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無法都市の剣弾使い  作者: 中邑わくぞ
デッド・オア・クック
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デッド・オア・クック 5


『八人の蛮勇(ばんゆう)持ち共が淘汰(とうた)されてぇ! 半分の四人になったァ! つまり威力は半分になったってことかァ! 全ッ~~~~~~然ちっが~~~~~うっ! そんな楽観的な考えは今すぐに捨てろっ! 気を抜いたらお前死ぬぞっ! 半分になったんじゃなくて! 二倍凝縮(ぎょうしゅく)されてしまったんだよぉ! これから先の地獄はもっとやべえ! どのくらいヤバいのかは自分の目で見て確かめろっ! もしくは舌で確かめろっ‼ こっから先は試食も可能だァ~~~~~! 命知らずはやってみな! (あご)が吹っ飛び脳みそ溶けちまうわッ!』


 ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ‼‼‼‼‼‼


 なぜか観客は盛り上がっていた。

 目的さえも不明な、ただただ犠牲者だけが増え続け、彼らには何ら利益をもたらさないというのに、声を張り上げ、足を踏み鳴らし、腕を振るい、(つば)を飛ばす。

 機に(さと)い何人かは屋台を設置し軽食を売り始め、優勝者の予想を始める者だっていたし、なんならすでにオッズまでが決定していた。

 マズい料理を食わされるだけならば、流れ弾で死ぬこともなく、バスコルディアの住民からしてみたら、この上なく安全な見世物として機能する。

 倫理的な問題はさておき。


 『さあさあそろそろ行ってみようかァ! 二回戦! またの名を準決勝戦第一試合! 血溜(ちだ)まりで笑う赤い髪はッ! きっとお前をぶち殺すッ! マイデッセ~~~……アフレリレ~~~~~~ン!』


 酒瓶やらゴミと一緒に罵声が飛び、試合会場に降り注ぐものの、悠々と入場してきたマイディまでは届かない。下手に刺激して自分たちのほうに矛先が向くのが恐ろしいため無意識のうちに手加減しているのだ。観客自身は気づいていないが。


『そしてぇぇぇぇぇぇ! もう一人は蜥蜴族(リザーディ)どもに飯を提供する狂気の料理人! ボリニドア=クークレ~~~~~~! 明日の夕食はお前の頭をソテーしてやるからなぁ!』


 コックコートに身を包んだ男が一歩踏み出したのに合わせて、観客席の蜥蜴族たちが一斉に雄たけびを上げる。

 古来より勇猛で知られる彼らの咆哮は、時として矢の雨よりも有効な戦術として知られる。そんなものが直撃した周りの観客は三割ほどが気絶していた。


『一回戦のマイデッセ選手は食べ慣れない食材を使用することによりィ、触感を攻撃してノックアウトォ! 対するボリニドア選手はゾンビ牛肉を贅沢(ぜいたく)に使用したフィレステーキによって嗅覚を破壊ィ! お互いに得意料理は違っているがぁ! 攻め手は十分! 殺意は二十分! 意識を保ってられるのはあと三十分! はじめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼‼』


 二人の料理人は同時に走り出し、調理が始まった。

 相手の息の根を止めんとする――――悪魔の調理が。




『始まってしまいました第二回戦! どちらも一回戦は余裕の勝利を収めています! 今のところは食材選びのようですがぁ~~~~⁉ おおっとぉ!? これは二人ともが生け簀(いけす)に向かったぁ‼‼』

「どっちも食材に魚、もしくは水棲(すいせい)動物を使うつもりってことだろうな。マイディの奴が何をするつもりなのかは知らねえが、ボリドニアのほうは予想できる」

『予想がつくなんて流石は解説のスカハリーさん! それで!? 一体何を作るんでしょうかぁ!? 外してしまった場合は恥ずかしいですね! 自害しますかぁ⁉』

「……髑髏鯰(どくろなまず)。劣悪な水質でも生きてられるしぶといヤツなんだが、蜥蜴族がナワバリにしてる湿原には滅茶苦茶いやがる。こいつを主食にしてる部族もいるぐらいだ」


 生け簀の中――――その底には層のように泥が溜まり、床のようになっている。

 その中に銛が突き立ち、引き上げられると同時に黒々とした物体を引き上げた!

 

 澱んだ水中から乾いた空中へと引きずり出された黒々とした塊は尾を振り回しながら抵抗するが、振り下ろされた棍棒によって大人しくなる。


『見事な手際だァ! 普段から蜥蜴どもの注文を聞いているだけのことはあぁ~~るッ! しかしスカハリーさん! 鯰程度で相手をノックダウンさせられるのでしょうか!? 仮にも相手は普段から生肉食ってそうなマイデッセ選手ですがぁ⁉』

「テメエは食ったことねえだろうが、あの魚類はなかなかパンチが効いてる。鼻が利かない蜥蜴族の中でも好みが分かれるぐらいにな」

『蜥蜴野郎も食わないような代物を食べさせるつもりなのかァ~~~~~! これはデンジャラス! どうせまともな料理なんて期待してなかったけどぉよぉッ! おまえら自分で食べることを考えてるのかァ⁉ それとも衆人環視の下で自殺したいだけなのかぁ!?』


 (あお)り倒す実況とは対照的にスカリーは静かに観察する。

 奇妙な話だ。

 髑髏鯰を使用するのは湿原に住み、しかも武力も弱く、狩りの成功率も低いような弱小部族たちぐらいのはず。当然彼らは勢力圏に引きこもっているような状態が続いており、ごく一部の限られた交易しかない。

 

(それなのに、なんで人間なんぞが髑髏鯰なんて知ってる? しかも食材にしっかりとあるってのも気になるわな)


 どうやら単純なバカ騒ぎではないようだ。

 くだらない乱痴気騒ぎだと思っていたのだが、少なくとも何らかの意図が働いているらしい程度は気づく。

 他の人間はどうなのか知らないが。


『おぉっ~~~~~とぉ‼‼ マイデッセ選手、豪快にデカい魚の首を切り飛ばす! 普段から人間の首を斬り飛ばしまくっている成果がここに結実したのかぁ!? とりあえず山刀で料理するのはやめてくれぇ!』


 つつがなく調理は進む。

 様々な思いを飲み込みながら、熱狂を拡大させながら。

 悪臭を放ち、血液が飛び、肉片が舞いながら。

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