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婚約破棄されて勘当されたわたしは都会派冒険者になる  作者: 朝山 みどり


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13/16

13 依頼なら

 13 依頼なら


「キャサリンが冒険者として活動しているなら、依頼を出せばいい」


 執務室でそう言ったのは王太子のロバートだ。


 レイモンドが手を止めた。


「依頼、でございますか」


「冒険者は依頼を受けて動くのだろう。ならば依頼を出せばいい。執務の補佐として、こちらへ来るよう」


 レイモンドはしばらく黙っていた。


「殿下。冒険者への依頼は、相手が断ることもできます」


「断らせなければいい」


「断らせない? どうやって?」


「パーシーを連れて行け。あの男なら顔見知りだ。話が通じやすいだろう」


 レイモンドは返事をしなかった。


 しかし、ロバートはもうそれ以上の意見を聞くつもりはないらしく、書類へ目を戻した。


 レイモンドは一礼して、執務室を出た。



 冒険者ギルドへ向かったのは、侍従のレイモンドと、パーシーだ。


「断られた場合は?」とパーシーが馬車の中で言った。


「そうならないよう、うまくやっていただかなければ」とレイモンドは窓の外を見ながら答えた。


「うまくやれと言われても、あいつはなかなかに頑固だぞ」


「存じております」


「この間も、はっきり断られた」


「存じております」


 パーシーは少し黙った。


「そもそも、冒険者への依頼ってそういうものか? ギルドが受け付けてくれるのか?」


「形式上は依頼です。ギルドは受け付けを拒否できません。問題は、ケイト本人が受けるかどうかです」


「ケイト?」


「あちらでの名前です」


「キャサリンが偽名を使っているのか」


「正式な登録名です。偽名とは言いません」


 パーシーはまた黙った。馬車が揺れる。


 ギルドに着くと、受付のクーパーが二人を迎えた。その目が、すでに状況を読んでいるような色をしている。


「依頼の登録をお願いしたい。冒険者ケイトへの指名依頼だ」とレイモンドが言った。


「内容を伺います」とクーパーが静かに言った。


「王太子殿下の執務室における補佐業務。期間は未定。報酬は別途相談」


 クーパーは書き取りながら、すこし間を置いた。


「確認ですが、執務室での業務というのは冒険者の依頼範囲内ではありません。通常、事務職や文官としての雇用になります。冒険者ギルドを通じた依頼として受け付けることはできますが、受けるかどうかはケイト本人の判断になります」


「もちろんだ」とレイモンドが答えた。


「それから」とクーパーが続けた。


「本人は今、外に出ております。戻り次第、依頼があった旨を伝えます。返答はその後です」


「いつ戻る」


「わかりません。冒険者ですので」


 淡々とした返事だった。


 パーシーが横からクーパーに声をかけた。


「話を通してくれないか。キャサリンとは幼いころからの知り合いだ」


「ご事情は存じません。依頼の受け渡しはギルドの手順通りに行います」


「そう言わず」


「手順通りに行います」


 クーパーは繰り返した。声の温度は変わらなかった。


 パーシーはそれ以上言えなかった。



 その日の昼過ぎ、ケイトはギルドへ戻った。


 マイクがドアを開けるより早く、クーパーがカウンター越しに目を向けてきた。


「おかえり、ケイト。依頼が来ている」


「依頼? どんな内容ですか?」


 クーパーは書き取った紙をそのままケイトへ向けた。


 ケイトはそれを受け取り、読んだ。


 少しの沈黙があった。


「王太子殿下の執務室における補佐業務、ね」


「そうだ」


「これ、断れますか?」


「もちろんだ」とクーパーは静かに言った。「依頼を受けるかどうかはケイト、あなたが決める」


「ではお断りします」


「わかった」


 クーパーは紙を受け取り、ためらいもなく処理した。それだけだった。


 マイクが横でかすかに笑った気配がした。


「あっさりしているな」


「あっさりしていますよ」とケイトは答えた。


「依頼を受けるかどうかはわたしが決めるんですよね。考えたり悩んだりするようなことではありません」


「それで文句はないが。先方はそう思わないかもしれないな」


「そうでしょうね」


 ケイトは肩をすくめた。


「それから、あのパーシーって言うのは?昔からの知り合いだとか」


「兄でした」


「兄?」


「パーシーって呼ぶのは、前にアビゲイルがわたしの部屋からいろいろ盗んだことを咎めた時に、わたしが気を付けて?気を使って?先に渡さないから、可哀そうなアビゲイルが盗った。お前が悪いって父が言ったときに『そうだ。そうだ』って言って『お前なんか兄妹じゃない』って言ったのですよ。それ以来名前で呼んでいます」


「なるほど。貴族って言うのはすごいな」


「えぇ。そうでしょうね。よくわからないけど。あほなんか図々しいのか」


「それなら、また来るだろうな」


「来るんじゃないですか、また。でもわたしは何度でも断ります。お断りするのに理由はいりません。気が向かないだけで充分です」


 マイクはそれには答えず、ただうなずいた。


 その横顔が、ほんの少しだけ安心したように見えた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
うーん? 依頼出すなら、婚約破棄の慰謝料と、今まで働いた分の給金の支払いが先では? そのまま結婚したなら給金はうやむやに出来たかもだけど、婚約破棄したなら当然支払う義務があるよね?
この国に居る理由は何?この手の主人公は自分から面倒ごとを呼び寄せるのがお約束よね。
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