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01.序章

閲覧本当にありがとうございます!!

読みたい転生小説が見当たらなかったので自分で書きました。

-序章-


転生したら乙女ゲームのヒロイン、、、じゃなくて悪役令嬢でした!?っていう転生物が流行っている今日この頃、その内容を軽く要約すると不慮の事故で亡くなった主人公の転生先がなんと生前自分がハマりにハマった乙女ゲームの世界で、しかもヒロインではなく、当て馬だったり最後は不幸になる悪役令嬢!でもでもなんとゲーム内では酷く振られたりするはずの攻略キャラが悪役令嬢である自分にやたら優しかったり自分と上手く行くフラグが立ったりヒロインは思ったより性格悪かったり、お家柄は大体王子の婚約者という設定である悪役令嬢特有の超裕福貴族だったり、自分はハマり尽くしたゲームシステムのおかげでどう振る舞えばいいかを記憶していたりとそういう設定を読むたびに「チートやん、、、」と思わざるを得ない内容であった。

そんな転生物に憧れる今作の主人公は現在



「悪役令嬢って元々異常にスキル高いやんけ、そんなん記憶持ったまま転生したら上手く立ち回れるに決まってるやん」



やさぐれていた。



中村明美(42)OL歴20年何か特化した取り柄もなく結婚もしていない。

二十歳を過ぎた辺りからぶくぶく太りだし、何度もダイエットを試みるものの、自堕落な性格故全てのダイエットでリバウンドを繰り返していた。

そんな明美にも心の支えになるものがあった。


『秘密の園の王子様』


恥ずかしいタイトルの乙女ゲームである。

攻略キャラは5人、全てのキャラクターがどこかしらの王子で有り、其々個性があってどのキャラも魅力的なことに加え、声優陣も今をときめくイケボの声優さんが起用されている。その為かゲーム内の音楽にも力を入れていて、メインソングに加え各キャラにキャラクターソングが有り、今の日本で乙女ゲームといえばこの『秘密の園の王子様』であった。

そしてもうひとつの心の支えが20歳の頃より飼い続けている猫である。

かなりの長生きで今年で22歳。

もうそろそろ心の覚悟はしてるけど、この子本当に元気なんだよね。

そう思って飼い猫の「にゃん」の首元を撫でる。

ゴロゴロと気持ちよさそうにする姿を見て気持ちが満たされ自然と目元が緩む。



「にゃんと蜜プリさえ有れば私はなんでもいいんだけどねー」



そう思い深い眠りに落ちた。机で。



「こういう感傷に浸ってる時って大概目が覚めたらにゃんと一緒にゲームの世界に、、、」


そう期待を込めてうっすらと目を開く。

するとそこに広がるのは。

洗濯をしなければと思いつつも「ご近所迷惑になるから朝に回そうーっと(←言い訳)」って昨夜サボった洗濯の山にまだ洗ってない食器、ズボラなのでメイクをする時どこででも出来る様にとあちこちに置いてある鏡、つけっぱなしのテレビから流れるアナウンサーの景気の良い大声。


