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41.妃たちの企み

「フレゴリ公爵家のサンドラ様だと名乗っています。どういたしましょうか?」


「……とりあえず別室に連れていけ」


まさかサンドラ様が青いドレスを着て来るなんて。

聞こえていたのか、クラウス様がコリンナ様に声を荒げた。


「おい!お前が仕立てたんじゃないだろうな!」


「……あの、それは」


青いドレスを仕立てることができるのは、着る許可をもらっている者のみ。

クラウス様がコリンナ様を疑うのもわかる。


「なんてことをしたんだ!」


「違うの……側妃になったら着るようにって贈ったものなのよ」


「そもそも側妃の話は最初から断られている。

 青いドレスで夜会に出席させて既成事実にでもしようと企んだのだろう!?」


「そんなこと……サンドラが勝手に」


「サンドラに渡せはこうなると予測できていたはずだ!」


サンドラ様ならやりかねないと私でも思う。

絶対にマティアス様の側妃になってみせると言いまわっていた。


コリンナ様の姪ということで周りも甘く対応していた。

まさか近衛兵につかまるなんて思っていなかったに違いない。


「叔父上、別室で話を聞かせてもらいますよ」


「ああ、もちろんだ。……おい、コリンナ。お前も行くぞ。

 お前のしたことも罪に問われると思え!」


「そんな……可愛い姪のすることじゃない。

 このくらい大目に見てくれたって……」


「いいから来い!」


嫌がるコリンナ様を半ば引きずるようにクラリス様は連れて行く。


おそらく私の紹介をしている間にサンドラ様を会場に入れ、

なし崩し的に側妃候補として紹介させるつもりだったのだろう。


青いドレスで壇上にあがれば、誰もがそう思うと考えて。


マティアス様は貴族たちから挨拶を受けている皇帝陛下に耳打ちした後、

私を連れて廊下へと出た。


サンドラ様が連れて行かれた別室に入ると、そこにはクラウス様とコリンナ様、

そしてサンドラ様の両親であるフレゴリ公爵とバルバラ様がいた。


「申し訳ございません、マティアス様。娘を庇う気はありません。

 処罰はそのまま受け入れます」


「お父様!?」


「あなた!サンドラは青いドレスを着ただけじゃない!

 結局、会場にも入れなかったのだから無罪だわ!」


「そういうわけにはいかない。これは皇帝陛下からの伝言だ。

 サンドラ、コリンナ、バルバラの三名は今後十年社交を禁止する」


マティアス様のその言葉に三人とも声にならない悲鳴を上げた。


クラウス様の妃として、フレゴリ公爵夫人として、

社交を十年も禁止されたら貴族としての価値はなくなる。


そして何より、婚約者もいないサンドラ様にとっては死活問題だ。


それでも予想より厳しい処罰ではなかったのか、

クラウス様とフレゴリ公爵は頭をさげて受け入れていた。


「寛大な処罰でありがとうございます。

 このまま娘は連れて帰り、二度と屋敷から出しません」


「ああ」


「コリンナは生家に戻すよ。二の宮にいること自体が社交になってしまうから」


「それがいいでしょうね」


それを聞いた三人は立っていられなくなったのか力なく座り込む。

特に夫人の二人は真っ青な顔で気を失いそうになっている。


サンドラ様だけはまだあきらめていないのか、マティアス様へ手を伸ばす。


「マティアス様……どうしてですか?

 私は側妃で我慢するというのに、どうしてそれすらも叶えてくれないの?」


「はぁぁ……幼い時のまま中身が成長していないのか。

 フレゴリ公爵にもはっきり断っている。伝えられたはずだろう」


「でも……だって。ずっと夢だったのに」


「普通の令嬢なら、一度断られたらあきらめるものなんだがな」


呆れたようにマティアス様は背中を向けた。

私の手をとって、会場へと戻ろうとする。


それでもあきらめが悪いサンドラ様は私へと泣きついてきた。


「……リンネア様、お願い、助けて……」


「残念だけど、皇帝陛下が決められたことだから」


「そんな……どうして。嫌よ……あきらめたくない」


泣き出したサンドラ様をフレゴリ公爵が無理やり頭を下げさせる。


「謝りなさい。こんな大きくなっても幼いころのようにわがままが通ると思っている。

 恥かしくないのか、三人とも!」


「だって……嫌なんだもの!」


部屋のドアを閉める直前までサンドラ様の声が聞こえていた。


「あれが帝国の公爵令嬢だと思うと恥ずかしいな。

 リンネアにも迷惑をかけて申し訳ない」


「いえ、驚きましたけれど……大丈夫です。

 わがままな令嬢には慣れていますから」


「ああ、そうだったな。会場に戻れば顔を合わすことになるだろう」


「はい。覚悟しています」


前夜祭で騒ぎを起こしたのはナタニエル様だけだったけれど、

アンジェラ様もそれを止めずにそばにいたと聞いている。


きっと何がいけなかったのかわかっていない。


マティアス様と大広間に戻ると、心配そうな顔したアラン様が待っていた。


「大丈夫でしたか?」


「ああ」


昨日と同じように、アラン様とアデリナ様は一緒に参加している。

ケイン様は奥様と、マッケート様は婚約者とダンスを踊りに行ったらしい。


「あいつらはどうしている?」


「さきほど、お二人を探しに来ていたようですが、

 不在なのを知って会場の奥のほうへ行きました」


「そうか」


「どうせそのうち見つかるでしょうから、

 その前にお二人も踊ってきたほうがいいのでは?

 リンネア様は初めての夜会でしょう」


「ああ、そうだな。リンネア、行こうか」


「はい」


ナタニエル様とアンジェラ様のことは不安ではあるけれど、

それよりもマティアス様とのお披露目だということを思い出した。


マティアス様と一緒にダンスフロアに向かうと、

なぜか踊っていた者たちが去って行く。


「??」


「俺たちに気を使ったのだろう」


「まぁ」


気がつけばダンスフロアにいるのは私たちだけになっていた。

注目されていることに気がついて緊張したけれど、

マティアス様の手を取って踊り始める。


練習したわけでもないのにすごく踊りやすい。

ナタニエル様と踊った時には失敗しないようにとただそれだけを考えていた。


今はずっとこのまま踊っていたいくらい楽しくて仕方ない。

微笑みあって踊っていたら曲が終わってしまった。


「残念そうな顔をしているな?」


「ええ、とても楽しくて」


「では、もう一曲踊ろうか」


「はい!」


そうだった。もう婚約したのだから、二曲続けて踊っても問題ない。

そのまま場に残り、二曲目も踊り始める。


二曲目も終わりそうになって名残惜しく思っていると、

私たちを取り囲むように見ている貴族たちの輪の中に、

ナタニエル様とアンジェラ様がいるのに気づく。


「来てしまったようだな」


「はい……」




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