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44.終わり際に

マティアス様が戻ってきた後、

私たちはたくさんの帝国貴族や各国の使者から挨拶を受ける。


今日の夜会は私たちの婚約のお披露目なので、

皆が祝福の言葉をかけてくれる。


うれしいことではあるけれど、さすがに何人も続けて来られると疲れてしまう。


「大丈夫か?少し休んでこようか?」


「いえ、まだ大丈夫です」


何度も夜会の会場から抜けてしまうと、

挨拶に来ようと思っている者たちが困ることになる。


少なくとも各国の使者は全員に挨拶しておかなくては。

そう思っていたら、最後の使者が来た。


「お久しぶりでございます」


「ああ、久しぶりだな」


ユグドレア王国から来た使者はエンダル侯爵と名乗った。

高齢で細身の侯爵はユグドレアの議会の代表でもあるという。


「皇太子殿下には大変感謝しております。

 もう少しで新しい王宮ができあがりますので、

 完成式典にはぜひお越しくださいますようお願い申し上げます」


「式典か……考えておこう」


「ありがとうございます」


侯爵は話し終えると深く頭を下げて去っていったが、

マティアス様の態度が少しおかしい気がした。


……そういえば、以前に大規模魔術を使ったマティアス様に対して、

「そんなものを使えるのは人間じゃない」と言った者がいたと。


おそらく属国を助けに行った時に言われたのだと思ってたけれど、

それがユグドレアなのだろうか。


ユグドレアは属国の中でも一番貧しい国だと言われている。

それは定期的に魔獣の大発生が起こるせいで、

人や家畜などに大きな被害がでるためだ。


そういえば、二年前に大きな被害があったと噂になっていた。

他国のことだから正確な情報は伝わってこなかったけれど、

新しい王宮が完成したというのは、王宮にまで被害があったということ?


ここで聞くことはためらわれ、口をつぐむ。

何か他の話題を出そうと思ったけれど、何も思いつかない。


困っていたら、マティアス様に先を越される。


「……リンネア、疲れただろう。

 もう挨拶はこれで十分だ。東の宮に戻ろうか」


「はい……」


アラン様やアデリナ様たちに挨拶してから出ようと思ったけれど、

近くには見当たらない。

まだ楽しんでいるのだろうと声はかけずに出ることにする。


マティアス様と共に大広間から出ると、すぐに護衛が数名ついた。


もうナタニエル様やアンジェラ様は部屋に戻っているはずだけど、

それでも何が起こるかはわからない。


守られるようにして東の宮に戻ると、

マティアス様の肩の力が抜けた気がした。


「……お疲れでしょうか、マティアス様」


「あ、ああ。そうかもしれないな。

 この夜会が終わるまでは安心できないと思っていた。

 だけど、これでリンネアは俺の婚約者として認められた」


「はい。私もほっとしました」


「王女に対して頑張ったようだしな。これで不安なことも減っただろう」


「そういえば、ナタニエル様とは何を」


「それは気にしなくていい」


気にしなくていいと言われると少し気になる。

だけど、これ以上聞いても何を話したのか教えてくれるつもりはなさそうだった。


話す価値もないほど呆れてしまっているのかもしれないけれど。

無事に終わったというのならそれを信じよう。


「部屋まで送ろう」


「はい」


マティアス様はまだ仕事が残っているようだ。

私の部屋まで送ってくれた後、執務室に向かうという。


東の宮にいる間は護衛たちは少し離れているため、

二人きりで歩いているような気になる。


いつものように私室の中まで送ってくれたので見送ろうとすると、

ぎゅっと抱き寄せられる。


「え?」


「……少しだけ、名残惜しくて」


「……はい」


本当は離れたくないと思っていたのが見透かされたのかと思ったけれど、

マティアス様もそう思ってくれているように感じた。


一瞬だけ、強く抱きしめられた後、すぐに身体を離される。

ああ、もう行ってしまわれるんだと思ったら、

マティアス様の顔が近づいてくる。


「え?」


目をつぶったのに、口づけされたのは額にだった。


「このくらいは許してくれ」


「はい……」


唇にされるのかと思って、驚いたけれど覚悟を決めたのに。

まるで期待していたみたいで恥ずかしい。


「唇はもう少し慣れてからにするよ。

 リンネアが倒れてしまいそうだから」


「マティアス様……」


「からかったわけじゃない。

 俺もこれ以上そばにいたら離れられなくなりそうだ」


真っ赤になってしまっているだろう私を見て、

マティアス様はうれしそうに微笑んでから出て行った。


「……リンネア様、大丈夫ですか?」


「え、ええ」


「湯あみの用意はできております。……リンネア様?」


「あ、はい」


ぼうっと立ったままの私にマリアが声をかけてくれていた。


湯あみを終え、ベッドに潜り込んだ時にはもう半分意識がなかった。


今日は本当にいろんなことがあったけれど、

初めてアンジェラ様に言い返したことですっきりしている。


大きな行事を乗り越えた充実感であっという間に眠りに落ちた。





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