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33.解決方法

「わかった……軍を動かそう」


怒りがおさまらない様子のマティアス様に少し不安になり問いかける。


「マティアス様が軍を率いるのですか?」


「……いや、今回は俺ではなくケニーに行かせる。

 案内としてポスニルア国の王太子アーロンと、

 念のため叔父上に行ってもらう」


「そうですか」


軍を率いてポスニルアへ戦いに行くことになれば、

またマティアス様は傷ついてしまうのではないかと思ったけれど、

今回はマティアス様が行かなくてすむらしい。


ほっとしていると、マティアス様にそっと手を握られた。


「今は婚約発表前の大事な時期だからな。リンネアから離れたくない。

 今回は秘術は必要ではないし、何かあっても叔父上がいれば問題ないはずだ」


「え……あの……」


お兄様の前なのにそんなことを言われたら恥ずかしくなってしまう。

さすがにお兄様も気まずかったのか、おそるおそる声をかけられた。


「えっと……マティアス様、リンネア。それ以上は後でにしてください。

 まだ続きがあるんで話してもいいですか?」


「あ、ああ」


「今までマティアス様がポスニルア国の王弟を見逃していたのは、

 冒険者に金を貸す商会が他にいなかったからですよね」


「そうだ」


「ならばうちの商会がその役目を果たしましょう。

 そうすれば王弟を捕まえに行くのに反対する者はいなくなるでしょうから」


お父様の商会が貸金業を?

エルドレドですらそんなことはしていなかったのに。


「だが、オードラン家は……ああ、そうか。帝国人になるから問題ないのか」


「そうです。エルドレドの籍は抜けています。

 これでマティアス様の側近になれば、帝国人になりますよね。

 帝国人の商会なら貸付しても問題はないはずです」


帝国法では他国の者は帝国人に金を貸し出してはいけないことになっている。

お兄様が帝国人となれば、帝国法にも違反しない。


「たしかにそうだ。冒険者ギルドの問題も解決するのはうれしいが、

 冒険者に貸付して大丈夫なのか?」


「冒険者ギルドに話をつけ、冒険者そのものに貸すのではなく、

 冒険者ギルドを通して貸し出すことにします。

 そうすれば返済せずにいれば冒険者としての活動もできなくなり、

 冒険者として活動すれば、そこから返済金を払ってもらうこともできます」


「なるほどな……わかった。

 そちらのほうはダニエルに任せた」


「ありがとうございます」


「では、さっそくケニーと叔父上に話をつけに行って来る」


「はい」


「実際に側近として採用するのは王弟を捕まえた後になるが、

 それで問題はなさそうか?」


「この作戦がすべて成功してからで問題ありません」


「わかった」


マティアス様は名残惜しそうに「また晩餐の時に」と言い残して部屋から出て行った。


「お兄様、すごいわ。こんな短期間で解決方法を見つけたなんて!」


「以前、王弟の話を聞いたことがあったんだ。

 属国のものなのに金を貸し出していると。

 どうしてマティアス様は見逃しているのかと思っていたんだが」


「それなりに有名な話だったの?」


「いや、そこまでじゃない。うちが大きな商会だったから聞けた話だ。

 ギルド長もまずいとわかっていたのか、王弟の代わりになる商会を探していたようだ。

 だが、その時はうちも帝国人ではないからと断っていたんだ」


「そうなのね……では、ギルド長は奴隷契約のことも知っていたのかもしれないわね」


「多分ね。

 俺は今回調べ直してわかったんだが、ギルド長はずっと前から知っていただろうな」


うちの商会では王弟の商会と同じように帝国法に違反してしまう。

それでも代わりとなってほしかったというのなら、

王弟が奴隷契約をしていることに気がついていた可能性が高い。


マティアス様はどこまで処罰するつもりなのだろうか。


「うちの商会が貸し付けを行う時にそれは脅しとして使わせてもらうよ」


「まぁ!」


「ギルドを通して貸し付けをするのはめんどくさがるだろうからね」


「お兄様……さすがだわ」


「それは褒めてくれているのかな」


にこにこと笑っているけれど、そこまで考えてこの作戦を立てたのだとは。


お兄様はエルドレドでは目立たないようにしていた。

ナタニエル様よりも優秀だなどと言われてしまったら、

何をされるかわからなかったからだ。


こうしてエルドレドから解放されて、

お義姉様もアンジェラ様に何かされる不安もなくなり、

結果的には良かったのかもしれない。


「それにさ、この作戦が成功したらアーロン様とディアナ様は帰国するだろう。

 そうすれば側妃の噂も消えるんじゃないかな」


「お兄様……まさか、そのために?」


「可愛い妹が心配になるようなことは排除しておきたいからね」


「……ありがとう、お兄様」


「どういたしまして」


どうやら一番の理由はこれだったらしい。

ディアナ様が悪いわけではないとわかっているけれど、

側妃の噂は少しも薄れていなかった。


婚約発表の夜会まであとひと月半。

それまでに噂が落ち着けばいいのだけど……。








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