「現実か」


当たり前である。

ただいつもと違う様子がひとつ。


「、、、にゃん?」


朝はいつも自分の近くで眠っているはずのにゃんが居ない。

とたんに目が覚めて最悪の事態が脳裏を過ぎる。


「にゃん!!!にゃーちゃん!?」


慌てて大声で呼んでみるがにゃんの気配はない。


「うそ、、にゃんどこ???」


お気に入りのテレビの後ろもキャットタワーにもトイレにもどこにも居ない。

嫌な予想が頭を過っては首を振って振り払う。

一頻り部屋を探して僅かの隙間が空いている廊下に出る。

そうしてふらふらと玄関に向かうと。

そこには静かに息を引き取ったにゃんが居た。


「、、、、っ!!!」


覚悟はしていた。

歳も歳だった。

誰に言っても長生きだって言われた。

白くて綺麗で自分とは正反対にスタイルも良く、猫にしては愛想も良いにゃんが明美の自慢だった。

大きな病気にかかった事も、大きな怪我をした事もなく、にゃんが居なくなるという未来なんて来ないんじゃないかとか思っていた。

そのせいか、覚悟してたとはいえ現実味を実感できていなかったのかもしれない。

明美は人生でこんなに泣いた事はないと思うくらい泣いた。

辛い時も嬉しい時も悲しい時も幸せな時も全部にゃんと過ごしてきた。

悲しいというより痛かった。

こんな激痛が走る辛さは人生で初めてだった。




いくら泣いても何時間にゃんを抱きしめても痛さは消えない。

実家は遠いし、仲の良い友人はみんな結婚してしまった。

痛みを分かち合える人も居ない。

辛い。

けど辛くても明日はやって来る。

時間は過ぎていく。

会社だってある。


「ちゃんと、埋葬してあげなきゃ」


そこからの記憶はあまりない。

1人でにゃんのお葬式をした。

見送ってくれる人が私1人でごめんね。と心で何度でも思う。



気が付けば数日が過ぎていた。

「ご飯最後に食べたのっていつだっけ?」

仕事に行く以外家では放心状態。

食欲もないしお風呂に入る気力すらない。

ただ仕事にだけは向かっている。

習慣って怖いな。

そう思うだけ自分はまだまともだ。と言い聞かせながら日々が過ぎていった。


それからまた何日かが過ぎて行った。

机に突っ伏したまま身体が動かない。

もう何日ご飯食べてないかな?お風呂に入ってないかな?

そういや会社も行ってないや。

ただ明美のスマホは一切鳴ることはなかった。

「会社で私が居ない事を気にする人って居ないんだろうな」

自分はこうやって死んでいくのかもしれない。

そう悟りを開いて目を閉じた。



朝。


「死んでないじゃん」


そう、人間とはそんな簡単には死ねない。

明美の場合普段から蓄えもあるのでちょっと痩せたかな?

ぐらいの変化では死ねない。



「こんなになっても死ねないって私相当肉ついてたんだな」



なんか開き直ってきたら久々にお腹が減った。

財布を持ち近所のコンビニに向かう。

コンビニに着くとガラスにデカデカと『蜜プリ』のポスターが貼ってあった。



「蜜プリ、、、私もうこの世界に入りたい、、、悪役令嬢っていうチートスキルと共にこの世界のキャラとして生きたい」


目頭が熱くなる。

にゃんの居ない世界に未練はない。

今までなんとなく生きてきたとはいえにゃんのご飯代やトイレ代、何かあった時の為とにゃんの為に必死に働いて生きてきた。

にゃんが居なかったらもうとっくに自分は死んでいたかもしれない。

でも今はもうにゃんがこの世界に居ない。

いっぱい泣いた。

枯れるほど泣いた。

唯一大好きだった10年付き合った男に若い子と浮気されて振られた時ですらこんなに泣かなかったのに。

痛い。

また身体が全力でいたい。

こんな痛いなら今ならいける。

そう思い明美はビュンビュン走っている大通り目指して猛ダッシュを始めた。


神様、できるだけ大きなトラックに当たって即死できますように。


明美の最後の願いだった。

大通りでは運良くいい感じの距離感で大きめのトラックが早いスピードで走っていた。


逝くぞ、まっててね、にゃん!


「次生まれ変わる時は最初からチートスキル持った蜜プリの悪役令嬢に生まれ変わりますようにぃぎぃぃ!!!!」


そう叫びながら一目散にトラック目指して走っていく形相は子供が見たら絶対泣いてたと思う。

あと親も泣く、絶対。

最後におじさんがあぶないぞ!と大声で叫んでる顔が目に入る。

人生、最後に目に映るのが知らないおっさんの慌てた顔。

そう人生なんてこんなもん。

そう思うと自然と笑顔が溢れた。


神様、乙女ゲームのヒロインは願いません。

とか謙虚ブってるけど本当はただチートな悪役令嬢になりたいと最後までゲス心を捨てきれない。

最後の願いは即死ですすみません。


2回目の最後の願いだった。


キキキィという脳裏に響く胸糞悪い音に人々の悲鳴、やった!死んだ!これで私も憧れの転生ライフ、、、、



続く

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