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50.旅の準備

「……いや、たいしたことではないのだが、

 夜会の時にユグドレア王国のエンダル侯爵と会ったのを覚えているか?」


ユグドレア王国のエンダル侯爵……

高齢で細身の男性使者を思い出した。


たしかあの時もマティアス様の様子はおかしかった。

きっとユグドレアに助けに行った時に何かあったんだと思っていた。


「覚えています。もしかして、王宮完成の式典ですか?」


「ああ、覚えていたか。そうだ。二か月後に開かれる。

 ユグドレアは帝国から遠い国だ。

 行って帰ってくるだけで十日以上かかってしまう。

 向こうに一週間は滞在しなくてはいけないだろうから、

 三週間近くもリンネアと離れてしまうことになる」


三週間もマティアス様と離れ離れ……。

いえ、それよりもマティアス様がユグドレアに向かうことのほうが心配になった。


「あの……私も一緒に行くことはできませんか?」


「え?」


「マティアス様の婚約者として一緒に式典に出席することは難しいでしょうか?」


「いや、二人で行くと言えば済む話だが……。

 ユグドレアに入ってからはずっと野営になるし、大変な旅になる。

 正直言って、あまりおすすめしないが、どうして行きたいんだ?」


私の申し出にマティアス様は驚いているようだった。

野営なんてしたことはないし、どのくらい大変な旅になるのか想像もつかない。


だけど……。


「マティアス様がユグドレアに行った時、嫌な思いをしたんじゃないですか?

 もしかしたら今回もまたマティアス様が嫌な思いをするんじゃないかと……。

 私が行ったとしても何かできるわけではありませんが、

 それでもマティアス様を一人で行かせたくないと思ってしまったんです」


「リンネア……」


「もちろん、できるだけ負担にならないように頑張りますから」


「……俺のことが心配で一緒に行くと言ってくれたのか」


心配というよりも、ただマティアス様が嫌な思いをするかもしれないと思ったら、

一人で帝国で待っていることなんてできない。


「ありがとう……」


「マティアス様……」


ぎゅっと抱きしめられ、おそるおそるマティアス様の背に手を回す。

こうして抱きしめられるのにも少しずつ慣れてきて、

恥ずかしいけれどマティアス様の体温が伝わってきてうれしい。


「だが、リンネアを危険な目にあわせたくはない。

 連れて行くのには条件がある」


「条件ですか?」


「ああ。リンネアにも魔術を覚えてもらう。

 自分で身を守れるようになったら一緒に行こう」


「私に魔術が使えるのでしょうか?」


「魔力量の問題はない。

 魔術との相性はあるが、何かしら覚えることができるはずだ」


自分で身を守る魔術……それを覚えることができれば、

今後もマティアス様の行く先についていくことができるかもしれない。


「私、頑張りますね」


「ああ」



それから何度かマティアス様から魔術の指導を受け、

空いている時間にこっそり練習することになった。


私が使えるのは秘術と言われるほど威力が強いものではないけれど、

簡単に教えてもらっていいものではない。


王族しか知らない魔術を教えてもらっていいのかと聞いたけれど、

皇太子妃になれば教えてもらえる予定だったらしい。


それが少し早まったけれど、ユグドレアに向かうということで、

皇帝陛下の許可もすんなり出たそうだ。


歴代の皇帝の妃は自分を守る魔術をいくつか使えるそうで、

正妃様も使えるけれど、それは公表されていない。


万が一、護衛が間に合わなかった時、最後の砦として正妃様自身が魔術を使うことになる。


普通の公爵令嬢だったら知ることはなかった秘密に、

もうすでに皇太子妃として扱われていることに気がついた。



そうしてすべての準備が整い、私もユグドラシルに向かうことが認められた。

マリアと相談しながら準備をしていると、カルラまでついてくると言い出した。


「私も!私も連れて行ってください!」


「でも、カルラは」


「国外への遠征時なら女官や侍女の資格を持たなくても問題ないと聞きました!」


「……そういえば、そうかも?マリア、カルラを連れて行っても問題ないの?」


「そうですね。法律上は問題ありません」


遠征時は臨時の使用人として現地の者を雇うこともある。

そのため、資格がないカルラでも公に私の使用人としても大丈夫らしい。


かといって、私の判断で使用人を増やすことはできないので、執務室まで向かう。

執務室には側近の皆さんもいて旅の計画を見直している最中だった。

ちょうどいいと思い、マティアス様にお願いすると、少しだけ困った顔をした。


「難しいですか?」


「いや、リンネアには終始護衛がつくから、勤務中は安全だろうが、

 休憩時間や夜は護衛がつかない。

 カルラは若い女性だから危険かもしれない」


「まぁ……そういう危険があるのですね」


エルドレドから帝国に来たときは帝国の騎士団に護衛をしてもらっていた。

あの時はそのような危険は考えもしなかったけれど、

今回の旅はそれも考えなくてはいけないようだ。


「マティアス様、カルラなら私にお任せください」


「ダニエルが?」


「私の護衛、クルスも連れていきますから。

 夜はクルスに任せれば大丈夫でしょう」


「ああ、そうか。双子の姉弟なんだったな。

 では、大丈夫だろう。許可する」


「ありがとうございます。お兄様もありがとう」


「どういたしまして」



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