26.屋上事変4
長かった屋上事変、最終章です。
ー屋上事変4ー
イリアはにゃんの作戦通り万が一の為にと持ってきていた変装グッズで男装に着替える。
そして、唯一自ら編み出した身長が伸びる魔法を自身にかける。
『本当に何の意味もなかった魔法がこんな時に役に立った、、、』
「何??」
『何でもないー。』
鏡に映る自分の姿を見て溜息が出る。
姿こそ男子生徒には見える。(胸もないし)
だが、どっからどう見ても顔はイリアだった。
「今から私はイリオ、、、お願いします今日だけはバレないでぇぇぇぇ。神様ーーー!!」
この世界に転生してからあまり役に立たないと知った神様にそれでも望みをかける。
屋上に扉の前で何度か深呼吸する、自分が出せる一番低い声を出してみる。
元々ハスキーめのイリアの声、それでもお世辞にも男声とは言えなかった。
ギィ、、、、
「あ、あの、さ、さっきドルスターの姫がぼぼ、僕の事探してるから屋上へ行ってくれって言われて、、、」
そう言いながら屋上に入ると、エンジュとヨファ、ラルフがこちらを向いた。
3人の視界に入ると途端に前髪を目の下まで下ろし出来る限り目が見えないように俯く。
「まぁ、初めまして、私、エンジュ クリーエントと申します。」
全く気付く様子なくエンジュがイリオに明るく挨拶した。
「ど、どうも、えっと、イ、、、イリオです。」
(バカあぁぁぁぁぁぁぁ何でそんなバレバレな名前、、、私のバカ、、、)
「イリオ、僕に遠慮してたんじゃない?そう思うと申し訳なくて。」
3人の様子が気になり、前髪の間から顔色を伺う。
何の疑いも無さそうなエンジュ、嬉しそうなヨファ、ラルフは完全に呆れきった顔をしてイリオに怪訝な視線を向ける。
そう、そもそもクリーエント兄妹が全く疑ってない方が逆にすごいのだ。
(詰んだ。)
イリオに駆け寄り、クリーエント兄妹が嬉しそうに話しかける。
「これからも屋上で体操続けてくれたらいいし、僕新しい友人が増えるのはとても嬉しくて。」
「お兄様は昔から魔力が強くて中々他者とコミュニケーションを取るのが難しかったんです。だから仲良くしていただけた私も嬉しいですわ。」
背景に可愛いお花が飛んでそうに見えるクリーエント兄妹、心が痛いイリオ。
ずーっと痛い視線を飛ばしてくるラルフ。
(自業自得だ、、、)
「その、すみません僕、せっかく仲良くなれて嬉しいんですけど。実は今日で学園を辞めることになって。」
「えぇぇ!な、何かあったのですか?」
物凄く心配そうなエンジュ、心臓が痛すぎてもうイリオの心はギリギリだった。
「実家の都合というか、ちょっと父の跡を早く継がないといけなくなってしまって。」
「まぁ、、、、そうでしたの。せっかく仲良くなれたのに残念ですわ。」
「、、、、そっか、それは寂しいな。」
ヨファが絞り出すようにそれだけ呟いた。
(ギュンッ)
明らかに落ち込んでションボリしているヨファにいたたまれなくなって、またイリオの悪い癖がでた。
「あの、よかったら連絡先交換しませんか?学園辞めても、友達は変わらないですよね?」
(ああああぁぁぁぁぁぁぁまた余計な事をぉぉぉぉぉ!!!!)
しばらく話して、ヨファと連絡先を交換した。
エンジュはアルフォントの許可がない為兄を通して遠慮すると言ってくれたのが不幸中の幸いだった。(だってもう交換済みだから)
「そう言えば、イリアさん、遅いですわね。」
「あ!!!イリア姫はなんかフレイ様と話が長引くようで、今日は行けないすみませんと伝言もらいました!!」
あまり長居してはボロが出る。(もう出てるけど)
そう思って立ち上がった。
「さぁ!そろそろ迎えがくるから行かないと!!」
「そうだな。イリオ、友達になってくれてありがとう。」
「こ、、、こ、、、こ、、、こちらこそ!!!」
(100億万点の笑顔ありがとうございます!!)
ではーっと屋上を去ろうとするとあの魔王に声をかけられる。
「おーい、イ・リ・オ・く・ん」
襟元をグイっと引っ張られ引き寄せられる。
声は優しいがオーラは怖い。
返事ができず半泣きでラルフを見る。
「アンタいつから男になったんだよ?」
物凄く冷たい、おそらくぽわぽわ兄妹には聞こえな声でそう問われる。
「これには深いわけが、、、」
「今回ばかりは怒ってんじゃない、俺本当に戸惑ってんの。写真、、、」
「けけけけけけけけけけけ消します」
ラルフの言葉を遮って訴えると。
「ちげーよ。アンタは写真ばらまく勇気なんてないと思ってるからそれはどっちでもいい。理由を言え。今日、19時に俺の部屋へ来い。誰にも見つかるなよ?わかったな?」
「は、はい。」
こうして、新たな問題と共に長かった屋上事変が幕を下ろした。
続く
☆おまけ☆
ヨファとメッセージ友達になったイリオ。
毎朝送られてくる「おはよう」と「おやすみ」メッセージには貴重なレア写真がついてくるので、頑張った甲斐がありました。




