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40.夜会の開始

夜会のために私に用意されたのは青いドレスだった。

この国で青いドレスを着れるのは王族の妃と婚約者だけ。


今なら、皇帝の正妃様と二の宮の妃コリンナ様。

そして、マティアス様の婚約者になった私。


特別に仕立てられたドレスに着替えると身が引き締まるような気がした。

婚約者としてのお披露目が終われば、正式に婚約者として認められる。


緊張して待っていたら、マティアス様が迎えに来てくれる。


王族衣装の上には黒いマント。

私が古代文字を刺繍をしたあのマントを羽織っている。


「マティアス様、そのマントは」


「リンネアが刺繍してくれたんだろう?見事な出来栄えだ」


「あ、ありがとうございます。でも、本当にそのマントでいいのですか?」


「たとえ代わりに刺繍したのだとしても、リンネアがしたことには変わらない。

 真剣に刺繍してくれたのだろう?」


「それは、もちろんです」


マティアス様に献上すると知っていたし、古代文字で守りの言葉を刺繍する際には、

それ相当の魔力を吸い取られながら一針ずつ刺していく。


短い時間しかないことに焦りはしたけれど、手は抜いていない。

アンジェラ様は一文字も刺繍できなかったので、すべて私が刺繍したものだ。


「俺はリンネアが刺繍してくれたこのマントで夜会に出られるのがうれしいよ」


「私もマティアス様に着てもらえるのはとてもうれしいです」


「そうか。じゃあ、見せびらかしに行こうか」


「はい」


差し出された手を取り、大広間がある西の宮へと移動する。



もうすでに他の貴族たちは大広間に集まっていた。


扉の前で入場を待っていると、皇帝殿下と正妃様、

そして二の宮のクラウス様と妃のコリンヌ様がやってきた。


姪であるサンドラ様と髪色は違うが、顔立ちは似ている。

コリンヌ様とお会いするのは初めてだが、にらみつけられている。


サンドラ様を側妃にしようとして、クラウス様とフレゴリ公爵に叱られたそうだが、

そのことで私が気に入らないのかもしれない。


挨拶をしようとしたけれど、マティアス様からも止められる。


「いい。婚約者のお披露目が終われば、リンネアのほうが身分が高くなる。

 今ここで挨拶しても意味がない」


「わかりました」


お披露目前の今ならコリンヌ様のほうが身分が上だが、

正式に婚約者になってしまえば私のほうが身分が上になる。


クラウス様は王族でも、妃のコリンヌ様は王族ではない。

王太子妃になる私は王族になる予定の者。その違いは大きい。


それもあって、大広間への入場はクラウス様とコリンヌ様の方が先になる。


私よりも先に入場するのが悔しいのか不機嫌そうなコリンヌ様を、

クラウス様は動じることなくエスコートして大広間へと入って行った。


「それじゃあ、俺たちも行こうか」


「はい」


ようやくマティアス様と私の順番となり、その腕につかまる。

大広間に入ると、一斉にこちらを見たのがわかった。


見られている……そう思うとうまく足が動かない。

立ち止まってしまいそうな私をマティアス様がそっと背中を支えてくれる。


これまで皇太子妃教育を受けてきたこと、

そしてディアナ様に指導していただいたこと。


何よりも、マティアス様の隣にいるのは私でありたい。

その想いで背筋を伸ばす。


王族席に着くと、皇帝陛下と正妃様が入場される。

そして、皇帝陛下が壇上に上がり夜会の開始を宣言した。


「今日の夜会は皇太子のマティアスとその婚約者のお披露目だ。

 二人ともこちらに来なさい」


「「はい」」


私たちも壇上に上がり、皇帝陛下に紹介されるのかと思っていたら、

口を開いたのはマティアス様だった。


「皇太子のマティアスだ。こちらは妃になる予定のリンネア。

 そして、ここではっきり言っておこうと思う」


いったい何をと思ったが、マティアス様が私の手を取った。


「私の妃になるのはリンネアただ一人。側妃を娶る予定はない。

 そして子が生まれなかったとしても別れることはない。

 その場合は、皇太子の座を弟であるケヴィンに譲る」


まさか夜会で発表するとは思なかった。

側妃の噂があったからか、大広間内がざわついている。


「ここで発表してしまって良かったのですか?」


「かまわない。父上たちにも許可は取った」


小声で確認してみれば、マティアス様は平然としている。

前もって言って欲しかったけれど、知っていたらもっと緊張していたかもしれない。



私たちの紹介が終わり王族席に戻ったら、

クラウス様とコリンヌ様が言い合いをしていた。


「どうしてあんな発表を!私は聞いていないわ!」


「お前は王族ではない。知らせる必要などないだろう」


「そんな!ひどいわ!」


王族席とはいえ、このままでは貴族たちに聞かれてしまう。

クラウス様は興奮したままのコリンヌ様をなんとか大広間から連れ出そうとしている。


その時、近衛兵がこちらへ向かって来るのが見えた。


コリンヌ様を外に連れ出す手伝いをしに来たのかと思ったが、

近衛兵はマティアス様の前に来る。


「何があった?」


「遅れて来た令嬢がいたのですが……青いドレスでした」


「は?」


「皇帝陛下の開始宣言で手薄になっている隙に会場に忍び込もうとしていました」


「誰だかわかるか?」


「フレゴリ公爵家のサンドラ様だと名乗っています。どういたしましょうか?」


「……とりあえず別室に連れていけ」


まさかサンドラ様が青いドレスを着て来るなんて。

聞こえていたのか、クラウス様がコリンヌ様に声を荒げた。


「おい!お前が仕立てたんじゃないだろうな!」




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