺たちもE大陸に挑戦してみるつもりだったのだが、その予定は急に早まることになった。
「ディザスターモンスターに魔王種……気になることがあるなら、E大陸に居るアイゼンに聞きに行け……か」
魔王信長にゼル・シルヴァリオ……この二体のモンスターと戦い、積もるに積もった数々の疑問に答えると、冒険者ギルド本部が親父を介して俺に伝えてきたのだ。
やっぱりというべきか、ギルドは公に出来ない重大な問題に直面していたらしく、それに俺たちが関わることを認めたのだが……一番事情に詳しいのが、出現するモンスターの平均戦闘力が50万のE大陸という魔境を拠点に活動している頭のおかしい冒険者、アイゼンなのだとか。
魔王とは何なのか、ディザスターモンスターとは何なのか、その答えを最も的確に伝えられる人物に聞いた方が、話の内容を実感しやすい。
「……正直、誰が話してもあんまり変わんないような気がしますけどねぇ」
「ついでに、E大陸からアイゼンを見つけ出して最低限の格を見せてほしいらしい」
話を聞くだけなら親父から直接と言うのが手っ取り早くもあるから、言いたいことは分からなくもない。
ただ、事情を聴くことで今後もディザスターモンスターと戦う機会があるというのなら、実力が伴っているのかを確認したい気持ちくらいあるのも分かる。
詳しい事情は分かっていないけど、ギルドの目的にディザスターモンスターや魔王装備が深く関わっているのなら、魔王装備を持つ俺たちの力を見極めたいと思うだろう。
「さらに言えば、アイゼンは機械類を一切持ち歩かないんだと。連絡する時はアイゼンが使役する鳥型モンスターが、手紙を運んでるらしくて、とにかく伝達には時間が掛かるんだって」
「それは今時珍しい……古風な人なんすかね?」
「多分な」
連絡に鳥を使うなんて時代錯誤も良いところだが、サムライと呼ばれるほどに英雄視されているアイゼンがやると、不思議としっくりくるイメージがあるな。
相手は世界最強の冒険者だ……きっとストイックに修行に励むために、スマホとか俗物的なものは一切排除しているんじゃないかと、俺だけでなく多くのファンがそうネットで呟いている。
……ただ気になるのは、親父がやたらと顔を逸らしながら「アイゼンは、携帯を持たない主義だから」と震える声で言っていたことくらいだろうか。あの態度は一体どういうことなんだろう?
「ま、正確にはアイゼンが一番事情に詳しいんじゃなくて、アイゼンと一緒に活動してる奴が一番詳しいらしいけどな」
心当たりがある。アイゼンの事に関して調べてみた時、数少ない地球での様子のアイゼンを捉えた画像がネットに出回ったのを見たことがあるけれど、その画像にはアイゼンととある人物……? が写っていた。
もしかして、あの写真の女性の正体は――――。
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翌朝。魔物除けとカズサに守られる中で十分な睡眠をとり、最高のコンディションであることを確認した俺は、カズサの内部空間から海上を眺める。ホログラム画面には、カズサを載せて両翼を羽ばたかせるおマルが海の上を翔けていた。
「おー! 良いもんっすね、空を飛ぶって言うのは! ユースケも乗ってみません?」
(それは今度な)
長い鬣に摑まりながら、飛翔の際に生じる風を全身で浴び、流れゆく海面を直に眺められるカズサが羨ましくもあるけど、E大陸で俺がカズサの内部空間から出ることは死を意味すると言って過言じゃない。
E大陸の特徴の一つとして、大陸の中央へと進むにつれて出現するモンスターの戦闘力が上がっていくというものがあるらしい。だから外周部分は今の俺たちでも何とかなるモンスターなんだが、それでも戦闘力15万以上はあるとかないとか。
アイゼンの拠点に続く最短ルートが書かれた地図情報がスマホに送られたし、ギルドから支給された魔法の装備もあるけど、今回は間違いなく難しい冒険となるだろう。
エネルギーポーションも出来るだけ買い揃えたけど、そうそう【魔王覚醒】には頼れない。基本、隠れながら進む方針で行こうかな。複数体のギガントモンスターに一斉に目を付けられたりしたら洒落になんないし。
(ユースケ! 見えましたよ!)
ホログラム画面に薄っすらと見え始めた大陸の影と、その上空を覆う暗雲を確認すると同時にカズサが叫ぶ。
異世界で最も険しい大地は、不気味な雰囲気と共に俺たちを待ち構えていた。
(これは……スゲェ光景だ)
火山地帯とか沼地とか、氷雪地帯とか砂漠とか、そういう過酷な場所もあるにはあるけど、異世界の大陸と言うのは大半が風光明媚な場所で占められている。
だが目の前の大陸はどうだろう。全貌を確認することは出来ないが、少なくともホログラム画面に映るE大陸は、どす黒い霧が吹きだす尖塔のように削られた岩が無数に立ち並び、食虫植物を思わせる奇妙な形をした、ビルのように巨大な植物が生い茂っている。
危機感が立ち入るなと叫んでいる。もし魔界と言うのが存在するのだとしたら、まさしくこのような場所の事を言うのだろう。
(いやぁ、何か気味悪い場所ですけど……何かドキドキしません?)
(確かにな)
どこか愉快そうなカズサの声に、俺も思わず愉快な気持ちになる。
広がる大地や事前に集めた情報を統合すれば、少し前の俺なら迷わずUターンするような場所だ。緊張で動悸が早くなっているのもあるんだけど、それとは別の感情が胸を高鳴らせてもいる。
戦いそのものを楽しむ気にはなれないが……カズサと過ごす中で、俺は子供の頃に確かに感じていた気持ちを思い出したのかもしれない。そんなことを考えながら、おマルに指示を出して海岸に着陸するのだった。
丁度ご質問も無いようなので、作者から読者の皆様に土下座でお願いしたいことがございます。
僕に……積みゲーを消化する時間をください。買ってから数か月たつのに全くプレイできてないのとかあるんです。執筆のために我慢してましたけど、もうフラストレーションの限界です。
というわけで、しばらくの間は更新速度を1~2日に一度のペースにしようと思います。大体1日半くらいで1話更新する感じで、どうかご理解のほどをお願いいたします。




