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1.

お気に入り登録してくださった方ありがとうございます。


 この世界に召喚されたころは当然のように俺は男であった。

 召喚されたのが夕時だったのもあり、その晩のみ俺と召喚された4名はともにこの世界に歓迎されたと疑わず、豪華絢爛な贅沢な夜を過ごした。

 その時にこの世界にも風呂があると知ったのだ。

 俺はただ、久しぶりにゆったりとできるベットで寝れることだけが嬉しかった。


 でも、翌朝行われたステータスを調べると言う召喚された中の一名曰く、王道で必ず無能が一人はいて、後に復讐をするためにチートの塊になるそうだ。

 その無能が俺であった。

 ステータスはHPのみが規格外に高く、それ以外はごく普通の15歳の平均と同じであった。

 特別なスキルがある訳ではなく、どこぞの執事やらメイドやらが持っている、炊事、洗濯、掃除、裁縫その他諸々の複合スキル“家事”と使い道のない“変声”があっただけである。

 当然の如く、これは無能判断になった。

 これでアイテムボックスなどのスキルがあれば召喚された奴らの雑用係にでも着くことができたらしい。

 この世界の人間としては異世界人の血は有力な子孫を残す必須の物とされるが俺の場合は大して称号がある訳でもなくただ体力があるだけの雑用係にしかなることができないらしい。

 だが、そこにこの国の錬金術師が是非と声を上げ、俺を人体実験の素材にしたいと言い、俺はそこに回された。

 なんでもHPを大幅に酷使するものらしくいまだに適応したものが居ない“最強の楯”を作るための薬の実験台に見事されたのである。

 運が悪いことに俺は適応してしまった。

 今まで神話の時代の者しか出現を確認していなかった“超回復”を手に入れてしまい、その副作用で俺は女になり、元々黒い日本人らしい髪だったのが自分の名前の「ぎん」と読みが同じの銀色になってしまった。

 腕を切断されたり、腹にドデカい穴をあけられたこともあったが、すぐに回復してしまったのである。

 研究者どもは歓喜した。

 これで最強の盾、無敵の破られることのない盾ができると。

 もちろん盾はあの無機物のあれではなく、人自身を再生し続ける盾とした比喩表現である。

 実際に戦場でこの力を見せつけ、自分たちは後世に残る学者になれるといった傍、この建物は崩壊した。

 


 それは一人の男の仕業だった。

 曰く、仕事で人を攫うと言う噂を消すのが目的だった。

 曰く、その日は無性に苛立っていた。

 曰く、美味そうな血の匂いがした。

 などの理由でこの場所を見つけ、学者を全員首のみにし、正常な奴らを解放し、すでに精神が狂っている者は、この建物ごと業火に焼き尽くされた。

 

 それで、やや精神が死んでいたもののどうにか生きる気力が見えたらしい俺には、


「お前食事係」


 と、任命されたのである。


 後日聞いた話では、力を発動させ焼き尽くすために血が必要でたまたま吸ったのが俺の血であり、それがどうしようもなく美味だったらしい。



 などと、数か月前のことを思い出すと、完全にこの生活に満足してる自分がいることに気が付いた。

 天気が晴れているのも幸いしてこれなら洗濯物がすぐに乾きそうだと思いなが、湯を出た。



 ◇◆



「帰った」

「やっほー、ギンやん」

「…なんでついてくる」

「キミの下僕ちゃんの料理が美味しいのがいかんのや」

 夕方、仕事先から帰ってきた主である“ディアスタ・シスダスス”と商人の“フォルマ・ジュキアン”がドアを開け入ってきた。

 主の肩に腕を回し、気だるげに引きずられている。

「さ、ギンやん、食材は持って来たから今日も料理を頼むで!」

 やや大きめの籠の中には肉やら、野菜やら、ミルクやら、茶葉やらが綺麗に小分けされ入っていた。

「はぁ」

 俺が拾われて数日たった時に恐怖を感じながら、布が欲しいと言った時に、この彼の親友を名乗るフォルマが現れ、数々の布を取り出し、いくつかの布を買ってもらったのが事の始まりであり、その際にお礼と言っては何だが腕を振るった際に見事に胃袋を掴んでしまったらしい。

