004
「お前らー、来週は中間テストだからな。しっかり勉強しておくように!それじゃあ日直」
「きりーつ、れー」
「ありがとうございました」
武田とのごたごたがあった翌週、先生の発言でようやくテストのことを思い出す。
そういえばもうこんな時期なんだなぁ…
「うえぇ…勉強したくない…」
「亜未ちゃん、頑張ろう?」
すぐ傍には委員長にすがっている足達とそれを励ましている委員長がいた。
委員長は元々成績優秀だし定期テストだからといって身構えることはないだろうけど、足達にとってはそうではないようだ。まぁ…僕もそんなに余裕があるわけじゃないけども。
「うぅ…しょうがない、部活も休みだし勉強するか…楓、教えてくれる?」
「うん、私でよければ」
「ありがとー!さっすが私の親友の楓だっ」
「やっ、亜未ちゃんくすぐったいってば!あははっ」
足達は委員長をがしっとハグして両手の指でわき腹をくすぐっていた。それに委員長も抗っているようだが、分は悪そうである。
さっ、このままこの声を聞いてたい気もするけど…僕も帰ろっと。
机の中の荷物を鞄へと入れると、そのままその場を立ち去ろうとする。
「ちょっと平良、どこ行くのよ?」
が、すんでのところで足達に呼び止められた。なんだか最近良く呼ばれることが多くなったと思う。僕にとって良いことなのか悪いことなのかはさておくが。
「…え?帰ろうと思うんだけど、一応勉強しないといけないし」
「じゃああたし達と一緒に勉強しようぜ~」
勉強に誘われた。最近昼食を良くとっているし少しは仲良くなれているという事なんだろうか?
「わ、わたしも平良くんと一緒に勉強したいな」
「委員長も?…なんでまた僕なんかと」
「だって平良、数学だけは楓と同じかそれ以上に得意だろ?」
「うんうん!最初のテスト、平良くん満点だったもんね!」
高校入学直後のテスト、他の教科はまぁ平均前後くらいであったけど、数学だけは満点が取れた。元々数学みたいな公式さえあれば解ける問題等は好きだし、得意なのは確かだ。
「まぁ…委員長と同じくらい得意かは別として、数学は好きだけどね」
「じゃあ決まりだ!私と楓に数学教えてくれ!そんでその代わりに楓がその他の教科を平良に教えてくれるから!」
「えっ!そうなるのっ!」
委員長も足達の提案に驚いていた。そこまでは特に考えていなかったらしい。
「いいじゃん楓!減るもんじゃないし!」
「いや、そりゃ減るじゃなくて委員長の負担が増えるだけでしょ。それに足達だけ何もしてないじゃん」
「うーん、じゃあ無事あたしが赤点回避したら楓と平良の分の弁当作ってやるよ!」
「っ!?」
その言葉に過剰に反応しているやつが俺の斜め前にいる。そう……武田だ。俺からは見えているが、足達と委員長の背中側にいるため、二人には見えていない。そんな武田の反応を前にして流石に能天気にわかった!とは言えないだろう。……絡まれるのも面倒だし。
「……武田も一緒に混ぜてやって良いか?」
「武田?なんでまた?」
「…色々あるんだよ。とにかく、それなら別にいいよ」
これで武田にまた変に絡まれることもないだろう。いや、これでも見通しは甘いかもしれないが。
「ふーん、まっいいか!じゃあ図書館でも行こー!」
「そうだね。いこっ、平良くん」
「…うん。ほら、いくぞ武田」
「…………お、おぉっ!」
足達と委員長が連れそって教室を出て行く。
僕もその後に続きながら、通りすがりざまに武田の肩をポンッと叩いた。武田は数秒遅れて反応して急いで僕たちを追いかけてきた。