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愛し合う2人

みんな誰しも気になっている異性にはよく思われたいはずだ。嫌に思われたい人の方が少ないだろう。だから自分をよく見せようと嘘ついてしまう事もある。いけないことだとわかっていてもついてしまう事は誰だってある。もちろんそれ自体は悪いことではあるし、みんなもそんなことはわかってはいるが嘘はついてしまう。でもつきすぎるとのちのち大変なことになってしまうかも・・・。


とある国のとある街のとある晴れた日。心地の良い太陽の光が降り注ぎ、人々の間を風が通り抜ける。世間ではアメリカとロシアの情勢が悪化し睨み合いを続けているがそんなことも感じさせない心地の良い日だ。そんあ中を鼻歌交じりに歩く男性が一人。彼の名はウィリアム=ワグナー。どこにでもいるようなアメリカ人男性だ。彼の様子をみればご機嫌であることなど一目瞭然だ。何故彼がご機嫌なのか、それは今向かっている場所に答えがある。ウィリアムはショー鵜ウィンドウに映った自分の姿を確かめ、襟が曲がってないか?靴は汚れてはいないかを何度も何度も自分がどこかの窓や鏡にうつる度に確かめていた。そして何度目かの確認を終えたウィリアムは足を止め最後にもうついてもいないだろうが服の埃を払い彼の『目的』へと歩み寄った。


「やあヴェロニカ。お待たせ。」


「あら、ウィリアム早かったのね。」


 そう。今日ウィリアムは最愛の彼女ヴェロニカ=アグーチナとのデートの日だったのだ。彼女はロシア人でたまたまこの国に来ていたウィリアムと知り合ったのだ。お互い初めて会った時から趣味や話がばっちりと合いその日のうちに付き合うことになったのだ。お互いに仕事が忙しいし、また国まで違うものだから会える機会なんて月に一回会えるかどうかだ。しかし二人の休みは奇跡的に毎回ばっちりと合うのでいつもこの国のいつものカフェで会うのがいつもの約束なのだ。ウィリアムはヴェロニカの目の前の席に座った。


「早かったって・・・君はいつも僕より先に来ているじゃないか。」


「私はいつだって30分前行動を心掛けているの。それに・・・。」


「それに?」


「はやく貴方に会いたいしね。」


 ヴェロニカの言葉に「まいったな」とウィリアムは照れくさそうに頭をかく。二人は付き合って数年になるが今も付き合った時と変わらず愛し合っている。2人が合う頻度が少ないせいもあるのだろうがお互いに尊重しあう姿勢が愛を続ける秘訣なのだろう。ウィリアムはウェイターにコーヒーを注文する。


「なぁヴェロニカ、今度の休みはいつになりそうだい?」


「会ってすぐなのにもう次の話をするの?」


「ああ・・・ていうのも理由があってね。」


 ウィリアムはポケットの中からチケットを2枚取り出した。


「ていうのもこの国で近々君の好きな作家の展覧会があるんだ。一緒にどうかと思ってね。でもこの展覧会は期間限定だからさはら僕らって仕事が忙しいだろう?早めに休みを取っとかないとこの展覧会にいけなくなってしまうからね。」


 ヴェロニカはウィリアムからチケットを受け取ると「そうね」と小さく笑った。先も言ったが2人はとても多忙で休みの日に仕事が入るなんてことが過去に何度かあったのだ。だからこそウィリアムは期間限定の彼女のお気に入りの作家の展覧会の日は必ず休めるよう取り計らっているのだろう。


「ごめんなさい、ウィリアム。私も今忙しいからこの期間中に休みが取れるかわからないわ。」


「そうだよね・・・。」


 残念そうにうつむくウィリアムを見てヴェロニカは明るく笑いかけた。


「それより今日を楽しみましょ!今日は久しぶりの休みなんだし!」


 そういうとウィリアムは「そうだね」と一言いうと元気を取り戻したようでコーヒーを飲みほしヴェロニカの手を取った。


「さぁ今日はどこへ行こうか!君とならどこでもたのしいけど。」


「もうっ!ウィリアムったら・・・。じゃあ私・・・。」


 携帯電話の着信音が2人の会話を止めるように鳴り響いた。鳴ったのはヴェロニカの携帯だ。ヴェロニカは「ごめんなさい」と一言謝り電話に出る。ウィリアムには話の詳しい内容までは聞こえないがおそらくは仕事の電話だろう。これまでにも過去にデートの途中で電話が鳴り、デートが中断されるという事が何度かあったのだ。ヴェロニカは電話を切ると残念そうな顔でウィリアムを見つめる。どうやらウィリアムの直感は当たってしまったようだ。


「急な仕事かい?」


「・・・ええ・・・今すぐ戻らなくちゃ・・・。本当にごめんなさい・・・。」


「仕方ないさ。」


 そのときまた携帯電話がなった。今度はウィリアムの携帯だ。ウィリアムは画面を見ると「僕もだ」とクスリと笑う。どうやらウィリアムにも仕事の電話が入ったらしい。仕事でデートが中断されてしまったのは2人とも残念ではあったが、急な仕事の連絡がはいるタイミングまで一緒だったのには心底おかしかった。


「じゃあ僕も仕事に向かうよ。君も頑張って。」


「ええ、貴方も。」


「それじゃあヴェロニカ、愛しているよ。」


「私もよ、ウィリアム。愛しているわ。」


 ヴェロニカはウィリアムをカフェで見送った。ヴェロニカはウィリアムが見えなくなると携帯を取り出し何処かへ電話をする。


「もしもし、ねぇ今日私デートっていわなかったっけ?電話はやめてっていったよね?」


 不機嫌なヴェロニカの対応に電話の向こうの人物は冷たく返す。


「仕方ないだろう、急な襲撃だったんだ。詳細は現地に向かいながら話す。では遅れるなよ、ヴェロニカ()()殿。」


 ヴェロニカは携帯を切るとため息をつきながら仕事へむかった。



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