17.1ーF
ー1ーFー
イリアは自身の入学クラスであるF組の前でその一歩が踏み出せずたじろいでいた。
『どしたの明美?』
「いや、、、。」
イリアには入り辛い理由があった。
それは同じクラスにラルフ ウィンフリーが居るからである。
「こわいぃぃぃぃ!!」
わーんとわかりやすく泣くとにゃんが溜息をついて涙をぺろっと舐め。
『確かにあんだけ怒られたら怖いのはわかるけどさ。』
「違う!!」
『違う?』
「あんなに嫌悪感丸出しにされて明らかに嫌われてるのに嫌味言われる度に「あぁぁレアルフ様しんどいぃぃぃぃぃぃぃ(褒め言葉)」って最高に高まってしまう自分がめちゃくちゃこわいいいい!!!」
『なにそれーーーーー!!!』
思わずギャグ漫画のように目が飛び出してしまったにゃんが自分の目を戻しながら。
『ボク、明美のこと舐めてたよ。』
「オタとして当然の感情じゃない????むしろ愛するキャラの実写化が自分の知らない一面持ってたら得したってたぎらない??実写化と原作の違いだって製作側が認めたならそれも公式って思って隅々まで愛せてこそ作品を愛してるって事にならない???????」
『わかったわかったから!もうボクは明美が怖いよ。』
まだごちゃごちゃとイリアとにゃんが教室の前で揉めていたら後ろから声が聞こえた。
「あの、、、すみません、教室に入りたくて。」
イリアが振り返るとそこにはこの世界では珍しいとされる美しい黒髪ロングに瓶底眼鏡をかけた女生徒が立っていた。
(こ、この黒髪に瓶底眼鏡は、、、、エンジュたん!!)
エンジュ クリーエント
水の国クリーエントの第一王女。
性格はおっとりしてみえるが言う時ははっきり物事を言う。
蜜プリのライバルキャラの中で最も人気のあるキャラクター。
この世界にはコンタクトというものが無く、学園時は瓶底メガネをかけている。
国特有の黒髪に黒い瞳、雪のような白い肌、眼鏡を外すととても清潭な顔立ちをしている。
社交の場では瓶底眼鏡を取っているが、近視のせいで眼鏡を外すと目つきが悪い、それがクールビューティーさを引き出している。
神秘的な魅力があるエンジュは最も美しい幻の姫として讃えられている。(普段は眼鏡をつけている為)
そして、イリアの兄で有り光の国の第一王子であるアルフォント レイジ ドルスターのフィアンセでもある。
(実写化のエンジュたんきたぁぁぁぁぁぁ!!!配役に解釈違い無し!!!)
実はイリアは本当はこのエンジュに生まれ変わりたかった。
ライバルキャラクターの最推しでしかも最推し攻略キャラのフィアンセとか神すぎる!と期待していたが神はそんなに甘くはなかった。
「あの、、、」
イリアがエンジュに見惚れていると困ったようにエンジュが教室の方へ視線を向け。
「入らないのですか?」
「はっ!!ごめんなさい!!!ううう、美しい黒髪に見惚れてしまって、、、。私はイリア ルーン ドルスター、同じF組よろしくお願いしますわ。」
イリアは咄嗟にでた言い訳に(嘘じゃないもーん)ワタワタしながらも出来る限りのお淑やで挨拶をした。
するとエンジュの表情が見るからにぱっと明るくなり口元でパンっと手を合わせて嬉しそうに微笑み。
「まぁ、じゃあ貴方アルフォント様の妹君なんですね!」
「そうです。兄がいつもお世話になっております。」
(お世話になってるってこの世界の挨拶でもあってるよね?)
そう伝えると、エンジュは頬を赤くし、赤くなった頬を恥ずかしそうに両手で
覆い。
「そんなぁ。お世話だなんて、私のほうがよっぽどお世話になっておりますわ。」
(かぁわぁええぇ)
照れながら一生懸命喋っているエンジュの声はもうイリアの耳には届いていなかった。
明美の世界でのエンジュは明美だけではなく、蜜プリユーザーからの人気も1番高かった。
その理由は瓶底眼鏡からドレス姿のギャップや、このおっとりした性格に反してクールな見た目、そしてなによりどのライバルキャラクターより純粋にフィアンセの事を一途に好きでいる姿に「#エンジュたんの恋を応援し隊」というタグが流行るほど人気のあるキャラクターだった。
この今イリアの目の前にいるエンジュも、ゲーム同様アルフォントに恋しているようだ。
(あー可愛いなぁエンジュたん、、、一緒のクラスとか本当ラッキー。)
二人で仲良く教室に入ると、各自張り出されている席に座る。
なんとエンジュはイリアの後ろの席だった。
「イリア様と席が前後でとても心強いです。これからもよろしくお願い致します。」
「こちらこそよろしくお願いしますわ。」
(あー、、、ちゃんと笑えているだろうか、エロ目の変態極まった笑顔になってないだろうか、贅沢言うならエンジュたんの後ろの席がよかった、、、、)
「あ、でも、、、イリア様、もしよろしければ私と席を代わっていただけませんか?この通り目が悪くてちょっと黒板が見えにくくて。」
(神様ッ!!!!!!!!)
「もちろんですわ!」
イリアはちょっと鼻息荒めの声でそう言ってから立ち上がり無事にエンジュの後ろの席をゲットした。
「はぁ、、、入学早々ついてない。」
(そ、その声は、、、、)
びくっと肩を揺らして左隣を見ると、ラルフの姿が目に入った。
「ラ!!ルフ様、、、、お、お隣なんですね、よろしくお願い致します。」
「よろしくはしないけど席替え抗議しに行くのめんどくさいからまぁいいや、あんまり話しかけてこないでね。」
(相変わらずキレッキレェ)
このままだと本当に変な癖が生まれてしまいそうな心をぐっと抑えて。
「わかりました。」
という返事と同時に3人の女生徒がラルフの元に群がった。
「ラルフ様!一緒のクラスになれて感激です!」
「ラルフ様相変わらず美しい、、、私ウィンフリー出身で、、、」
「私は昔から秋には必ず家族でウィンフリーに旅行にでかけておりますの!」
(あぁ、、、怖い、そんなに不躾に話しかけたらルフ様の大魔王が降臨しちゃううう)
そういうイリアの心配を他所に、イリアはこの世界に来てから初めてのラルフの満面を笑みをみた。
「僕も皆さんと同じクラスになれてとても嬉しいです。あまり社交の場へ出ることがなかったので知り合いもおらず不安でしたのでこうやって話しかけていただいてありがとうござます。」
イリアの目が飛び出した。
(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)
続く




