自由気まますぎる両親はめんどくさい
勇者と魔王が恋に落ちて最終的に結ばれる物語てよくあるだろ。俺から言わせてみれば、こういう物語は大抵がクソ。
おっと君はそういうのが、好きなのか済まなかった。頼むから石を投げるのは辞めてくれ。
根拠ならある、その前に自己紹介をさせてくれ。俺の名前はアイン・アーサリオン。アーサリオン王国第一王子にして、勇者ソルと魔王ルナの間に生まれた。つまるところ、勇者と魔王が結ばれる物語の被害者だ。
根拠となった俺が生まれてから25年分の愚痴を聞いて欲しい。第1にあいつらは常にイチャついてる、運命の夫婦だがなんだが知らんけどな、とりあえず子供の前でイチャつくのは、百歩譲っていいとしよう。でもな、国務に支障をきたすのはやめてくれ、国が崩壊する。次に政治問題、魔族と人族の共同国家ていうのはめんどくさい。魔族派、人族派みたいな派閥はできるし、ちょくちょく争いは起きるしめんどくせえ、仲裁するこっちの気持ちにもなってくれ。最後は、外交問題だ。そもそも魔族というのは、人族最大の宗教で言えば、敵なのだ。多国からよく見られないことも多く、戦争が起きそうになる事も少くはない。わかったか!クソだろ!
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ほら、今日だって俺が自分の仕事と昨日の両親の仕事の残りを処理していた。そもそも俺が、昨日の両親の仕事をしてる時点でおかしいのだが、日常茶飯事すぎて怒りを通り越して無心で作業してた。
そんな時だった、俺の執務室のドアが勢いよく開けられ、両親の側近のロゼッタが入ってきた。
「アイン様、大変です!」
「はぁ、なにがあった」
ロゼッタが俺の所に来るという事は、十中八九父もしくは母、或いは両方がなにかやらかしたという事だ。俺は、自然と口からため息がでた。
「ソル様とルナ様が王宮から逃げ出しました!」
はああああああああ
逃げ出した?ふざけてんのかあの両親は、俺がアイツらの仕事全部肩代わりしてるというのに、アイツらは呑気にお出かけだとふざけんな!
「発信機は?」
王族は全員、王族の証しとして指輪を持っている。指輪についている宝石には居場所を特定する魔法が掛けられているので、発信機として良く使われる。
「妨害魔法がかかってました」
「それで、アイツらの仕事で最優先のものはあるか?」
ロゼッタは申し訳なさそうに、
「ソル様宛の隣国からの連絡の返信を書いてません」
と言った。
「まじで?」
「まじです」
あぁくそ!隣国とは、今仲がギクシャクしてるんだよ、ここで連絡が遅れでもしたら戦争待ったなしなんだよ、ふざけんな。
「俺の私兵団で動ける奴を全員、捜索に回せ」
と俺は、近侍達に指示を出す。
「俺も、急ぎの仕事を終わらせたらすぐ行く」
30分で仕事を終わらせた。緊急の仕事の中に食料危機に陥りそうな村があるので、食料援助を欲しいとかいう内容があった。
1秒でも早くやらなければいけない仕事なのに、1日ほっといて俺に回すとか馬鹿なのか、あのバカ親は。
とりあえず、羽を使って空から捜すことにした。人と魔族の外見的違いとして、羽、角、尻尾がある。そして人と魔族のハーフの半魔は、その身体的特徴のうちどれか1つがない。俺は尻尾がないが、その分魔族と比べても立派な羽がある。飛行速度なら、国内で5本の指にギリギリ入るくらいの俺が、王都を上から捜せばすぐ見つかると思った。
結果1時間もかかった。アイツら、郊外の草原で仲良くピクニックしてやがった。ムカついたので、空から下に全力で蹴りを加えてやる事にした、歯食いしばれよ。
オリャーー!
草原に軽いクレーターができた。
両親はどこにいるか辺りを見回すが見当たらない。
「おい!アイン、せっかくママが作ってくれたお弁当が土に汚れるだろ!」
と上から余裕で弁当を完全に守り切ったバカ父が話しかけてきた。
「朝から、一生懸命作ったんですからね。そうだ、アインも食べますか」
とバカ母、
「うるせぇ」
と俺が言うと、
「あら、やだ反抗期かしら」
「まったく、アインにも困ったもんだ」
困ってんのは、俺だよ。
「とりあえず、仕事が溜まってんだよ」
「嫌だね、今日はママとピクニックするって決めてんだから」
小学生かおめぇは。このままでは、埒が明かなかったので、転移魔法で執務室まで無理矢理連れてきた。
そしたら、
「あのね、アイン。さすがに転移魔法は、ママずるいと思うの」
と言われたが無視して、
「お説教は、後です。とりあえずこちらの書類を処理してください」
とバカ親達を仕事が終わるまで、自分の仕事をしながら監視した。
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二人とも仕事が終わったので、疑問に思った事を聞くことにした。
「それで、なんのために外に出掛けたんだ。さすがにピクニックだけが目的な訳ではないだろう」
バカ親達は、仕事が嫌になって逃げ出すことは毎回のことだが、逃げる先は城内の兄弟のところだ。今回みたいに、城外に逃げるには、なにか理由があるはずなのだ。
父と母はちょっと照れた素振りを見せて、
「いつも、アインばっかに仕事を押し付けてばっかていうのは申し訳なかったからよ」
「なんか、プレゼントあげればいいかなと思ったから買いに行くことにしたの」
両親が俺に申し訳ないと思ってくれたなんて知らなかった。
「そして、これがプレゼントだ」
と、父さんは俺に向けてラッピングされた箱を俺に投げた。
「開けていい?」
「うん」
中には、透き通るような青色の宝石が着いたピアスが入っていた。
「父さん、母さん、ありがとう」
「感謝するのはこっちの方だ」
「そうよ、ただ私たちはアインに日頃のお礼をしただけですから」
「でもね、俺に感謝してるのであればちゃんと仕事してくれよ」
この後、俺はバカ親に1時間に渡る説教をした。俺が、プレゼントごときで騙されると思うなよ。