05.煩悩丸出しだってオタクだもの
やっとちょっとストーリーが進んだ気がする回です。
ー煩悩丸出しだってオタクだものー
明美が光の国ドルスターの第一王女イリア ルーン ドルスターとして生まれ変わって暫くはごく平和な日々が続いていた。
「イリアにプレゼント持ってきたよ。」
そう言って優しい笑顔を向けるのは2つ年上の明美最推しキャラである光の国第一王子アルフォント レイジ ドルスター。
明美は後光がさすような尊すぎる貴重な幼少期のアルフォンスの満面の笑顔に思わずスクショボタンを探す。
スクショができない事実をぎりっと歯を食いしばりながら耐え、なんとか笑顔を作り。
「お兄様ありがとうございます。まぁ何かしら?」
5歳に成長した明美ことイリアはそれはそれは順調に美しく育っていた。
そんなイリアに似合えばと兄のアルフォンスが薄いピンクの花の形をしたガラス細工に宝石が散りばめられた髪飾りをイリアにプレゼントした。
パンっ!!!
イリアの中の明美の何かがはじけた。
「イリア??何かすごい音がしなかった??」
あぁ、心配しないでアル様、慌てるアル様も可愛すぎて二度目の転生をしかけただけです。
とは言えずにギリギリ笑顔を作る。ギリギリ。
「いいえ、お兄様、こんな素敵なプレゼントありがとうございます。とても嬉しいですわ。」
「ふふふ、イリアは5歳なのにとても大人っぽくてとても素敵なレディだからね。そろそろこういうのも似合うと思って作ってもらったんだよ。」
素敵なレディ。
素敵なレディ。
皆様、自分の推しキャラから、3Dで「素敵なレディ」と呼ばれることの幸福感が伝わりますでしょうか?
明美がこの世界に転生して5年の月日が流れた。
明美はたった1人の妹として大事に大事に育てられている。
と、同時に生まれながらに火の国の王子と許嫁関係にあるため0歳児から始める皇后英才教育をみっちり叩き込まれているのである。
なので42歳独身OLとは思えないほどお淑やかに取り繕えるように成長できはしたが、それはそれは過酷な5年間であった。
ゲームの世界だからと舐め腐っていた明美には本当に辛い5年間だった。
そして、本日、ついに推しから「素敵なレディ」という称号を頂きました。
♪〜♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜〜〜(エンディングソング)
『明美!!!!』
(にゃん!!!)
『ねぇ、わかってる?』
その辛い5年を何とか乗り越えれたのはこのにゃんのおかげもあるだろう。
にゃんは明美がイリアとして生活するサポートを5年間ずっと続けていた。
にゃんの魔力『トリップ』という魔法で周りの時間を少しだけ止めて次元の裂け目でにゃんと明美は精神だけで会話する事ができる。
トリップする度に明美のケツを叩きなんとか心折れず、煩悩にも染まらずにここまでやってこれた。
(このまま変なイリアで成長するとヴァルハラート学園でにゃんに会えなくなる)
『わかってないよ明美。確かにそれもそう。だけどね、明美がしっかり頑張って良い人に成長しないとこの世界のイリアは悪役なんだから芯がブレブレのまま成長すると自然と悪役のイリアになっちゃうんだよ!』
(え、そんな、だって他の作品とかは悪役令嬢が愛されたりする展開じゃ、、、、)
『明美、ここの世界の事を明美がなんて思ってるかはだいたいわかるよ。でもね、これはもうゲームじゃなく間違いなく明美の現実なんだからね!』
(私の、、、現実)
『。。。喜ばないでね?』
(うぅ、、、なんでバレたの?)
『明美はわかりやす過ぎるんだよ。』
にゃんが呆れてわざと大げさに大きな溜息を吐くと明美が明らかにしょんぼり肩を落とし。
『反省してくれてるならいいよ。明美が思ってるより現実は甘くないよ。ちゃんと愛される人間にならないと誰とも幸せになれないし、悪役になったら大好きなアルフォントも優しい両親も一緒に島流しになっちゃうよ?』
(だめ!!!それはだめ!!!!!)
『なら頑張ってね?明美、ずっと42歳って言ってるけどあれから5年、本当なら明美は47歳なんだからね。』
大きな岩が明美の頭に落ちてきたようなそんな気持ちになる。
最後ににゃんが
『じゃあそろそろボクの魔力ももたないからトリップ切るよ。』
って言っていたがそんな言葉は明美には聞こえていなかった。
ふっと気が付けば目の前には推しの心配そうな顔。
「イリア?イリアどうしたの?」
「はっ、、、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてしまって。」
「勉強しすぎてるんじゃないの?先生達がイリアの学力の高さに驚いてたよ?」
学生時代、オタ活と勉強しかしてこなかった明美は勉強だけはできた。
5歳児であると言う事に気を使いながら勉強しているものの、やっぱり5歳児にはなりきれず出来過ぎてしまい周りの大人たちをざわつかせてしまった事がある。
特に簡単な足し算ができてしまった時は誤魔化しようがなく、計算に置いては天才ということになってしまった。
このまま成長をするにつれ周りが他よりちょっと勉強が出来るぐらいなのに気が付くのが怖い。
「何か不安があったらお兄様が助けるからね。ボクの大切なお姫様。」
そう言ってイリアの美しい金の髪にキスをして去っていく。
明美の頭はもう許容量を超えていた。
だが、ここで変な方向を向くわけにはいかない。
これは現実、自分はイリアとして火の国の王子と結ばれなければ王家ごと島流し!!!
本当の天才になってやると意気込み、勉強の時間を増やす事を誓った。
続く
補足
ちなみにゲームには情報としてしか登場しなかったので10回以上もクリアしていた明美ですら実際自分が対面するまで忘れていたが実はアルフォントとイリアの間に双子の兄弟がいる。
レオ レイジ ドルスターとジャック レイジ ドルスターこの国の貴族以上の家では息子は父、娘は母の名前をミドルネームとして使うみたいだ。
これも明美が生まれてから知った事実。
(アルフォント以外の兄は名前しか出てこなかったし、両親なんて名前すらでなかったもんな)




