恋愛相談はめんどくさい(上)
ズウィーカの誕生日パーティーから数日後、執務室で仕事をしていると。
「兄さん、相談があるのですがお時間いいですか」
と弟のツヴァイが訪ねてきた。
できるだけ人に聞かれたくないとの事なので近侍達がいない隣の応接室を使うことにした。応接室といっても滅多に訪ねて来る人が少ないので、半分物置になっているがツヴァイの話を聞くだけなら申し分ないはずだ。
お互いが向き合った状態で座りお茶を準備したところで、
「それで相談というのはなんだ」
と聞いたところ、ツヴァイは一呼吸おいて
「俺、実は好きな子がいるんだ!」
と言ったことで、俺は飲みかけてたお茶を吹き出した。
「そうかそうか、ツヴァイに好きな子かー」
「うん。そうなんだ!」
としおらしく見せるツヴァイを見て俺はめちゃくちゃ動揺した。ツヴァイは魔法の天才だ。新しい魔法をどんどん生み出し、さらに魔法戦闘においても国内最強であるクロエさんと張り合うレベルだ。学校でも魔法を専攻しているので魔法が恋人みたいなもんでこういう色濃い沙汰とは関係ないと思ってたのに、まじか。
仕方ないこうなったらかわいい弟をとことんからかいながら話を進める方向で行こう。
「それで、どんな子なんだ」
「兄さんも知っていると思うけど、リング家のヨハネ」
それを聞いた俺は、隣の執務室に大急ぎでもどった。
「ペテロ集合!」
「アイン様、なんでしょうか」
とめんどくさそうな顔をしたペテロを応接室に連れてき、話の続きを始めた。
「実はうちのツヴァイが、おまえの妹のヨハネちゃんが好きなんだって」
そう言うとペテロは10秒ほど固まって、
「いいんじゃないんでしょうか」
と完全に動揺しきって震えた声でそういった。
「おいおい、完全に動揺してるぞだいじょうぶか」
「えっと、ツヴァイ様なんですよね。うちの妹を好きなのは」
「はい、俺です」
そうツヴァイが言うとペテロは一息ついて、
「ああ、ツヴァイ様でよかった。アイン様じゃなくてほんとよかった」
「おい、それはどういう意味だ」
「いやー、アイン様みたいな人にうちの妹は任せられませんよ」
うわーひでーこいつ俺に尊敬の念とかないの。
「それでペテロ、ヨハネちゃんはツヴァイのことどう思ってるか知ってるか」
「兄さんそういうのはいいよ」
しかしそう言われても止まれないのがおせっかいおじさんのつらいとこだな~。
「すみません、妹は今反抗期でろくに話せてないんです」
「「あー」」
反抗期はつらい。ライアはあれだからないだろうけど、フィーアやズウィーカにきたときにはお兄ちゃんつらくて死んじゃいそう。横を見るとツヴァイも俺と同じ顔をしていた。
「それでだ、ツヴァイはヨハネちゃんのどこを好きになったんだ」
「兄さんとペテロさんと一緒で生まれた年が一緒て事で一緒にいることが多くて気づいたら好きになってたんだ」
たしかに俺とペテロは子供の時の腐れ縁でそのまま近侍についてもらったところもあるし、それが男女だったら確かに恋におちるもんかもしれない。
「「なるほど、なるほど」」
「兄さん、ペテロさんニヤニヤしないで!」
「いやー、青春だね!」
うんうんとペテロもうなずく。
「こうなったら、兄さん達の恋バナもきくからな」
こうして始まった恋バナは、ペテロに彼女がいるという初耳の事実をしり俺がダメージを受けておわった。
「それじゃあ、私は仕事に戻ります。アイン様も早く帰ってきてくださいね」
「ペテロ、今日ツヴァイと一緒におまえの家で夕食食べるから」
「「えっ?」」
ツヴァイとペテロはキョトンとした。
「アイン様がうちに突然来ることなんてよくあることですし、わかりましたよ」
ペテロは状況を飲み込むのが早かったが、ツヴァイは未だ理解しきれてないようで動揺していた。
「まー頑張れよ、ツヴァイ」
「ああ」
と心ない返事だった。
「それじゃあ、俺も仕事に戻るから」
「まって、兄さん。ひとつ聞きたいことがある」
真剣な顔をツヴァイはしていた。
「なんだ」
「もし、ヨハネと付き合って結婚したとき。それはアーサリオン王家としていいのだろうか」
俺たちは王族であるのだから、結婚して次世代に子供を残さなければならない義務がある。そしてアーサリオン王国は魔族と人族の多民族国家だ。だから、どちらの権力が強くならないようにする必要があるし外交においても結婚というのは大切だ。実は婚約者というのがいるらしいが、俺たちはしらない。
だからここで言うべきことは、
「だいじょうぶだ、うちは八人兄弟だ一人や二人恋愛結婚しても大丈夫だろ」
「そうかな?兄さんありがとう」
「おう」
「でも兄さんは、そもそも恋愛結婚できなそうだよね」
「うるせえー」