序
本編『風と異邦の精霊術師』の世界で進行するもうひとつの物語です。
『アースフィア』
それはこの世界の名。
この世界を創った神の名。
彼の神ははじまりの神。
はじまりの神より生まれし、二柱の男神と女神。
男神をアリル、女神をイリス、二柱は言霊を乗せて云った。
「世界を拓け わが子らよ」
二柱は大地を創る。大地をこねては形を創る。
高く積み上げ山を創り。低く掘り裂き谷を創る。
流れた汗は大河となって、波の打ち寄せる海へと変わる。
二柱の神より産まれた神々は動き出す。
世界を切り拓く手元を照らす光の神ラーナ。疲れた身を包みこむ闇の神アスタ。こねられた大地には地母神デーティル。大河や海からは水神リューシン。火照った身を癒す風神シェルフィード。暖をとるのに起こした炎からは火神アグニスタ。その他数多の神々が生まれていった。
生まれた神々は手をとり合い、時には争い、また愛し合しあっては結び、さらに多くの神々、それだけでなく神霊、精霊、木や草や花、竜、獣、蟲、人を生み、世界は賑やかになっていった。
神々、神霊、精霊、神獣、魔獣。人種が万物の霊長として君臨していない世界。
物理の力と魔力の力が共存する世界。
人族の中で最も地に満ちた、普く在る人族。普人族。
その中に生まれた少しだけ変わった男のお話。
地位も名誉も金よりも、自分の興味を満たすことに喜びを見出した男のささやかな日常の物語である。
序章入れてみました