43.後夜祭
ー後夜祭ー
競技祭はイリアが知っているそれとは少しの違った形で終了した。
そして、片付けが終わり、後夜祭が始まった。
「クッソーーーー!!!!あと少しだったのに」
競技祭閉会式が終わり、イリア、エンジュ、ラルフ、フレイ、ヴィオラ、ルビは後夜祭を共に過ごしていた。
「フレイ様も凄かったです!」
「イリア・・・応援してくれてたのか!?」
フレイは大型犬の子犬のような顔をしてイリアに詰め寄る。
「ほんと考えなしだな・・・他所のクラスの奴が別のクラスを応援すると思うのか?」
その様子をルビが嘲笑しつつ言うとエンジュが不思議そうな顔をして首を傾げる。
「ルビ様ってとってもクラス想いなんですね。」
「はっ?」
「私は仲良しな方を応援したくなっちゃいます。お兄様の事応援してしまいましたし、でもそれは自分のチームに対する裏切りでした。」
「・・・はぁ。」
「ルビ様のようにクラスメイトを一番に応援する気持ちはとても素敵な事ですね!」
絶対無垢な100億点エンジュスマイルがルビの心に突き刺さる。
「まぁルビったらそうだったんですね!私も来年からはA組だけを応援します!!ルビの気持ちを無下にはできませんからルビのことはもう応援するの辞めますね!!」
ヴィオラのトドメの言葉でルビがたじたじと否定をするように口を開くがラルフにそれを掻き消される。
「そうなんだー。でも僕はヴィオラの応援嬉しいけどなぁ。ねぇヴィオラ、F組は応援しなくても良いから僕の事は個人的に応援してくれる?」
「なっ!!!貴様っ!!」
「ルビ王子は他のクラスは応援したくないそうだから、僕やヴィオラはルビくんの敵みたいだよ。」
「まぁ、もちろんです!ルフ様のことは私個人的に応援しますわ!」
「ちょ・・・僕もっ・・・「嬉しいなぁ!ヴィオラの応援があるなら来年も本気で頑張るね。」
ルビの言葉を遮ってラルフがヴィオラにそう言う。
そのラルフの顔をイリアは良く知っていた。
(ルフ様、絶対楽しんでらっしゃる。)
ラルフの新しいオモチャが誕生してしまった。
「イリア姫、エンジュ。」
騒がしいルビ達を温かい目で見守っていたイリアとエンジュに優しい声で近寄って来たのは2年生でエンジュの兄であるヨファ クリーエントだった。
「あらお兄様。」
「ヨファ王子、お疲れ様でした。」
「イリアも学園では王子と硬くならなくていいよ。」
「ありがとうございます。ヨファ先輩。」
「先輩」という言葉が嬉しかったのかヨファがとても嬉しそうにニコニコと微笑んだ。
周りにパァっと小花が咲き誇るような笑顔にイリアのアレ(明美)がギュンッとする。
「よかったら写真撮れないかと思って。」
「まぁ!素敵ですわ!」
「イリオに送りたくて。」
イリアの肩がビクッと大きく震えだらだらと冷や汗が流れる。
イリオとはイリアが煩悩を抑えきれなかったせいで生まれた悪夢である。(注意*男装したイリア)
「へぇ!良いですね、4人で撮りましょうよ!」
面白い事を聞きつけたとラルフがこちらへ近寄って来た。
(ル、ルフ様・・・完全に楽しんでらっしゃる・・・。)
「ありがとうラルフ、今朝イリオに競技祭の話をしたら『応援してます!』って返事が来てさ、負けちゃったけど、、楽しかった事を伝えたくて。」
「・・・アンタまだメッセしてたの?(小声)」
「む、無視するわけにいかないじゃないですか!!(超小声」
「まぁいいや、さ!撮りましょう。僕腕長いんでシャッター押しますよ!」
嬉々として嬉しそうなラルフがヨファからカメラを受け取り手を伸ばす。
ラルフ、イリア、エンジュ、ヨファの順で並ぶとラルフの掛け声でシャッターを切った。
(はっ!!!!どさくさでめちゃくちゃレアな写真を手に入れたぁぁぁぁぁぁ!!!)
「ありがとうみんな。」
またもや小花を沢山咲かせながら嬉しそうに写真をみるヨファに一同ほんわかした気持ちになった。
「ヨファ先輩!イリオに直ぐに送ってあげましょうよ。きっと凄く喜ぶはずですよ!」
(ちょっ!!!ちょっとラルフ様!?!?)
「そうだね!そうするよ!・・・送信っと。」
ピロリンッ♪
(ぎゃあぁぁぁあぁぁぁぁ!!!)
イリアのジャージのポケットの中でメッセが鳴り響く。
「ゲフグフごほっ!!!!!!」
「ちょっ!!イリアさん!?大丈夫ですか??」
心配してくれる天使のようなエンジュの後ろで笑いが止まらず背中を向けて肩を震わせて笑うラルフの姿が目に入りイリアはげっそりした。
こうして競技祭の全行程は終了した。
競技祭最終種目のリレーの後、何故かその場所にイリアも居たにも関わらず(しかもラルフのジャージまで持ってたのに)ラルフがヴィオラに優勝を捧げたと会場が少しザワついた。(これがヒロイン補正というやつ)
しかし、公認カップルになるほど騒ぎ立てられる事はなく、生徒達が噂する程度で収まった。
そして、ヴィオラの制服はヴィオラ自身が体操着から制服に着替えようと更衣室に移動するさい、誤って中庭の噴水にぶちまけたことで自分の過失ということになった。
その時、エンジュの発案で後夜祭は制服ではなくみんなでジャージで出ようとこの場にいる面々はそれに習った。
この事で、村八分どころか友達思いの王族達というスチルが望めそうなシチュエーションで競技祭編の幕が閉じた。
続く




