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幾世を旅する者 ‐‐ 悪戯 ‐‐


最初に死んだのは 日下部陽としてだった

原因は原付バイクとの衝突事故


そこからの記憶は無い

多分死んだんだろう こう何かを想うという感情も無く

自分が自分自身を忘れて行くそんな感じが一瞬だけした

このまま無の存在になるのかと 恐怖も体感せずに消えるのだと思った


そんなことを思いながら 俺は気がつけば保育園に入園していた

物心という世の中の識別が芽生え始め 俺に前世の記憶があると知った


カレンダーを見ると 死んだ年から200年後の世界

自分が思っている世界とは随分とかけ離れた

違う漫画やアニメに影響された ただの妄想だったのかもしれない

だったからなのか前世とは変わらない時代の風景に拍子抜けしてしまった

変わったことと言えば

車が空を飛んで当たり前や 宇宙旅行もメジャーになっていたことだ

スマホも変わり 画面の中に閉じこもっていた電子が外に飛び出す

それを手で操作すれば まさに物理のように動くという技術が最先端として現代日本の進化過程に位置し

言い換えればアニメや漫画で起こる非現実的な魔法と一言で括られた妄想が

科学的に映像的具現化され 映画やテレビゲームが時代遅れと呟かれるほど

アウトドアな中二病が急増しブームとなっていた


しかし 子守りする動物をモチーフにした人工的に意思を持つロボットもいなければ

宇宙に敵もいず超大型戦闘機も開発されることは無い ましてやCPが主導権を握ることも


それは何百何千年と変わろうとしなかった

変わっていくのは宇宙から見た地球の色だけ

いつの日か地球を捨て 旅する宇宙船が自分達の世界となった



そして 何万年後のとある余生を終えた俺は その先に生まれ変わることは無かった

住める星が見当たらなかったのか 見つける前に小さな宇宙船の生活物資が底を尽きたのか

仲間と呼べる存在がいたから心配でしょうがない



って思ってたこの時にも生まれ変わっていた

今まで虫にでも生まれ変わっていたのか 感覚はあったが記憶が無かった

辺りを見回すと人間に近い どちらかと言えば猿に似た奴等が俺を囲んでいた

自分の腕を見ると毛で覆われていた


人類の進化の先が原始人と似た姿に退化する末路だったのか

あるいは人類の原始へとふりだしに戻ったのか

ここまで来ると生まれ変わりと言うより 転生だと後の俺は思った


先の未来に転生する 人類が滅んだら原始に戻る 馬鹿げてる




神の悪戯が過ぎるぞ




死んだ次はどこかの外国の土地だった

人を殺すことに躊躇無い時代での数々で 俺は幾度も転生した

そして今度は平安の高貴な家がらに生まれた


今まで辛い人生を辿ってきたんだ


そう思った俺は 自分より下の者を次々と家畜のように扱っていた

楽しい ただそれだけだった

結果史上最長の35の歳まで生きた

しかしその歳を境にヤツは来た 



前兆の無い雷雲が自分を中心に空を覆い

雨のように降り注ぐ落雷で国一つを焼け野原にした

もちろん俺もその災害で死に 当たり前のように転生する



300年後の日本で生まれ変わった俺は遠い記憶のあの災害を調べた

すると〝 万雷鳴(タカナリ) 〟と大きく記され歴史的大災害の一つに残されていた


だけど今思えば不思議だった

少なくとも俺が原子時代に還る前の世界で そんな災害は存在しなかった

何百年にも渡る伝説ともあれば 教科書でなくとも何かしらネットには載るだろうから


その時の俺はそんな考えは持てないでいたが

一度進化する前の知性の低い生き物に転生してしまったからなのか

当時の俺はその前の何生かはもちろん 初生が日下部陽だったことも忘れていた


よく脳は正常でいられると 自分の脳をを褒めてしまう


その後も万雷鳴は俺を襲った

その経験で分かったこともある


万雷鳴は俺が長寿を生きる運命で現れる

実際にそうだったのかは明確に出来ないが 

現れない人生には戦死や病死で20代には死ぬからだ

争いが絶えない世の中なのか 万雷鳴と出会う機会はそう無かったが



そして数百年の時を経て 幕末にて染飴と出会い



その次の来世には幸か不幸か 俺が死んだ時代に草津夕助くさつゆうすけとして転生された



親はいなかった


気が付いたら孤児院にいた俺は

保育園に上がる前に子供のいない三十を越えた夫婦に引き取られて一緒に暮らしていた

別に不自由が待っていた訳ではない

今までの経緯からか学年トップは余裕で狙えるし 運動も概念を知っていた俺には造作も無い

いわゆる天才と呼ばれるが そう聞くと本当の天才はこういう体験をしているのか

俺みたいに転生を繰り返す人生だったのかと思うようになり 中学で中二病が発生した


友人も経験上作り方を理解し 恋人の作り方も知っている

しかし今に限ったことではないが恋人を作ろうとしたことは一度も無かった

遠い昔から夢見る一人の存在 それが何万年経とうといつも夢見る


性欲が無かったわけじゃない 恋をしなかったわけでもない

だけどその夢を見る度に諦めてきた


それほどの存在がいただろうか 原始時代の女だったら笑いもんだな 




成人して 俺は今までの経験を活かして教師を目指した

世界史も良かったが日本史の教員になることを何故か決意した


高校教師で働きながら未だに調べたいことがあったからだ



そう 万雷鳴



恋人を作らないと言ったが 教師と言う職業はその暇すら与えて貰えない

生徒に教えるだけでなく 書類も書かなければとなれば寝てもいられないし

部活の顧問を押し付けられたらもうお手上げ


まさに新任教師にとっての試練だな 寺子屋とはまるで違う




そんな中で 彼女とは出会った


お盆で近くの両親の親戚の家に集まる予定が入り 教員生活6年目を迎えて

予定を調整できるスキルを身に付けた俺は一人暮らししている借家からその親戚の家に向かう


玄関からは久しい親族の方々に迎えられ 茶の間に案内された

すると自分が座る隣で黙って本を読む小学生くらいの女の子が座っていた


「こら愛美!! ちゃんとおじちゃんに挨拶しな!」


「愛美……?」


俺はその名前に何かが引っかかった

ゆっくり愛美の方を見る そこには正面に身体を向けて座り直す愛美が律儀に挨拶している


「茅野愛美です……」


「違うでしょ! 春原愛美! 何べん言ったらわかるんず…… すいませんね」



愛美は軽く頭を下げ そして再び絵本を読み始めた




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