ダンジョン探索はめんどくさい(上)
少し、昔話をしよう。あのバカ父がちゃんと勇者やってた時の事だ。あのバカ父には、3人の仲間がいた。バカ父の故郷の国で最強の女性として世間からヴァルキリーと呼ばれる女戦士、齢10歳でその国の魔法使いの頂点に上り詰めた魔女。そして、隣の国の教国から派遣された聖女の3人が仲間だった。昔の父は相当にキラキラオーラを放っていたので3人から好意を示されてたそうだ。その後バカ母といざこざがあったそうだ最終的には仲が良くなった。今では、うちの国の重要な地位にいる。
なんで突然こんな話をしたかと言うと、第13次ライア工房爆発事件は全員軽傷で終わった。その事後処理も終わり、さらに今日は久々に仕事が昼過ぎに片付いたので、ちょっと遅いが食堂で昼飯にしようと思った。俺には実はライアの他に可愛い妹が3人いる。その一人のフィーアは料理が好きで食堂でいつも何かしら作っている。さらに頼めばなんでも作ってくれ、さらにその料理はどれも絶品なので、アーサリオン王国王宮3大名所(俺調べ)の1つとなっている。今日は何をお願いしようか考えながら食堂に入ると酔っ払いがいた。
「あっ、アイン兄さん食べに来てくれたの」
「あぁ、珍しく仕事が片付いてな」
「それで、今日はなんにします?」
「丼系の物をお願いしてもいいか」
「うん、任せといて!」
酔っ払いを無視して俺はフィーアに注文した。
「アイン、私を無視するな」
「無視なんてしてませんよ」
酔っ払いが話を降ってきたので仕方なく相手にする。
彼女の名前はクロエ・マギリア、旧勇者パーティの女魔法使いだ。かなり年はいってるが魔法で作った美貌は未だに老いを感じさせないが、実質ただの飲んだくれだ。
「にしては、アイン君態度が冷たくないか?」
「悲しい事にこんな真昼間から、酒飲んでる人に優しくする心は残ってません」
「安心しな、私は職務中だろうがいつでも酒飲んでるから」
と自慢げに言うこいつをクビに出来ないだろうかと真剣に考えてるのを他所に
「フィーアちゃん、焼酎オカワリ」
と酒を追加注文してた。
そんなクロエさんに呆れていると、
「はい、アイン兄さん。フィーア特製海鮮丼です!」
と美味しそうな丼が現れた。
あまりの美味しさに気づいたら全部たべてた。
「アイン、よく食べるね〜」
と聞かれたので、
「フィーアの飯が美味しいので」
返したら、
「アイン兄さん、何言ってんの!」
「いや事実だろ」
「もう、アイン兄さんたら」
とフィーアはなぜか赤面しながら、プンスカしていた。
■■■
軽くフィーアとクロエさんと雑談した後、明日の仕事少しやっておくかと思い
「それじゃあそろそろ行くわ」
と席を立ったら。
「アイン兄さん、ちょっと待って」
とフィーアに停められた。
「どうしたんだ、フィーア?」
「一緒にダンジョンに行ってくれませんか?」
とフィーアにお願いされた。
ダンジョン、魔素が大量に有る場所に生まれる迷宮。特別なもの以外は何度も入る事の出来て、さらに入る度に構造が変化する。そこで手に入るものは、希少度が高く高価で売買される。
「どうして、ダンジョンに?」
「今度のズウィーカの5歳の誕生日に料理を出して欲しいとパパとママから頼まれてどうせなら豪華なのが作りたかったんだけど、必要な材料がダンジョン産だから一緒に行って欲しいの」
「わかった、すぐ準備する」
ズィーカの5歳の誕生日だよ、うちの兄弟の末っ子だよ。その可愛い妹の誕生日のお祝いを可愛い妹に頼まれたら、やらないなんて言う兄はいないんだよー。
「はいはい、私も行くー!」
「酔っ払いはたったと酔いさませ!」
とクロエさんを一喝する。
俺は、自室に戻ると急ぎで準備をする。こういう時は、バカ親がなにかやらかすまでに行った方がいいと俺の勘が言っている。
■■■
「それで、どこのダンジョンなんだ?」
「世界樹の地下」
思わず息を呑む。本来の世界樹のダンジョンと言えば、上に登るタイプのものだ、強力な魔物が出るので難易度はA+級と呼ばれる高難易度ダンジョンだ。そして、世界樹の地下に存在するダンジョンは隠しダンジョンとも呼ばれることから、上のものよりもさらに高難易度のS級と呼ばれる。
本来ならば、熟年の冒険者でもきついと言われるS級ダンジョンだが、うちの国は、 元魔王軍の総本山と言うこともあってS級以上のダンジョンがそこらじゅうにあり、大抵の兄弟はクリア経験がそれなりにある。それに今回は、酔っているとは言えクロエさんがいるので大丈夫だと思っている。
「それで世界樹までどうやって行くんだ?」
「それなら、私に任せなさい」
とクロエさんは言って、指をパチンと鳴らすと世界樹にいた。
「転移魔法……だと」
転移魔法というのは、マーキングという魔法を使ったところに自由に行くことが出来る魔法だ。距離に応じて魔力の消費量が増えることから、あまり遠い場所には使えない。
そして、世界樹はめっちゃ遠いのでここまで転移魔法で3人連れていくなんてやっぱクロエさん凄いと思ったら、脇でゲロ吐いてた。
「それじゃあ、アイン兄さん、クロエさん。ダンジョン探索行くぞー!おー!」
ダンジョンに入ってすぐフィーアが掛け声をかける。
「おー」
と声を出す、クロエさんの手には一升瓶があった。
……大丈夫かこのダンジョン探索。