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38.夜会の準備

マティアス様から本当のことを教えてもらえたことで、

安心した私は夜会の準備に落ち着いて取り掛かることができた。


夜会用のドレスが出来上がったのは二週間前。


当日まで衣装部屋に飾っておいておくため、

信用できるもの以外は私の部屋には入ってこないように命じた。


東の宮にいる侍女を疑うのは嫌だが、

ディアナ様から聞いた側妃の噂の一件がある。


気をつけておくように護衛にも話して、

必ず誰かしら私の部屋の近くに待機させるようにしていたら、

一人の侍女が部屋に忍び込もうとしているところで捕まった。


その侍女は本宮から移動して来た侍女だった。

カルラがその顔を見て、私の耳元でささやく。


「リンネア様、もう一人の婚約者の噂を聞いたのはこの侍女からです」


「そう……」


もしかしたら、カルラにその噂を教えたのは、

私を動揺させるためだったのかもしれない。


後ろ手で縛られた侍女は、私が来たことに気づいてひれ伏した。


「何をしようとしていたのかしら?」


「何もしていません!……ドレスを見てみたかっただけなんです!」


「どうして?」


「理由なんてありません!綺麗だと聞いて……一目見たかっただけなんです!

 実際には部屋にも入っておりません!どうかお許しください!」


「だめよ」


「そんな!!」


ぽろぽろと涙を流して何度も頭を床にこすりつける侍女を見ても、

同情する気にはなれない。


部屋に入る前だったから、謝ったから、

そんなことで許していたら皇太子妃なんてつとまらないのだから。


「背後関係を調べて。誰かに命じられているかもしれないわ」


 「「「はっ!」」」


「お許しください!どうか!お願いします!!」


私が侍女の願いに返事をしなかったからか、

護衛たちは侍女を担ぎ上げて連れて行った。


報告が行ったのか、マティアス様がすぐに部屋まで来てくれた。


「リンネア!大丈夫だったのか!?」


「はい、部屋に忍び込もうとしていたところを護衛たちが捕まえてくれました。

 夜会用のドレスは無事です」


「ドレスじゃない。リンネアが何かされることが心配なんだ」


「まぁ……私なら大丈夫です」


「それならいいが、護衛を増やそう。

 夜会もあるし、問題行動を起こす侍女が一人とは限らない。

 マリア!侍女の身元を洗い直せ。問題がありそうなのは本宮に戻すんだ」


「かしこまりました」


人が足りないという理由で本宮の侍女をこちらに移動させてきたはずだが、

もしかしたら本宮で勤務していたからという理由で、

身元調査が甘くなっていたのかもしれない。


マリアも女官長になる直前までエルドレドで家庭教師をしていた。

完璧に女官長の仕事をこなせないのは当然のことだ。


「俺の采配ミスだな。女官長の補助ができるものをいれるべきだった」


「そうですね……私が女官長の補佐をするわけにもいきませんし、

 もう一人マリアと同じくらいの働きができるものがいるといいのですが」


「難しいが、探させておこう」


「お願いします」


忍び込もうとした侍女の取り調べはマティアス様に一任し、

私は引き続き夜会の準備に取り掛かる。


さすがにディアナ様とお茶会をするわけにもいかなくなり、

今週はお休みしたいと手紙を書いて送ったところ、

ディアナ様からは何か手伝えないかと返事が来た。


ディアナ様を東の宮に呼ぶことはできないので無理かと思ったが、

それを聞いたマリアは手伝ってほしいことがあると言い出した。


「西の宮の侍女たちの指導をしてもらいたいのです。

 属国から来た使者たちが滞在するのですが、中には王族もいらっしゃいます。

 失礼のないように侍女の質をあげておきたいのです」


「そういうことならディアナ様は適任だわ。

 お願いしてみるわね」


さっそくディアナ様に手紙でお願いしてみると、すぐさま快諾してくれた。


そして、夜会の一週間前になり、属国から使者が到着したとの知らせを受けた。

一番初めの使者はイースレア王国の第二王女ブランカ様だった。


イースレア国は帝国から一番遠い国なので、早めに国を出たのだろう。

大きな鉱山を持ち、良質な宝石が取れることで有名な国だ。


王女が一人で来たことで何かあるのかと身構えたが、

王女は特に何か希望することもなく、

用意した部屋の中で静かに過ごしている様子だった。


次に来たのはサウザリス国の公爵。

サウザリス国は気温が高く、畜産が盛んな国と聞いている。

帝国の王都を視察に来たらしく、公爵は毎日どこかに出かけているようだった。


そして、三番目に来たのはエルドレドのナタニエル様とアンジェラ様。

二人は西宮に着いて早々に騒ぎを起こしていた。


「リンネアを呼んでくれ」


「皇太子殿下の婚約者様をお呼びするのですか?」


「ああ、そうだ。俺とアンジェラが来たのだからな。

 挨拶に来るのが当然だろう」


「……東の宮へ連絡してみます」


西の宮の侍女は判断に困り、東の宮へ連絡をしてきた。

それを受け取ったのはマティアス様だったため、すぐさま却下されていた。


「なぜリンネアが挨拶に行かねばならない。

 他の使者たちと同様に夜会まで待たせろ」


「はい」


マティアス様は西の宮の侍女に返事をさせるのは無理だと判断したのか、

近衛騎士を西の宮へ向かわせていた。


その返事を聞いたナタニエル様は納得いかなかったようで騒いだそうだが、

東の宮にナタニエル様からの伝言が届けられることはもうなかった。







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