短編︰特異戦線〜クラスメイトの岬さんがちょっとエロい子だったので国を守ってみようと思います〜
「とりゃぁああああ!!」
掛け声とともに空から少女が降ってきた。それも大きな斧を振り回して。スカートがぶわっとあがって中のパンツが見えた。白だ。
「え、え、え??」
正直何も言えない。知らん黒服たちに追いかけられて路地に追い詰められただけでちびりそうなのに、空から女の子まで降ってくんの?? え、だって俺普通の一般人でここは現代日本なのに。
巨大な斧が電脳世界みたいに消えたり、背中の楽器ケースからスターウ○ーズのライトセーバーが出てくるの?
「もうだいじょーぶ!!」
少女が振り返って俺に話しかけてきた。どうやら助けにきたらしい。え……助け? 冷静に思えば見た事のある制服にメガネ。
「なん、で……岬さん?」
俺の言葉で少女……いや、岬さんも俺に気づいたらしい。「え、榊くん!?」なんて驚いていた。
というかキャラ変わりすぎだろ!? 高校一の文学少女岬さんが、どうして膝上スカートに斧振り回してライトセーバー持ってるんだ。
「お喋りはそこまでだ」
「ひぃっ!」
そうだ。追われてたんだ! ど、どうすればいいんだこの状況。あれ、相手の武器も進化してる!? ただの拳銃だったはずが岬さんの色違いのライトセーバーを持っている。
や、やる気なのか!? 残念なことに腰抜けて動けないから、この場は岬さんに頼むしかないけど! 別に怖い訳じゃなくて!
「あっれぇ〜〜? そちらの大将様はたいそうな臆病者なのねぇ。こうして鍵を追いかけ回すのに、出てきやしないなんて」
「黙れ!」
岬さんは俺から目線を外して黒服たちと向き合っていた。フォンッと鳴らしてライトセーバーを相手に向けるのがかっこいい。ライトセーバーとか斧とか色々聞きたいことはあるけど、まずは岬さんのかっこよさを目に焼き付けたい。なによりパンチラがもっかい見えると嬉しい。
「叫ぶだけでなんも出来ないの? 負け犬かな?? 可愛がってあげようか?」
「ふざけるな!」
なんという煽り方。女の子に可愛がってあげようか、なんて言われると男の自尊心なんて消え去ってしまう。向かってくる五人の黒服に、俺はもう恐怖を持っていなかった。あまりにも岬さんが格好よくてこうしてパンチラを期待するまでだ。
黒服に向けて腰を低くしたかと思ったら、岬さんはその場で高く飛び上がった。黒服たちの後ろへ着地すると左足を軸にくるんと回った。スカートもふわっと回る。そのままの勢いで、慌てて振り返る二人の背中を切ると三人目の足をひっかけて頭から転ばせ、四人目を袈裟斬りにする。
「くそっ!」
五人目……俺に一番近い男が上からライトセーバーを叩き落とそうとする。が、
「遅いよ」
既にその懐に岬さんは飛び込んでいた。そしていつの間にかライトセーバーを捨てていた手で、相手を背負投げした。黒服は思いっきり飛んで、後ろの黒い車へ激突した。
「ま、ざっとこんなもんよね?」
後ろ姿の岬さんは夕日を浴びて、まるで、そう。ヒーローみたいで。
そのままそれぞれに何かの機械を当てたあと、吹き飛ばした黒服の男を恫喝した。
「答えなさい。あなたの雇い主は誰?」
「……さぁな」
「そう、かわいそうにね」
元から答えることを期待してなかったのかもしれない。岬さんは同じように機械を当てて相手を昏倒させると、俺の方に向かってきた。
「だいじょーぶ?」
立ったままそう言う岬さんは、いつも教室の隅で本を読んでいる姿とは違う色っぽさにまみれていた。
「お、おう……」
とりあえず、これだけは言わなくてはいけない。
「あのさ、岬さん」
「ん、なに?」
「その……」
なんとも言いにくい。言いにくいけれど、言わなければ。
「この位置だと……パンツ見えそう」
太ももが黒いニーハイできゅっと潰されてるところとか、見えそうで見えない絶対領域とか。男の本能を刺激する雌の姿が、どうにも。
きっと殴れるだろうなぁと思わず目を瞑った。けど、岬さんの口から出てきたのは予想しない言葉だった。
「見たいの?」
「見せてくれるなら見たい。……あ」
やってしまった。思わず本音が。ちらりと岬さんの顔を見上げると、にやっと我慢できないように口角が上がっていた。
そのまま俺の俺の上に跨ってくるのほんとやめてくれませんか。理性消えるんですけど!? 岬さんはそのまま俺に顔を近づけてくる。いやキスされんの!? ぎゅぅと瞼を閉じると、甘い香りの後に耳に息が落ちた。
「榊くんの、ヘンタイ」
ぞわっと全身が震える。多分顔は赤い。まずい、まずいぞこれは。あと知らなかったけど岬さん胸おっきいな!?
「あれぇ……? 反応してる?」
「な、ななななにすんですかっ!?」
「あはは。敬語可愛いなぁ」
岬さんはすっと立ち上がると、「続きはいつか、ね?」と言って一歩下がった。そして俺に手を伸ばす。その手を取ろうとしたその時だった。
奇跡の風が、二人の間に流れる。それが、岬さんのスカートをめくった。白だった。フリルがちょっとついている清楚な下着だった。真ん中がきゅっと凹んでるのは本当なんだなぁ、と思いつつ。風がおさまってスカートが被せられるのを見ながら、さすがにこれは殴られるだろうと、上を向くと。
顔を真っ赤にした岬さんが手を差し伸べた格好で固まっていた。
「〜〜っ!!」
無理やり俺を立ち上がらせると男たちの亡骸の間を通って先に行く。やっちまったな。いやでも不可抗力だろ。そんなことを考えながら見送ると、岬さんは途中で振り返ってまだ真っ赤な顔で叫んだ。
「はやく着いてきて!」
いやだって何も言わなかったじゃん。そんな言葉は飲み込んで大人しくついていく。長いローポニーテールがふりふりと揺れるのを見ながら、その下のパンツのことを考えて、それからまた真っ赤な顔を思い出す。
うん、なるほど。煽り耐性なしの煽ってくる系少女か。なんて納得してしまう。
「なぁ、どこ行くんだ?」
「私たちの本拠地よ」
ちなみに、俺は文学系大人しめ少女岬さんに恋をしているんだが……まぁ今日みたいな積極的だけど耐性のない岬さんも好きだな。
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