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無法都市の剣弾使い  作者: 中邑わくぞ
デッド・オア・クック
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デッド・オア・クック 4


『こぉれはいったぁ~~~~~~い!? 丸のままサボテンだァ⁉ 火を通すどころかァ、(とげ)さえとってないぞぉ~~~~! これが料理と呼べるのかぁ⁉ それとも地面に生えているということはすでに地球によって調理済みだとでも言いたいのかぁ~~~~!』

天狗(てんぐ)サボテンだな。外来種らしいが、俺もよくわからん。蜥蜴族(リザーディ)が水分補給の時に丸ごと食ってるのは見たことある。痙攣(けいれん)してたけどな」

『対してこちらはぁ~~~~⁉ ミミズの山盛りだァ~~~~~~⁉ 俺たちはモグラじゃないぞぉ!? それともぉ、ドワーフってのはモグラだったのかぁ!? どっちも地面掘ってるから一緒ってことなのかァ!? 乱暴すぎる理屈だがァ、筋は通ってる! 明日からドワーフのことはモグラって呼ぶぞぉ!』

「スパゲティにイカ墨とトマトであんな色になるとは……嫌な方向に色彩感覚を活かすんじゃねえ。見たただけで土の味がしそうだ」

『では実しょ~~~~~~~くっっっ!!!!!』


「オボボボオボボボボボボ‼‼」「アババババババババババッ‼‼」


『勝者~~~~~! 山盛りミミズ! 土とか食わせとけばいいんだろ!? ほら! お前も食うんだよっ! 俺も食ったんだから!』

「だんだん面倒くさくなってきたな。すでに選手名じゃなくて料理名じゃねえか」

『次の試合行ってみましょう! 一回戦最後!』

「八人しかいないからな。つーか八人も参加しようと思ったのが理解できねぇ」


(ついでに、なんでハンリが参加してるのかが一番わからねえ)


 そう、参加者の中にはハンリの名前があった。もし、これがなかったのならば、すでにスカリーは逃げ出していたことだろう。

 護衛を引き受けている少女、どうせ会場にいるのならば、見渡せるこの席のほうが周囲の状況もよくわかる。そういった判断によっていまだに解説役を甘んじて受け入れていたのだが、何の因果か縛り付けられている。


『一回戦最終戦っ! かたや狂気の名を冠するに十分すぎるほどの騒ぎを起こし続けるトラブルメーカー! 馬鹿と天才は紙一重! ではどっちにも属するなら一体なんだ⁉ それは俺のことだ! ビエン~~~~~~ティ~~~~~~!』


「クハハハハハハッ! 今日こそ一度会ったら三年目っ! 『剣弾(ソードバレット)』のほうは無様(ぶざま)にも逃げ出したようだぁが! 『双山刀(ダブルマシェット)』は出場しているのだから! 復讐を果たしてくれるわっ! この私自らの手によってェ! 執行! 実行! 敢行!」


『そしてぇ~~~~~~! この場にはというかバスコルディアには似つかわしくないぞぉ! 一体どこから(さら)ってきやがった! なんであのドグサレ教会なんぞに所属してるんだっ! 見た目は天使だけど実は凶悪な一面を隠し持っているのかぁ~~~~~~⁉ かわいい顔しているけど油断大敵っ! ハ~~~~~~~ンリ~~~~~~‼‼』


「よ、よろしくお願いします」


 高笑いを上げ続けるビエンティとは対照的に、ハンリは緊張してるようだ。

 視線は下を向いていないが、その表情は硬い。


『では両者試食~~~~~~!』


 二人の持ってきた皿から蓋が外され、その姿を現す。


『ビエンティ選手の料理はァ~~~~~~~⁉ 見た感じオレンジ色の目玉だァ! この異常者は話を聞いていたのかぁ~~~~⁉ ここは標本の展覧会じゃないぞぉ! もちろんそれはわかっている! その上でやらかすのがこの男だァ!』

「馬鹿めっ! そんなことだから凡人どもの感性は腐っているのだっ! これは私が心血注いで創り上げた次世代の保存食! 名付けて! <矮小なる恵みリトォル・カンパジション>! 行軍だろうが遠征だろうが潜伏だろうが! どんな状況においても摂取することに全く障害を引き起こすことなく! さらには栄養価も高く! しかも保存性も高いっ! 過去の携行食料はことごとく廃棄(はいき)されるであろうっ! まさに私の頭脳と技術とひらめきによって人類の――」

『そしてぇ~~~~~~! ハンリ選手の料理はァ⁉』

「話を聞けえぇぇぇぇぇぇ‼‼‼ 凡人(ぼんじん)っ‼‼」

「これです!」


 ビエンティは叫ぶが、その場にいる全員が――ハンリでさえも無視して次へと進む。

 

