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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる  作者: 朝山 みどり


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22 書類の準備

22 書類の準備


遺跡の権利関係の手続きが終わった頃には、王城の執務室はすでに昼を過ぎていた。


机の上には、山のような書類。


だが、その中央に座るケイトの手は止まらない。


「遺跡周辺の土地権利、取得完了。村の商業認可権もこちらで管理……っと」


さらさらとペンを走らせながら、ケイトは確認書を整える。


遺跡そのものだけでは足りない。


もし今後、人が集まり、商売が生まれれば、必ず悪質な商人が入り込む。


法も契約も知らない村人を騙し、安値で土地を奪い、好き放題する者が出る。


だから先に押さえた。


村を守るためだ。


「後で泣くくらいなら、最初から囲っておくのよ」


ケイトは小さくつぶやいた。


その時、ばたん、と扉が開いた。


「キャサリン! この書類も見ろ!」


ロバート王太子だった。


大量の書類を抱えて来たかと思うと、どさりと机へ積み上げる。


「はいはい」


ケイトは顔も上げずに答えた。


だが次の瞬間、その後ろから伸びた手が、書類の束をひょいと持ち上げた。


「殿下」


低い声。


マイクだった。


「依頼外業務です」


「なに?」


にこやかに言いながら、マイクは書類をロバートの胸元へ戻した。


周囲の文官たちが、必死に下を向く。


吹き出しそうなのだ。


ロバートは顔を引きつらせた。


「お前たちは、わたしに冷たすぎる!」


「冷たいのではありません。ご自分の仕事はちゃんとやってください」


ケイトが即答した。



質問を抱えた若い文官が、おそるおそる近づく。


「あの、ケイトさん。このパレードの費用の分類ですが……」


「ここまでは、王室の催事費用です。このドレスの仕立て直しは王太子に回してください」


即答。


「では、この河川修復案は」


「それは旧式の資料を見たようですね。改訂版があります。中央資料室の三番目だったかなぁ。そこを探して下さい。見つかったらわたしも見ます。一緒にやりましょう」


「はい! すぐに探してきます」


若い文官が喜んで走っていく。


別の文官が羨ましそうに、見送った。



執務室が慌ただしく動き回る。


ケイトはその様子を見ながら、ふっと息を吐いた。


「前に来たときよりも動きがいいわね」


「そうだな」とマイクが笑う。


「前は全部わたしに投げて来たんですよ」


「そりゃ逃げたくもなる」


「だから婚約破棄に感謝してるんです」


そんな会話をしていると、扉が開いた。


入って来たのは、アビゲイルだった。


その後ろには侍女たちがいる。


押しているワゴンには、美しく整えられたティーセット。


「お茶をお持ちしましたわ」


にこやかな声。


だが、部屋の空気が少しだけ張った。


侍女たちが次々とカップを配る。


文官たちは慌てて立ち上がった。


「ありがとうございます」


「恐れ入ります」


甘い菓子の香りが広がる。


だが、アビゲイルは、ケイトの前だけを素通りした。


露骨だった。


わざとだと誰にでもわかる。


ケイトは気にした様子はない。


「あら」


アビゲイルが立ち止まる。


「おまえの分はありませんでしたわ」


「そうですか」


ケイトは顔も上げない。


「別にいいですよ。わたし文官じゃないので」


「そう」


アビゲイルの笑みが少しだけ歪む。


反応を期待していたのだろう。


「冒険者の方には、こういうものは必要ないかと思いましたの」


「そうでしょうね」


あっさりと肯定した。


周囲の文官たちがまた下を向く。


肩が震えている。


アビゲイルのこめかみがぴくりと動いた。


「相変わらず可愛げがありませんのね」


「そうですか?」


ケイトはぱらりと書類をめくる。


「でも、仕事は進みますよ」


静かな一撃だった。


レイモンドが咳払いで誤魔化した。


アビゲイルは唇を引き結び、それ以上は何も言わなかった。


その時。


別の侍女が執務室へ入って来る。


「ケイト様」


「はい?」


「王妃殿下がお茶へお招きです」


部屋が静まった。


ケイトは露骨に嫌そうな顔をした。


「今ですか?」


「はい」


「忙しいんですけど」


侍女が困った顔になる。


マイクが横で吹き出した。


「王妃を待たせる気か?」


「待たせたいですねぇ」


本音だった。


だが、ケイトは机の書類を整える。


遺跡関連の確認書。


受諾印。


権利証。


それらを順番に封筒へ入れた。


そしてようやく椅子から立ち上がる。


「それでは行ってきます」


「お気をつけて」


レイモンドが言う。


マイクも自然に横へ並んだ。


「護衛です」


「王城内だぞ?」


「だからです」


ロバートが嫌そうな顔をしたが、誰も反対しなかった。


ケイトは小さくため息を吐く。


「お茶会って疲れるのよねぇ」


「冒険者らしく行ってこい」


「はいはい」


そう言って、ケイトは王妃の待つ部屋へ向かった。


いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。

よろしくおねがいします。


書籍を出すことができました。

挿絵(By みてみん)




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― 新着の感想 ―
すっごい重箱の隅ですが、王妃殿下の茶会を拒否できないなら命令みたいな物で >王城側は、冒険者ギルドを通さない直接命令を禁止する。に違反してそうですが、あくまでも表向きは待ってるだけなので命令でないって…
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