53.【クスト対シャキリ】
赤い機体が迫る。数は2機。
警音が鳴り響き、機体のすぐ側を風が切って、
建物が弾ける。
「ナーケル、散開しろ。私のそばに寄るな!」
機体を上昇させ、破裂音と共に加速をかける。
再び建物達は線上に変わり、座席に体が叩きつけられる。
「お前達に分かるか!貴様らはこの星で、ノコノコと暮らして!わかるはずがないだろう!」
「我々の怒りはそういうものだ!お前達が頭に浮かべもしないことだ!経験しないことを主体で考えられるほど、貴様らは優れていないからだ!」
「こいつ、ブツブツとやかましいんだ!」
クストは機体をそれに向けて加速させる。
黒い機体の一機が見当たらないが、まずはこいつを潰す!
双刀を取り出し、屋根を弾き飛ばす。
「クストさん、前に出過ぎないで!」
左のモニターにスタームのコックピットが映し出されるが、切断する。
クストはバイザーの下に顔を隠す。
このような顔は、スタームには見せられないからだ。
コンプレックスの塊は、潰し甲斐がある。
「お前達は虱潰しで殺してやる!どれが地球人で、どれが月の人間であるかわからないから、地球にいる人間は全員殺す!まずはお前だ!」
シャキリはスナイパーライフルを組み上げ、地面に装甲を削らせる寸前を飛行する。建物が風圧で歪み、砕けるものもあるが、それで良い。家屋に隠れた民間人も、効率よく死んでいくからだ。
歩兵部隊のアッシスが風圧に巻き込まれて、建物にぶつかり爆発する。
建物の間をぬぐって、空を舞う敵機を目視する。
腹の底から熱くなり、今すぐにでもあの機体をダルマにして、破壊したかった。
赤い枠線の照準が、そいつの動きを捕捉する。
ノコノコと、空を浮かぶ馬鹿な敵機だ。
歩兵部隊の爆発を掻い潜って、トリガーとなる操縦桿のボタンを押し込む。
機体は揺れ、建物に体を擦り付け、弾丸を発した。
「……うっ!」
ドミティアンの警告音が鳴らない。しかし確かに攻撃が側を掠めた。
機体をのけ反らせた、数十メートル先の建物が破裂する。
「馬鹿コンピューターが!」
クストは弾丸の元を探るように建物へ突撃。
自分達のそれより小型だが、明らかに大きい煙を巻き上げている。
その塊へ向けて、袖のミサイルを斉射。
煙を上げて射出されるそれは、5発。
右モニターが着弾時間を細かい音で知らせる。
3、2……
爆発から避けるように、あの黒い機体が煙から姿を現した。
「お前達は足だけで、動きも直線なんだよ!」
ミサイルを再び放ち、即座に機体を上昇させる。
座席がガタガタと揺れ、激しい動きを攻撃であるとコンピューターは勘違いをし、警音を鳴り響かせる。
狙い通り、あの黒い機体はこちらへ上昇してきた。
「馬鹿が!」
片腕を振り上げ、力一杯に振り下ろす。
「……なに!」
シャキリはのけ反って、機体を右に加速させる。
破裂音が鳴り響き、衝撃波が走るが、爆発も起こった。
直撃したのだ。
奴の、黒い機体の足首から先が空中を舞っていた。
「ははは!私はやはり私に生まれてきてよかった!」
クストの高笑いがコックピットに響き渡り、
右のコンピューターがシャキリの機体を捕捉し続ける。
「踵など良い!私はお前達に片目もやられてるんだ!コンプレックスで良いんだ、それがあるからお前を殺したくなるんだ!」
スナイパーライフルを投げ捨て、建物は重さに耐えられずに崩れ落ちる。
袖から折りたたみ式の槍を取り出し、地面に擦りながら加速をかける。
その先端は加速につれて火花を上げ、機体の上昇に合わせて建物を削り始める。
「月の人間が降りてこなければ良いというのは、貴様らのエゴだ!次はお前の機体の手足を切り取って、宇宙に打ち上げてやる!そうすればわかるだろ!
お前は泣くんだよ!」
アコニットは建物を吹き飛ばし、上空のクスト目掛けて上昇する。
「来たな、槍持ち!」
クストは自身のコックピットを目掛けてやってくるそれを避け、足に推力をつけ、機体の頭部を蹴り上げる。
モニターが一時的に砂嵐を起こし、シャキリはエアバッグに包まれ呻いた。
「お前達の言い分はわかるがな、やり方が気に食わないんだよ!」
クストは双刀を振り上げるが、
次には、モニターに頭を叩きつけられていた。
掲げた左腕が爆発し、火を吹き、スパークを起こしている。
「なにぃ……」
バイザーを上げ、顔を抑える。流血し、メインコンピューターには割れたガラス。
眼前の黒い機体は、こちらを蹴り押したのだろう。
足を伸ばし、右腕からは4本が連なる、
巨大なガトリングが煙を吹いていた。
「対話の段階はとっくに過ぎてるんだ!」
シャキリは機体を突進させ、左腕から煙を上げ、破裂音と共に、無防備な機体へ突撃をかける。
口を大きく開け、酸素を吸おうとするが、座席に叩きつけられ、呼吸ができない。
エアバッグが体を包み込んだ。
警告音が何倍も強くなり、コックピット全体が赤く点滅し始める。
機体に大きなダメージが入ったということだ。
右のサブモニターが損傷箇所を示す。先程の左腕と、腹部に損傷。モニターで確認すると、機体の腹部に槍が突き刺さっていた。
「お前達の総帥は、最初から徹底抗戦あるのみと言ってたがな!」
エアバッグを退かし、右腕のミサイルポットを開く。
「貴様……!」
シャキリがのけ反る頃、クストのドミティアンとシャキリのアコニットは爆発に包まれた。




