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5.不安しかない

その時、王宮内に単騎が駆け込んできた。


「何事ですか!」


「アンジェラ様がお戻りです!!」


「…………は?」


いったいどういうことなのかと騎士に尋ねたが、

騎士も事情はよくわかっていないようだった。


「わからないのです。帝国に着いた後、アンジェラ様が落ち着いたら、

 必要以外の者たちはエルドレドへ引き上げてくる予定でした。

 そのため騎士団も一緒に帝国に残っていたのですが、

 帰国する馬車になぜかアンジェラ様も乗っていらしたようで……」


「アンジェラ様も一緒に帰ることを知らされていなかったというの?」


「そうです……一緒の馬車に乗っていた侍女たちはわかっていたのでしょうけど、

 こちらは何も知らされておらず、旅の二日目になって知りました。

 そして、王宮までアンジェラ様が帰国することを知らせに行けとだけ」


「本隊が着くのはどのくらい後なの?」


「おそらく、あと一日もすれば……」


「……そう、わかったわ。早く陛下へも知らせに行って」


「はい!」


帝国にはアンジェラ様と専属侍女の二人だけが残る予定だった。

旅団の残りは滞在期間が終われば戻って来ることになっていた。


まさかその隊にアンジェラ様が紛れていたとは……。

呆然としていたら、カルラに肩をゆすられた。


「リンネア様……どういたしますか?」


「……どうするって」


聞かれても、あまりのことに頭が動かない。

そのうち、馬車の中まで聞こえていたのかクルスが顔を出した。


「リンネア様、一度屋敷に戻りましょう。

 このことを公爵様にお伝えしたほうが良いかと」


「……そうね……お父様に伝えなくては」


そうだ。ここでぐずぐずしていても仕方がない。

カルラと馬車に乗り、急いで屋敷に戻ってもらう。


「あの王女、またわがまま言ったのかしら!」


「まさか戻って来るなんてな。二度と戻って来なくてよかったのに」


三人だけになった途端、カルラとクルスが怒り出した。

私も怒りたいけれど、今後のことを考えると不安でそれどころではない。


「リンネア様、顔色が悪いわ。大丈夫?」


「ええ……」


「あの王女が戻って来るのがそんなに嫌なのか?」


「嫌というよりも、どうして戻って来たのかの理由の方が知りたいの」


「どうして?」


「もし、王女が勝手に帰ってきてしまった場合、帝国からお咎めがあると思うわ」


「お咎め?」


事情を知らないカルラは首をかしげている。

私だって知りたくはなかったけれど、皇太子妃教育を受けてしまっている。


「皇太子の婚約者候補に選ばれた時から、この国は毎年支度金を受け取っている。

 婚約が破棄されることになれば全額を返還しなくてはいけないの。

 今のうちの国にそんなお金はないわ……」


「ええ!?大変じゃない!!」


「だからそんなに顔色が悪いのか……」


それだけではない、皇太子妃教育の家庭教師を派遣してもらったり、

アンジェラ様の警護のために騎士団が配置されていたことも請求されるかもしれない。


「アンジェラ様がそのまま妃になっていたなら、

 この先、二十年は税を納めなくて済むことになるからと、

 アンジェラ様に必要以上のドレスを仕立てて装飾品まで持たせていたの」


「いくらなんでも王女に金を使いすぎだろう!」


「そうよ!税金が免除されるからって、王女のお金じゃないわ!」


二人が憤るのも無理はない。

この国の特産は農業で、もとから裕福な国ではない。

王女のわがままのせいで借金が増えるとなれば……めまいがしそう。


「……ああ、でも。皇太子様がアンジェラ様を気に入らなくて、

 婚約を白紙にして帰したのだとしたら、請求されないかもしれないけれど」


「きっとそれに違いないわ!」


「そうだな、あの王女を妃にしたいなんて誰も思わないだろう」


私を励ますように二人は明るく言うけれど、

とてもそうとは思えなくて黙り込んでしまう。


外見だけならアンジェラ様は華やかで美しい王女だ。

金糸のような髪に美しい緑目。


大きな失態をおかしたというのなら考えられなくもないけれど、

アンジェラ様は意外と外面は悪くない。


こんな短期間で性格の悪さは出していないと思う。




馬車が屋敷に着いて、お父様の執務室へすぐに向かう。

慌てて部屋に入って来た娘に驚いた顔をしていたお父様も、

事情を知って顔色を悪くする。


「着くのは明日か……他の公爵家にも連絡をしよう。

 状況によっては、そのまま会議になるだろう」


「お父様……大丈夫でしょうか?」


「ここで心配していても仕方ない。

 リンネアは休みなさい。疲れているのだろう。

 明日は父も一緒に行くから安心していい」


「……はい、わかりました」






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