カフェ
三題噺もどき―はっぴゃくはちじゅういち。
窓の外には薄い雲が広がっている。
太陽の気配はどこにもなく、ただ暑いばかり。
空の端の方には、黒い雲の塊ができている。
雨の予報が入っていたから、それだろうか。
「……」
どこかぼんやりとした灯りをともす店内にいる。
最近できたと言う、小さなカフェに来ていた。
目の前には机を挟んで、妹と母が座っている。隣にももう1人の妹。
「……」
回りの机には、親子連れや、カップルがいる。
時刻は丁度おやつ時。
母はたまたま今日が休み、妹2人は午前中で終わった部活の後。
それぞれ昼食を済ませ、末っ子の方がここに行きたいと言い出したのだ。
明日行けばいいのにと思ったが、明日は丸一日予定があるらしい。
「……」
空間の演出としてなのか、店内を照らすのはガス灯のような照明。
まさか本物のガス灯ではないだろうけど、ゆらゆらと揺れているように見える。
天気が生憎なため、暗く思えるが、これがまたいい。あまり明るすぎず、暗すぎず。個人的には心地のいい空間だ。
「……」
なんとなく店内を眺めていると、様々な雑貨類が並んでいる。それがごちゃつく印象を与えることもなく、ただこの空間の一部として存在している。
オシャレなものがあるのだな……こういうカフェを経営する人はセンスが物凄くいい。こういう雰囲気が個人的に好きだと言うのもあるが、誰もが落ち着く空間というのは案外作るのは大変だと思う。
「……」
既に注文は終えているので、机の上には4人分の水が並んでいる。
これも普通の水ではなく、レモン水だそうで。こう、ジメジメとした暑さのある今の時期にはありがたい程、さっぱりとしている。ただの水じゃないだけでこんなにも印象が変わるのかと不思議に思った。
「……」
向かい合って座る妹2人は、母のスマホをいじりながら何か話している。
母は手持ち無沙汰に、私と同じように周囲を眺めている。
私もつい先ほどまでは会話に参加していたのだけど、自分のスマホをいじりだしたのでその輪からは抜けた。
まぁ、別にそれでどうにかなるような家族ではないので、別に仲が悪いわけじゃない。
「……、」
しかしそろそろ……と思っていた矢先。
丸いお盆を手に持ち、その上に数種類のケーキを乗せた店員さんがこちらへと向かってきた。その後ろにもう1人、ドリンクを持っている人も居る。
まぁ、4人分一気には大変だろう。
「おまたせいたしました」
恭しく、軽く会釈をしながら、ケーキを並べていく。
母は、季節限定のタルト。次女はチョコケーキ。末っ子は、この店イチオシのチーズケーキ。私はあまり甘いものの気分ではなかったので、ガトーショコラにした。これでも甘そうな気もするが、他の物よりはマシだろう。
「……ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
ドリンクも次々と並べられ、少し狭いテーブルには皿が4つに、カップが8個。
まぁ、ぎちぎちに詰まっているわけではないので、食べることに支障はない。
飲み物はそれぞれ、コーヒー、紅茶、紅茶、アイスオレ。
「写真撮る?」
「ん~」
店員さんがいい感じに並べてくれたケーキの写真を撮っていく。
妹2人の物は、母のスマホで撮っている。私は私ので。
こういうおしゃれなところのケーキは、いわゆる映えにこだわっている所があるが、ここはそうではなく、シンプルな見た目で、味にこだわって作られているらしい。
それでも、この店の雰囲気のおかげで良い感じに写真は撮れる。
「……」
2,3枚ほど角度を変えながら撮り、満足したところでスマホを閉じる。生憎、SNSはほとんど見るようにしか使っていないので、写真を投稿することはない。
……今度学校に行ったときにあの子に自慢しよう。
「いただきます」
カフェで言うのもなんだとは思うが、これはもう癖なので許してほしい。
その後は、4人でゆっくりと食べ進めていった。妹のチーズケーキをすこし貰ったが、さすがイチオシと言うか。かなり美味しかった。これはリピーターができるのも当然だ。
なんだか久しぶりに、家族でゆっくり過ごしたようなきがした。
お題:雨・チーズケーキ・ガス灯