「アスやんの食事は少し経ってからでええで!」

「だか何故お前が勝t―――」

「はよ、つっくてや!」

 前世の関西人のごときハイテンションにやられ渋々台所に向かう。

 籠から食材を取り出し、鑑定を行うとどれも高級食材で少し目まいがした。

 「最高の料理は、最高の料理人と、最高の食材、そして愛の上に成り立つのものなんや!」と声高らかにし、熱弁されたとこを思い出す。

 美味い物が食べれるならどんなもんでも調達したる、とのこと。

 ちなみに鑑定は「確実にいい状態を見分けるために必要や」と言われ半ば強制的に覚えさせられた。

 なるべく、同じ料理が被らないようにいつも違うメニューを考えて作る。

 それも、いつも運ばれてくる食材が違ったりするのでその時その時で考えなくてはならない。

 ――家事スキルをフル活用し、何だかんだで作ってしまう自分も自分だと、心の中で呆れて見た。





「ふう、美味しかったで」

「そ、うっですか!」

 彼が食事を終えた直後我慢が出来なくなったとでも言うようにいつものごとく首筋から血を吸われる。

 血を吸われる際にその吸われた量に比例して快感が来るのは俺が実はドMだからと言うものではなく、吸血鬼の吸血衝動の起きる時に出る特殊な液体の関係上それが必然的に起こるそうだ。

 ……と、ピンチの際に主に血を吸われたと言うフォルマ談である。

 その際に一瞬薔薇の道を開けそうになったとのこと。

「相変わらず、ギンやんはエロいな」

 灰色の天然パーマにややうすめの瞳を持つフォルマがニヤニヤと生暖かい目で俺を見る。

「どこがだ!」

「なんつうかフェロモン丸出しや」

「帰れ、変態」

 相変わらずやや死んだ目で口数の少ない主がごみを見るような目線で見ながら罵倒をかます。

「アスやんそんなに見つめんといて、恥ずかしいやろ」

 冷たい目線をものともせずに我が道を走るフォルマは生粋のドMのようである。

「…」

「そうや、ギンやんに報告な。キミのアイデアの商品ええ感じに売れ取るで。これが今回分ね」

 そう言って渡されたのは金貨300枚ほど。

 ……いくらなんでもこれは売れすぎな気がする。

「これ何割ですか」

「4割」

 …やっぱ売れすぎだろ。

 まぁ、異世界人が良くやる自分の文化の発展。

 それを俺自身もとりあえずやってみるかと言う気持ちで主に料理のレシピとか掃除器具とかファッションとかを色々と原案を出して実際に作りそれをこいつに渡すことで商人的に売れるどうかを判断してもらい、それを技術として売り、儲けの四割と言う破格の金額を頂いている。

 割が良いぜ全く。

「ちなみにギンやんはその金どうするん?」

「……特に決まってない」

「ギンやんの買戻し金額は金貨450枚。神殿行けば奴隷から解放されるで」

 その言葉を聞いた時に僅かながら主の肩が動いた気がした。

「衣食住と安全が保障されてるこから無理に出ようとは思わない」

 正確にはこの世界の事は余りにも知らな過ぎるのである。

 文字はつい最近読めるようになったばかりだし、地理も対してわからない。自分自身戦闘能力が0に近い。守備に回れば最強クラスではあるのだが。

 こんななりとは言え、性別学上は女にカテゴライズされる実だ、好きでもない人間に犯される危険性なんかもあるのだ、安全が保障された此処を何故に自分からでなければならないのだろうか。 

 今思えば研究員どもに犯されなくて良かったと心から思う。

「へぇ」

 身元不明の俺を拾ってもらう際にその身分を保証してもらう、と言うこともあり奴隷と言うか下僕の様な感じになったのである。

 契約をする際につけられた首輪の値段が金貨450枚。

 ごてごてのシンプルすぎるものはもっと安いのだが、何分スキルスペックが高かったので普通の首輪では対応できず縛ることが出来なかったのでこんな高級品になってしまったのである。

 個人的には安全さえ保障されればそれでよかったと思うのだが、普通の人間だったら即死する量の血をたま飲むので、超回復を持つ俺がちょうどよかったらしい。

「ま、ええわ。ほな帰るわ」

 ゆったりとした動作で立ち上がるとふらりふらりと玄関へと向かって行き、ドアの前で立ち止まると、


「アスやん、あの件考えといてなー」

 

 そう言い残し、去っていった。


 その直後に引きずられ、風呂場まで連れて行かれ何故か今までやらされなかった背中を洗うのを手伝わされた。



…割とすぐに終わりそうですこれ。

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