『んん~~~~~~~⁉ これはオムレツぅ⁉ どうやらこっちもルールを理解していなぁいっ! 完全なる泥沼の様相を(てい)してきたァ~~~~~‼‼ 勝者は決まるのかぁ!? 言っておくがァ、決着がつかないのなら両者失格の上で罰ゲームが待ってるぞぉ!』

「大丈夫! ただのオムレツじゃありません!」


 実況に返しつつ、ハンリは目の前の卵料理にナイフを差し込む。

 切り開かれた黄金から、中身のソースがこぼれ落ち、その姿を現したが――――、


『うぉっと~~~~!? オムレツから飛び出してきたのは真っ赤な真っ赤な地獄の炎みたいなソースだぁ! 見ただけでわかぁる! こいつはめちゃくちゃヤバいやつぅ~~~! かわいい顔してこいつはとんだ伏兵がやってきたぁ! この子だけは普通だと思いたかったぁ! でもやっぱり駄目だったぁ! 教会にまともなやつはいやしねえ! 全員まとめてくたばってくれぇ~~~~!』

「ここにいるやつらも同じ穴の(むじな)だろうが。料理がヘタクソなぐらいはかわいいもんだろ」

『んでぇわ! 試食に入ってもらい! ま! しょう! 気持ち悪いオレンジ目玉ヴァァァァァァッッサスッッッ! 地獄ソースオムレツ!』


 絶叫する実況に押されるようにして、二人ともが自作の料理を口に含む。

 

 「こ、こ、こ、こここここ、これこそ! 次世代の携行食料の革命だっ! 今度百年のスタンダード! 自分の才能が憎いッ! この頭脳の『両者とも試食はオーケーのようだぁ! 自分が作ったのでくたばるようなヤツは三流以下! 相手をぶっ殺してから俺は死ぬぅ~~~! そんな気合が感じられるぞ!』だという……(さえぎ)るなぁ! 凡人っ!」

「アホがちゃんと自分が耐えられる代物を作ったほうが驚きだぜ」

「わたしも()めてよ! スカリー!」

「あー……、すごいすごい。……どんどん悪影響を受けてやがるな」


 赤毛のシスターを想起させるような言動に思わず眉をしかめながらため息を吐く。

 あまり手本にしてほしい人物ではないのだが、いつまでも常識的すぎるのも困る。この街で生きておくつもりなら。


『ではァ! お互いにぃ~~~~~~~! 実っしょぉ~~~~~~~く!』


 ハンリはこわごわと目玉をつまみ、ビエンティは自作のゴテゴテしたスプーンでソースがたっぷりかかった卵を掬い、両者が同時に口に入れた。


 沈黙。

 なぜか観客も実況も言葉を発しないまま、最初に声を上げたのはハンリ。


「あ、意外においしい」

『……なんとぉ! これは予想外~~~~!? ハンリ選手ケロッとしているぅ!? 単なる強がりなのか、それとも本当にうまいのかっ! それとも単純に舌が狂っているのかぁ~~~~! 可愛い顔して意外な伏兵ッッ! 勝負の行方はビエンティ選手のぉ~~~~……あれ? ビエンティ選手? ビエンティ選手!? おい馬鹿どうし…………し、死んでるっ⁉』


 一口だった。

 ビエンティが食べたのは一口。たったそれだけなのだ。

 しかし、声を上げることもなく、痙攣することもなく、ただただ静かに、白目を向いて、口の端から赤い液体を垂らしつつ――――立ったまま気絶していた。

 持っていたスプーンが落ち、甲高い金属音が響き、遅れること数十秒、やっと意思を失った科学者は顔面から地面に倒れ、動かなくなった。


『決ッッ着ぅぅ~~~~~~~! 信じられない事態だァ! やはり教会関係者にロクなのはいねえぇ~~~! 少女の中に秘められているのは破壊的な殺人料理の可能性だったァ~~~~~~! 今大会の台風の目は彼女になってしまうのかァ! ちっとは他のやつらも気合を入れ直せッ! このまま全員ノックアウトしてやるからなァ~~~~~!』

 

 戸惑うハンリをよそに、実況は盛り上がる。観客も予想外の事態にボルテージは上昇し続けている。

 ただ、二人ほどはこの事態に対して冷めていた。


「ああ……ハンリちゃんの料理の犠牲者がとうとう……神よ、わたくしをお救いください。あれだけは嫌です」

「こりゃ、ハンリは台所に立ち入り禁止だな。命がいくつあっても足りねえ」

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