12.おかえり、にゃん
今回から登場人物と説明と少しだけつけます。
イリア(明美)☆本作の主人公、42歳OL、現実の世界で全てを失い絶望したので転生信じてワンチャンダイブしたら色々あったけどめでたくお望みの悪役令嬢に生まれ変われた。にゃんと蜜プリが大好きなオタク。
にゃん☆明美の飼い猫、明美の転生先で神獣として生まれ変わる。
アルフォント☆イリアの兄で明美の最推し攻略キャラクター。
フレイ☆イリアのフィアンセ、幼い頃に一度ヒロインをイリアから助けている。
ーおかえり、にゃんー
イリアがこの世界に生まれて15年が過ぎた。
いよいよ明日から聖地にある全寮制のヴァルハラート学園に入学する。
今日は待ちに待った神獣授与式がある。
入学まで1ヶ月あるが、神獣を授かりに聖地までやってきた。
「聖地だぁ、、、」
震えた。
だってイリアにとっては聖地な聖地、憧れのヴァルハラート学園に入学できるなんて。
(震えるやろ、、、普通に)
9歳の時にフレイからもらったピアスはあの日以降肌身離さず付けていた。
もちろん、今日も。
学園スタイルは出来る限り公式に寄せたいイリアは、長いプラチナブロンドのストレートヘアをポニーテールにたばね、耳にはフレイから貰ったピアス。
おそらく公式のイリアもこのフレイからもらったピアスをより見せたくてポニーテールにしてたんだろうな。
制服は着崩すことなくキッチリと着て、リボンはピンクに黒レースのリボン。
(そういえば今まで忘れてたけどこのリボンってもしかして幼い頃にフレイ様からもらったドレスに合わせてこのリボンをつけてたのかな?)
愛しい、もうイリアが愛しい。
いやぁ生きて見ないと本当に細かいところまでわからない。
こんな装飾品一つ一つに意味があったなんてイリアになってみないと解んないものだなぁ。
とまた尊さに震えた。
(それにしてもモブ多いなー。フレイ様居ないかなー。顔見知り居ないと不安、、、リアーナも居ないし。)
もちろん、聖地までは護衛も居たしリアーナも居た。
しかしヴァルハラート学園は生徒以外は原則入れないので門まで送られて1人で向かわなければならない。
元庶民明美だが、15年間もみっちりお姫様として育てられたこともあって、すっかりリアーナに面倒を見てもらう事に慣れてしまった。
今日は入学する生徒はみんなヴァルハラに呼ばれているはず。
同じ歳のフレイももちろんいる。
が、人が多すぎて見知った姿は無い。
(イリアって確かフレイ様とクラス違ったような気がする。流石に今日は会えないか。)
「入学生はこちらから競技館へ向かってくださいー。」
案内係の声が聞こえてその方向へ向かう。
競技館とは体育館みたいな場所である。
時には体育の授業で、時に大会議で使用され、椅子を出し入れできる。
今日は授与式なので椅子がステージに向かって階段上に出されていた。
(1ーF、1ーF)
イリアは自身のクラスの席を探して、無事に座る。
隣に座った人をもしかして同じクラスの攻略キャラかもしれないと思ってドキドキしながら挨拶をしてみる。
「同じクラスみたいですね。私、イリア ルーン ドルスターです。よろしく。」
万が一の時の為の満面の笑みを浮かべて隣の人物をみた。
が、直ぐにその笑顔が崩れる事になる。
「あ、どうも。」
その一言だけで返し、直ぐに前に向き直った青色の頭のボサボサ男。
(満面の笑み損だわ、、、)
人生そう上手く行かないと何度も思ったが未だ懲りていないイリアは先程まで笑顔だった顔をむすっと口を尖らせて前を向いた。
(こっちが挨拶したんだから名前ぐらいいいなさいよね、モブが)
悪態をつきながら心で隣の人物に向かって舌をべーっと出す。
そうこうしているうちに神獣授与式が始まった。
イリアはこの日を本当に心待ちにしていた。
ついににゃんと再開できる日。
「イリア ルーン ドルスター、前に」
「はい。」
神父っぽいおじさん(イリアの感想)おそらく偉い神官っぽい人(イリアの感想)に名前を呼ばれてステージに上がる。
「手を前に」
「はい。」
ドキドキと緊張と早る気持ちを抑えながら両手を前に出す。
すると、白い光が大きくなり、手の上が火傷すんじゃないかぐらい熱くなった。
光が弱まると共に、ふさふさの薄いピンク色の長毛種猫の姿に天使の羽が生えた見覚えあるくりくりした赤い目の神獣が現れた。
「にゃん!!!」
『明美ぃ!!』
涙が溢れ出た。
ずっとずっと会いたかった。
トリップ会話もしていたし姿も見ていた。
だけどやっぱりこうやって直接名前を呼んで触って、抱きしめれるにゃんに早く会いたかった。
久々にのにゃんとの再会に号泣していると偉いっぽい神官はその様子を見て、腕を組んで暫く考えてから口を開く。
「イリア、貴方とその神獣の間には昔からの深い繋がりが見えます、また巡り合えて本当に良かったですね。」
「、、、はい。」
優しい神官からの言葉にさらに涙が溢れた。
にゃんと会う日まで一度も泣かなかった。
次流す涙は嬉しい涙って決めていたから。
「おかえり、にゃん。」
続く。




