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無法都市の剣弾使い  作者: 中邑わくぞ
デッド・オア・クック
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デッド・オア・クック 9


 『先にボリドニア選手の料理に行ってみましょうっ! こぉれは⁉ どうやらマリネのようですがぁ~~~~!? 一体何を使っているんだァ!? やけに毒々しい色をしているがっ! もしかしてこれは何らかの非合法食材でも使っているのかッ!? おっとこの街は無法都市ッ! 外ならいざ知らず、ここにはそんなものは存在しなぁ~~~~~い!』

「いいだろう! 説明してやろう! この私の渾身(こんしん)の料理! これまでの人生をぶつけた魂の一品のっ!」

「テメエの人生はしこたまマズい料理作るためにあったのか? ずいぶんと前衛的な人生だ」


 スカリーが飛ばす皮肉などどこ吹く風。得意げにボリドニアは解説を始める。


「……そう、今回の鍵になるのは――――これだっ!」


 携えていた籠から出てきたのは、美しい緑色をした、ニシキヘビだった。


「使っているのは蛇肉! 今朝仕留めたばかりの新鮮なモノだ! しかも(しめ)たのは大会が始まる前っ! 鮮度という意味ではこの上ない! さぁらに! 使っている野菜はすべて南部から仕入れ、私自らが厳選した! それだけではなく! マリネ液に使用するのは普通はオリーブオイルだが、今回使用したのは豚油! 極上の深みを提供してくれるはずだ! 名付けて! 『始原(しげん)のマリネ』! これから蜥蜴族達に大人気になるであろう一品!」


 熱狂! 熱狂! 熱狂!

 観客席から咆哮と、それに勝るとも劣らない足踏みの音!

 それはすべてが蜥蜴族によるもの。

 彼らにとって蛇肉はごちそうである。特にニシキヘビのような大型の蛇はかなりの栄養価が期待できるうえに、毒も持っていないので安心して食べられる。

 滅多にとれることがない代わりに、もし手に入ったのならばその日はそれ以外考えられなくなってしまうぐらいには。

 それを贅沢に使用した皿は蜥蜴族にとっては極上の一品なのだ。あくまで蜥蜴族にとっては、であるが。


『すでに会場の一部は大興奮! なんでそんなことになるのか俺にはさっぱりわからなぁい! だけど盛り上がってるのはいいことだ! しょぼくれてるよりもいいことだ! そしてそしてぇ! ハンリ選手のほうは一体!? おおぉっとこれはぁ! これは本気なのか悪ふざけなのかぁ!? 一体どうしたハンリちゃん!? ここにきて天然ボケなのかァ!?』

「もともと世間ずれしてないタイプだが……正体を見極めるまではなんともいえねぇ」


 二人の反応は当然といえば当然。これまで『辛さ』の一点突破で勝ち抜いてきたハンリの決勝戦の料理が、


『ここでプリンだとぉ~~~~~!? どんな考えなんだ!? それとも考えなしなのかぁ!? マイデッセ選手の脳足らずが移ってしまったのかぁ!』


 ハンリの皿に乗っていたのはデザートに供されるべき――プリンだ。

 濃い黄色の本体に、こげ茶のカラメルソースがかかり、食欲をそそる外見をしている。

 見た目は問題がなさそうに見える。見た目は。


「はい! プリンです!」


 自信満々にハンリは答えるが、観客たちが求めている答えではない。

 一体、どのように相手の意識を刈り取るのか。それが群衆の関心点なのだから。


『ごくごく普通の見た目からぁ! きっと秘めてる殺人級の威力! その正体はいったいなんだァ! まさかプリンの振りした爆弾ってことァないだろぉ~~~~か!? それなら顔の下半分が吹っ飛ぶぞぉ!』

「使ってるのは卵と牛乳とお砂糖です!」


 即答である。

 その速度から、嘘をついている可能性はかなり低い。考える時間などないぐらいの即答だったのだから。


『こ、これは本当に、本当の本当に『プリン』なのかァ!? なんかそういう名前した古代文明の拷問道具っていう可能性は残っていないのかァ!? どっちかというと、そのほうが安心できるんだけどぉ!』

「そこまで考え方が突き抜けちまってる辺り、俺もテメエも毒されてるな」

『どぉ~~~~~やら! 決勝戦にしてよくわからない戦いになりましたぁ! かたや本気のマズい料理! かたや大会趣旨に反するような普通の料理! 一体どうなってしまうんだ! この先の展開を予想できるのは予言者だって無理だろうぜ!』

「食わなきゃいけないから結果は同じだろうけどな」

『その通りっ! 食ってしまったら結果は出るんだっ! ……お互いに試食開始!』


半ば自棄になりながら司会は進め、選手二人は自分の料理を口にする。


「完璧な仕上がりだ!」「おいしいよ!」


『もう自棄だこの野郎どもッ! とっとと実食ゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~‼‼』


 ハンリはマリネを一口、そしてボリドニアはプリンをひとさじ。

 なんの躊躇もせずに口に入れ咀嚼し、


 「う! 生臭ぁい!」


 先に感想を漏らしたのはハンリ。やや太めの眉が寄せられ、眉間にしわを作っている。


 『流石の味覚音痴のハンリ選手もこれは効いているようだァ! ボリドニア選手のほうはどうだァ!? ……んんっ!? これはどうしたボリドニア選手っ! 滝のような汗をかいているっ! 何が起こっているんだ!?』

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